「iPadならウイルスなんて関係ない」。これは大きな間違いだ。iOSのセキュリティの現状について紹介しよう。
「iOS端末ならウイルスもないし、不注意による情報漏えいにだけ気を付けていればいい」と考える人は多い。これは間違いではあるが、実際のところ、その認識でまず問題はなかった。App Storeに並ぶアプリはアップルの審査を経ており、安心感があったからだ。
ところが、その「常識」を捨てるときが来た。悪意をもつ人間はiOSの「閉じた」世界をこじ開けるべく、わずかな隙間から攻撃をぐいぐいと押し込んでくる。App Storeに「ウイルス入り」アプリが大量に出回っていたことも発覚した。今回は、昨今ビジネス界でも導入が広がるiOSのセキュリティの現状について紹介しよう。
iPadでちょっとアダルトなWebサイトを探検中。少し気になる動画のPlayボタンをタップすると「playMovieがインストールされます」とのメッセージが表示された。専用プレイヤーかと思って「インストール」をタップすると、今度は「信頼されていないAppデベロッパ」というメッセージと、「デベロッパ◯◯◯を信頼してこのiPadでAppを実行しますか?」という表示が。ここまで来て後戻りできるものか、「信頼」ボタンをタップだ。
このストーリーは、2015年5月に国内で初めて発見されたiOS向けの詐欺アプリがインストールされるまでの実際の流れを基にした。一連の操作により、ユーザーのiPadには攻撃者のサーバから詐欺アプリがダウンロードされ、インストールされる。そのアプリを起動してしまえば、あとはお決まりの架空請求の流れとなる。もっとも、このような架空請求自体は放っておけばよい。
このケースで怖いのは、何も不正な改造を行っていない端末に詐欺アプリがインストールされてしまうことだ。これまでにもiOS端末に感染するウイルスや不正アプリは見つかっていたが、それらは「脱獄(jailbreak)」と呼ばれる不正改造を行った端末だけの問題だった。ところが今回は脱獄を行っていない端末に不正アプリがインストールされてしまったのだ。その仕組みは図1のような流れになっている。
発端は、攻撃者がiDEP(iOS Developer Enterprise Program)と呼ばれる企業内アプリ配布用のライセンスを何らかの方法で入手したことだ。本来、このライセンスは自前のWebサーバに自社製アプリを置き、そこにアクセスできるユーザーだけにアプリをインストールさせるためのもの。これがセキュリティの隙間になってしまった。
このような手口のほかにも、iOS端末を攻撃する手口はいくつかある。つい最近では、Appストアに不正アプリが多数公開される事件が起きたばかりだ。以下では、その事件も含め、これまで発見されている手口を紹介しながら、企業や個人がとるべき対策について考えてみよう。
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