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» 2015年10月15日 10時00分 公開

「革新システム」構築を加速するノンプログラミング開発の行方すご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

[片山治利,ガートナー ジャパン]
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ノンプログラミングツールで差が出た、企業利用事例

 さて、ノンプログラミングツールはどのように選べばよいのだろうか。これは大変な問題で、実際にプロジェクトに取り込んでみるまでは自社では判断できないことが多いと思われる。そこでまずは、先行してツールを導入している企業に聞いてみるのがお薦めだ。

 Webにある超高速開発コミュニティーの会員に連絡をとるなどして製品ベンダーとコンタクトすれば、ユーザー企業を紹介してくれることがよくある。コミュニティーでは一緒に取り組む仲間を常時探しているので、具体的なアドバイスをもらえるチャンスが多いだろう。

 以下に、簡単ではあるが成功事例の幾つかを紹介しておく。

Excelからアプリケーションを長短期開発

 国内の外食大手ホールディングスでは、グループ企業内に多くのExcel利用業務が多数散在していることに注目、その業務を合理的にできるように幾つかのExcelの特徴を生かしたアプリケーション開発に挑戦している。

 利用するツールはExcelとサーバ、データベースを連携させて、Excelをユーザーインタフェースとして使うアプリケーションを自動生成するツール(グローバルITサービスの「EVOLIO」)だ。これにより、約50店の海外店舗の発注量計算システム(クラウド)、コンテナ不定貫対応輸入業務システムは各約6カ月、リアルタイム食材使用量対応新メニューシステムは1週間といった短期開発に成功している。他のさまざまな業務システムにも適用されているが、多くは3〜6カ月程度の範囲の工期でスケジュールできるようになった。

新基幹システムの開発工数を半分に、週2回の追加リリースが可能に

 教育ビジネス大手の某企業では、業務別に細分化された従来システムの情報管理や社内処理の煩雑さに悩むとともに、新事業やサービス提供を迅速に展開する必要に迫られていた。そこで業務を統合する新基幹システム構築を企図したが、その条件として短期構築と保守の迅速性が求められた。

 同社は、データ項目や画面、業務ルールといった設計情報を入力するとコードを自動生成し、各種データベースソフトに対応したテーブル定義情報も自動的に作成してくれるノンプログラミングツール(ジェネクサス・ジャパンの「GeneXus」)を採用した。

 要求定義作成からアジャイル開発手法で構築し、優先順位の高い案件に集中した結果、1年1カ月で本番稼働にまでたどりつけた。その後、1年で約1000件の改訂案件が発生し、ほぼ毎日のリリースを行い、現在でも週に2回の頻度でリリースを行っている。工期は従来言語の場合よりも2分の1に短縮し、従来は1〜3カ月ほどかかっていた保守案件への対応は1週間へと縮まった。

迅速なサービス提供のために業務部門での簡易システム開発体制を実現

 国内大手保険会社では、保険代理店や営業社員のニーズに迅速に対応できない悩みから、ビジネス部門による簡易システム開発体制を実現した。基幹系システムはそのままに、社内Webシステムとして情報共有や申請フロー管理が部門システムなどが開発されている。

 これには基本設計情報を定義するとWebアプリケーションを自動生成するノンプログラミングツール(キヤノンITソリューションズの「Web Performer」)が利用された。開発にあたったのは業務部門内のIT要員(IT部門の要員が一時的に異動)で、営業視点でのアイデア集積を行い、簡素な予算手続きと開発工程で高い生産性を実現した。体制確立後は1年でツール50本、Webシステム20本をリリースしている。

オフコン上の基幹システムをWebシステムに7カ月で移行

 国内某メーカーでは、基幹システムが稼働していたオフコンがサポート切れを迎え、Webベースのシステムへの再構築が必要になったが、スパゲティ化したアプリケーションの移行に悩んでいた。多品種少量生産を重視する同社ではパッケージの適用も検討したが要件定義、設計が困難だとして断念。

 そこで浮上したのがWeb ベースのアプリケーションの設計情報から業務ルール、画面、データベーススキーマなどの全てを自動生成可能なノンプログラミングツール(ジャスミンソフトの「Wagby」)に着目した。現状解析ツールを利用して解析(約2.5カ月を要した)したところ、稼働率の低いプログラムを大幅に削減した上、約3分の2の既存機能を残し、残りを新規機能として構築することにした。

 開発はアジャイル型で進行し、約1.5カ月で既存機能は再現でき、新機能も短期間でひとまず仕上がった。その結果をレビューし、フィードバックするサイクルを4回繰り返し、約3カ月後には本番稼働が可能になった。コード自動生成による安定した品質と、開発スタッフが少人数で済んだことによる意思統一の容易性が評価されている。

 以上のように、ITノウハウのあるスタッフが関わりつつ、上手にノンプログラミングツールを活用した企業は大きな成果を手にしている。また従来はSIerからの提案がシステム構築を主導することが多かったが、成功例にはユーザー企業側がイニシアチブをとっているケースが多いようだ。

 いずれにせよ、業務部門、IT部門、そのパートナーとしてのSIerとが、ここに述べたようなノンプログラミングツールの特徴をよく理解した上で協調して開発の仕方を検討することが、課題解決への近道になる可能性が高い。導入検討の参考になれば幸いだ。

 なお、ノンプログラミングツールのデメリットは、ベンダーロックインにつながること、ツールでは対応できない部分がどうしても残ること、ノウハウが継承できない場合があることなどが挙げられよう。うまく利用すれば効果が大きいだけに、ある種の割り切りは必要だ。

 どこまでツールを適用するか、あるいはシステム移行ならCOBOLなどの従来使い慣れた言語を利用するかなど、決断すべきことは幾つかある。ともあれ、もう時代は逆戻りはしない。いずれコーディングスキルが開発に重要視されない時代は確実にやってくる。それに向けたIT戦略と体制づくりが今後はより重要になるに違いない。

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