IEEE802.15.4gが使う周波数帯は国内では920MHz帯が主流だ。これは2012年に地上アナログ放送の停波で空いた。
この周波数帯が無線局免許がいらない特定小電力無線通信用に使えるようになったので、さまざまな近距離無線通信への利用が試みられている。この周波数帯は無線LANで主流の2.4GHz帯に比べ、電波が障害物を回り込みやすいという特長がある上、無線LANに干渉する電子レンジなどの家電製品があっても影響を受けにくく、家庭やオフィスなどで利用するのに都合がよい。また同様に特定小電力無線に使える400MHz帯に比べて伝送速度が速いという利点もある。
そもそも検針データのようなサイズの小さいデータを、信頼性高く、しかも低消費電力でデータを伝えるという目的を持つWi-SUNは、Wi-Fiのような高速通信は最初からスコープに入っていない。
研究開発では「約1Mbpsを超えない速さ」といった仕様が当初から合意されていた。通信速度を速くすることもできるが、速くすればするほど信号が弱くなり、雑音が増えて通信品質が悪くなる。1Mbpsはほどよい上限設定ではないかという判断だ。
また、多数の端末が同時に通信を行ってもパケットの衝突を少なくする必要があり、パケットの長さもそこそこのレベルに収めている。これは技術的な問題というよりは、ガスや電力などの業界が必要とする特性に従った仕様だ。
物理層は、各地域の利用可能な周波数帯に応じて独自の仕様を規定するが、国内の920MHz帯では変調方式としてFSK(周波数偏移変調)が主に用いられ、次の4つの動作モードが規定される。
想定された上限の伝送速度よりもだいぶ遅いが、実際に利用意欲が高いのは100kbpsの動作モードだ。それ以上のスピードのモードは、場合によっては選べるオプション的なものに今のところはなっている。
なお、IEEE 802.15.4g規格では、変調方式は他にOFDM(直交周波数分割多重変調)、OQPSK(オフセット4位相偏移変調)の方式も規定するため、これらとWi-SUNで規定するFSK間の干渉回避技術なども同様にIEEE 802.15.4gでは規定された。
一方、MAC層の仕様では、電力消費を抑えるために無線機のスリープ状態(信号の送受信も、待ち受けも行わず、電力消費量を下げる状態)を活用するための機構が規定された。そのモードは2つあり、「ビーコンモード」では定期的なビーコン信号によって相手先と同期するが、ビーコン信号を適度に休止させたり、待ち受け期間を極端に短くしたりして定期的なスリープ期間を十分に確保し消費電力を抑える。「ノンビーコンモード」では送受信タイミングを別途制御信号で通知してスリープ期間を確保する。このような省電力機構によれば、例えば乾電池で10年間の駆動も可能とされる。
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