このデモではボルトの種類の判定やミシンの非正規品の発見を行っているが、全てのボルトやミシンの部品画像を登録した個品管理データベース(クラウド側にある)が前提になっており、個品ごとに画像の照合が行われるとともに、個品にひも付けられた各種の情報が照合結果と同時に入手できる仕組みだ。
この方法によれば、製品の種別判定や真贋判定ができるばかりでなく、例えばある製品に使われているボルトがどこの国のどの工場で作られたのか、さらには工場内のどの生産ラインでできたのか、検品されたのは何月何日何時何分かなど、どこまでも詳細に来歴をトレースできるようになる。
製品のエンブレムやロゴマークなどの表面紋様を登録すれば、簡単に個品が識別できるため、従来のようにシリアルナンバーを刻印したり、バーコードやICタグをつける必要がなくなる。上掲のようにボルトの頭のように、タグ付けやコード印刷がほとんど不可能な部品でも、簡単に個品管理ができる。もちろんブランド品や組み立て後の製品の真贋も瞬時に判定できるので、ブランド保護にも利用できるだろう。
加えて製品や設備の保守点検の際の部品の確認が簡単できる。類似品が多い部品でも、表面紋様を登録するだけで個品管理が可能になるので、間違った部品使用の予防につながり、施工後のボルトやねじの頭などの紋様から、どのような種別の製品なのか、適正な検査を通過してきた製品なのかが判断できる。
万一、製造工程の一部で特定の時間帯だけに問題が発生して不良部品が出回ってしまった場合でも、その日の生産ロット全部というような単位ではなく、欠陥が生じた時間帯に製造された部品だけを交換すればよいことになり、品質管理や保証、保守コスト削減に役だつだろう。
1990年、英国の航空機のコックピットの窓が飛行中に外れ、機長の体が外に飛び出してしまう事故が起きた。幸い副操縦士や客室乗務員の奮闘で無事に緊急着陸でき、機長も九死に一生を得たが、1つ間違えれば大惨事になったことは想像に難くない。
事故を起こした原因は窓を固定していたボルトが、規格サイズのものではなかったことだ。小さなボルトのような部品であっても、種別の誤認や品質確認ミスは、時に人命にもかかわるリスクがある。部品や製品の生産がグローバル化する中にあって、部品の個品管理は今後ますます重要になる。
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