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公民館を武道館に変える、「イマーシブテレプレゼンス」とは?5分で分かる最新キーワード解説(1/4 ページ)

遠隔地で開催のスポーツやコンサート映像を高臨場感で再現するイマーシブテレプレゼンス技術が登場した。その仕組みを徹底解説する。

» 2015年06月03日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 今回のテーマは、遠くの会場で行われているスポーツやコンサートなどの映像を、これまでにないリアルさで目の前に再現する「イマーシブ(高臨場感)テレプレゼンス」技術だ。映像技術、音響技術の粋を集め、小さなホールも武道館やスタジアムに変えてしまうこの技術で、遠くの会場に足を運ぶことなく興奮のステージが手軽に体験できるかもしれない。

「イマーシブテレプレゼンス」って何だ?

 「テレプレゼンス」はTV会議システムの表現技術としてご存じの人が多いだろう。遠隔地の映像をまるで目前の実物のようにディスプレイ上に表現する仕組みとして知られる。これに「イマーシブ」(高臨場感・没入感)という言葉が付くと、さらに現実に近い映像や音響を遠隔地にリアルタイムに現出させることを意味する。

 世界のさまざまな機関や研究者が技術開発に取り組んでいる中、2015年はじめにNTTが、さまざまな要素技術を組み合わせたイマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」(キラリ)の研究開発の経過を公表した。

 まずはデモシステムの映像から紹介しよう。場所は都内の小ホール。ステージ横の女性ナレーターの簡単なあいさつの後、暗転していたステージに卓球台が現れ、2人のプレーヤーが登場し、卓球の試合が始まる。

 左へ右へと打球の応酬に従って打音やフットワークの音が響く中、プレーヤーの動きが突然止まる。ピンポン球も宙に浮いたままだ。すると卓球台の向こう側に先ほどのナレーターが登場、設定の説明を始めると、スローモーションで試合が再開、一瞬のちに超高速での応酬が始まる。実は、卓球台とプレーヤーは3次元ホログラフィック的な虚像を使った映像だったという演出だ。

 次にバスケットボール選手のドリブルワークの3次元的映像が登場すると、ボールが床に当たる音がまるで体育館にいるかのように響く。映像はサッカーやアーチェリーの選手のプレイに次々に切り替わり、最後にナレーターを中心に選手たちがステージに集まり、ナレーターが締めくくりのあいさつをすると、たちまちステージ上から何もかも消えうせる。会場に確かにいた生身のナレーターも、この時には3次元的映像だったという趣向だ。

デモシステムによる3次元映像 図1 デモシステムによる3次元映像(出典:NTT)

 ホールに集まった参加者が分かっていてもだまされることを狙った虚実ないまぜの楽しいデモの裏では、透明スクリーンにステージ床下から3次元的映像を投影するプロジェクタを利用したシステムが使われ、会場には音響をリアルに響かせる多数のスピーカーが設置されていた。

 卓球台に見せかけるための小道具なども仕込まれ、照明による演出も利用した。アイドル歌手などのコンサートで3次元ホログラフィック的な虚像が多用されるのはご存じの通りだが、その技術(これはNTTの技術ではない)を応用してトリッキーなエンターテインメントに仕上げたわけだ。このデモにはNTTのイマーシブテレプレゼンス実現のための数々の研究開発の成果が生かされている。

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