ウェルビーイングとは、心身ともに健康で社会的に充実している状態を表す概念。
ウェルビーイング(well-being)とは、身体的、精神的、社会的に健康で、充実している状態を指す。厳格な定義はなく「良い状態」と認識される。
健康(Health)は主に身体の健康状態を指し、精神的な健康状態も含む。ウェルビーイングはそれに加えて社会感も含める。従来は社会福祉の分野で用いられていたが、近年は優秀な人材の確保や生産性の向上を目的として企業がウェルビーイングの実現に取り組む例が増えている。
1946年に61カ国の代表が署名した世界保健機関(WHO)憲章において、前文にある「健康」の定義の中で「well-being」が言及された。
日本WHOは同憲章の中で、健康を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と訳している。1980年代以降、心理学分野において「幸福」に関する研究が活発化する中で主観的な充足感としてウェルビーイングの研究が活発化した。
近年では「SDGs」(持続可能な開発目標)における17の世界的目標の中でウェルビーイングが設定されている。
企業がウェルビーイングに取り組む背景には、主に先進国における人材不足がある。世界的に働き方の多様化と雇用の流動化が進み、優秀な人材の確保が困難になった。既存の人材を生かし、流出を防いで生産性を上げるために「従業員が満ち足りた状態で働ける環境」の構築が注目される。
ウェルビーイングはライフワークバランスの確保やチームメンバーからの承認などを含むため、個人の事情や文化的背景、価値観によって異なる。そのため従来の健康や福祉の指標では評価が難しく、各社で模索が続いている。
Googleは社内プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」の中でチームの生産性を上げる要素を調査して「5つの鍵」があり、最も重要な要素を「心理的安全性」と結論づけた。チームメンバーが安心してリスクを取れる環境が重要だとし、ウェルビーイング施策に取り入れている。
ウェルビーイングは従来の健康とは異なり、定量的な評価が難しいとされる。厳密な定義はないが、関連用語との関係性や概念は共有されている。
健康経営は、従業員の健康管理を経営課題として改善に取り組むことで企業の生産性向上を目指す経営手法を指す。日本企業においては定期健康診断や従業員サーベイなどが一般的だが、ウェルビーイングはそれらに加えて社会的な充実感を重視するため、従来の健康管理よりも広範にわたる取り組みが必要とされる。
新型コロナウイルス感染症の影響で、世界的に働き方の変革が起きた。急なデジタル化やテレワークへのシフトによって、世界的にメンタルヘルスの課題が顕在化している。対面でのコミュニケーションを避けつつチームメンバーシップを構築し、組織への帰属意識やロイヤルティーを高める方法が注目された。
2015年9月に採択されたSDGsにおいて、17の世界的目標が設定された。その中で「貧困をなくす」(No Poverty)、「飢餓をゼロにする」(Zero Hunger)に続く第3のゴールとして「保健と福祉」(Good Health and Well-Being)が設定され、あらゆる人の健康と福祉の促進を目指すべきとしている。
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