フラッシュアレイにもメディアの違いがある。SSDはHDD 同様に扱えるようにするためにフラッシュ本来の性能を犠牲にしている面があるのだが、それを嫌い、独自設計のフラッシュメディアを使用して本来の性能をできるだけ引き出そうとしているベンダーがある。フラッシュメディア内の複数のメモリチップで同時に書き込みや読み出しができるようにして高速化を図っているのだ。同時に耐障害性を高めるチップ間でのRAIDや不良チップの隔離機能なども盛り込まれている。
ただし単純に独自設計の方が優秀とは限らない。パフォーマンス確保にはデバイス構造以外の要素も関わる。例えばキャッシュメモリに使用するDRAMの容量、データ圧縮機能、重複排除機能などだ。
中でも注目したいのがインラインの重複排除機能とデータ圧縮機能だ。どちらもストレージ容量を節約するための機能だ。ベンダーによってどちらを重視するかが分かれるところだが、ストレージに書き込む前にデータサイズを小さくできるのがポイントだ。フラッシュの場合は書き込み回数に限度があるため、データ量を手前で削減して書き込み量を減らせば寿命を延ばすことにもつながる。
インライン重複排除機能は、ごく小さなデータサイズを単位としてデータの一致を調べ、同じデータが重複している場合は1つだけしかストレージに書き込まないようにして、ストレージ容量を節約する技術だ。これは仮想デスクトップのフルクローンを作成して運用する場合に特に大きな容量削減ができる。またリンククローン、MCS(Machine Creation Service)運用でもPVS(Provisioning Service)でもかなりの容量節約が実現した事例がある。
インラインデータ圧縮機能はリアルタイムにデータを圧縮して書き込む技術で、重複排除ではあまり削減できないデータベースのデータをはじめさまざまな種類のデータに適用でき、最大で80%のデータ量削減ができることもある。メディア単体の特徴ばかりでなく、これら技術や装備に関しても検討対象にすべきだろう。
フラッシュアレイのカタログ情報を見ると必ずSLC、MLCなどという略語が載っている。これはフラッシュメディアの記録方式のことで、チップ内の情報を書き込む場所(セル)に何ビット書き込めるかを示している。
SLC(Single Level Cell)は1ビット、MLC(Multi Level Cell)は2ビット、TLC(Triple Level Cell)は3ビットだ。同じセル数に書き込める情報量はTLC、MLC、SLC の順になる。しかし性能、寿命、価格の高い(長い)順に並べればSLC、MLC、TLCとなる。
ハイエンドフラッシュアレイはSLCを搭載するものが多いが、現在の主流はMLCだ。MLCはeMLC(enterprise MLC)とcMLC(comsumer MLC)に分けられる。主な違いは最大書き換え回数(=寿命)で、eMLCが3万回、cMLCが3000回と10倍違う。ちなみにSLC は30万回、TLCはcMLC以下だ。コスト効果の面ではつい最近対応フラッシュアレイが登場したばかりのTLCに今後期待したい。もしかするとフラッシュストレージの価格破壊をもたらすかもしれない。
ともあれオールフラッシュアレイにせよハイブリッドアレイにせよ、対応するフラッシュメディアの記録方式は導入前に検討しておきたい。価格と性能の目安になるからだ。寿命についても知っていた方が良いが、こちらはむしろアレイベンダーかフラッシュメディアベンダーの保証があるか、あれば何年かを調べた方が良い。大抵は1年、3年、5 年のいずれかの保証が付いている。最近では7年保証をつけるアレイベンダーもある。
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