クラウドサービスといえばIaaS、PaaS、SaaSだが、mBaaSはモバイルアプリのバックエンドに機能を絞ったSaaSの一面と、インフラとミドルウェアを備えたプラットフォーム(PaaS)としての一面をもつ。図1のように、PaaSとSaaSの間に位置する、特殊なクラウドサービスと位置付けられよう。
基本的には端末側のフロントエンドシステムからサーバ側の機能をAPIで利用するイメージで使える。mBaaSは大抵RESTful APIで他のWebシステムと連携可能なので、もしmBaaSが持つ汎用(はんよう)的な機能で不足する機能、あるいはストアできないデータが必要な場合は、既存の業務システムや管理システムとの連携を作り込むこともできる。
もちろん連携先のシステムはIaaSやPaaS上にあってもよい。さらにmBaaSベンダーによってはmBaaSそのものをライセンス提供する場合もあるため、自社のIaaS上にmBaaSを載せたプライベートクラウドを構成することも不可能ではない。
mBaaSを利用すればサーバ側開発を軽減、あるいはゼロにすることができる。そのことによる主なメリットは次の通りだ。
図2にmBaaS利用の場合の初期費用やランニング費用の低減効果と工期の短縮効果の例を掲げる。特に注目したいのが工期短縮効果だ。ビジネス上の要求に迅速に答えてこそ、モバイルアプリの価値は高まる。工期は短ければ短いほどよいのは当然、しかも少なくとも基本的なサーバ側の処理の安定性やセキュリティはmBaaSベンダーがあらかじめ確保してくれていると考えてよい。
工期短縮やコスト削減はIT開発の長年の課題だが、コンシューマ向けモバイルアプリ開発では投資回収がどの時点で可能かを計るのが非常に困難、つまり出してみなければどれだけリターンがあるか分からない場合が多い。そこで投資を抑えられるだけ抑えることがより重要だ。
また人気を呼ぶ新しいアイデアは、他社が同様のことを考えつく前に世に出すのが成功の(ひけつ)だ。ホットなアイデアを熱いうちに具現化し、市場に投入することも大事だろう。さらにアプリを定期的にリリースするなど量産することが効果的なこともある。
アプリ個別にサーバ側開発を行うより、mBaaSを利用した方がずっと効率的で低コストになる。逆に規模縮小や撤退、企画の練り直しが必要になることもないとはいえない。その場合にもmBaaS利用なら無駄が少なくて済みそうだ。
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