mBaaSは機能を絞っているからこそ、低料金で利用できる一面がある。詳細に要件を抽出してmBaaS仕様と照らし合わせることは必要だが、要件に合わない部分が出てきた場合に、コストをかけてもカスタムメイドするのか、mBaaS仕様に合わせるのかを検討してみた方がよい。細部にこだわるより、短期リリース、コスト抑制が優先される場合にmBaaS導入価値が高い。
ただしmBaaSではREST APIをはじめWeb APIに対応可能なので、別システムのデータや機能を連携することもできる。既存システムの機能を、mBaaSで活用することも視野に入れるとよい。また、mBaaS自身にカスタムコードを実行できる機能を備えるものがある。図10の「Server Code」のように、SDKなどを使いJavaScriptで作成したコードをサーバ上に設置すれば、mBaaS内のデータ管理機能や分析機能にアクセス可能なので、欲しい機能を追加できる。
なお、多くのmBaaSベンダーが標準料金プラン以外にカスタム対応に応じることを表明している。個別見積もりになるが、mBaaSの機能を超えたサーバ側機能を追加することが可能なので、相談してみることをお薦めする。
またベンダーによってはmBaaSそのものをライセンス提供する場合がある。自社所有のプラットフォーム、あるいはIaaS上にmBaaSを丸ごと持ってきて、利用料金にとらわれず、柔軟なシステム連携や多種のアプリ開発を合理化することも可能だ。
海外のmBaaSでは、Parse(Facebookが買収)、Kinvey、Konyなどの専業ベンダーがある。その他合わせて数十のベンダーを数えたことがあったが、現在ではほとんど開発が止まっているケースが多いようだ。他企業に買収された後にサービス閉鎖したmBaaSもあり、先行きが不透明なことにリスクがありそうだ。
またMicrosoft Azure Mobile AppsやGoogle Mobile Backend Starterのように、PaaSの一部としてmBaaS機能を提供するベンダーもある。こちらはmBaaS機能にPaaS機能が付随するところが長所でもあり短所でもある。シンプルにmBaaSを利用したい場合には専業ベンダーのほうが向きそうだ。
オープンソース製品も多数あり、技術者が得られれば利用する価値は高い。ただし日本語ドキュメントやサポートを期待することは難しく、導入のハードルが高いのが難点だ。
多くのベンダーがmBaaSを一定の枠内で利用できる無料枠を用意している。その枠内で利用する場合にはコストがかからないので、mBaaSの実力を知る上でもテスト利用してみる価値がある。無料利用の上限があるのは、ストレージ容量、月あたりAPIリクエスト数、月あたりPush通知回数などだ。各社のWebページで無料枠と有料プランを調べてみることをお薦めする。
ただし無料枠ではベンダーサポートがほとんど提供されないことに注意が必要だ。無料枠内でも対象ユーザーが小規模ならビジネスが成り立つ可能性はあるが、継続してビジネスに利用するなら有償プランでサポートを得られるようにするのがお薦めだ。あくまで体験用途、評価用途で利用したい。
国内ベンダーのサービスを国内で利用するのに不便はないが、中国をはじめ諸外国でも同様に利用できるかどうかは、その必要があれば必ず検討すべきだ。海外でのサポートが提供されるかどうか、英語をはじめ多国語のドキュメントがあるかどうかといった点には注意しよう。特にグレートファイアウォールといわれるように特殊性のある中国での展開は要注意。中国独自のSNSとの連携機能などもあり、中国独自のプラットフォームを利用したmBaaSサービスもあるので、必要ならベンダーに相談してみるとよい。
以上、今回はmBaaSの導入意義と機能を中心に紹介した。ベンダーごとに機能面での差異がほとんどないのが実情。まずは使ってみることをお薦めしたい。
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