ではフラッシュストレージ導入でどんなメリットがあるだろうか。これは一度もHDD搭載PCを操作したことがない人にSSD搭載PCの良さが伝わりにくいのと同様に、現在のITに課題感がない場合には分かりにくいかもしれない。逆に以下のような課題感をお持ちの企業には、必ず魅力が発見できることと思う。
このような課題感に対してフラッシュストレージがどう答えるのか、以下より具体的な事例を交えて紹介していこう。
ビジネスの「俊敏性」は現在のあらゆる業種の企業が直面している課題といえるだろう。新製品、新サービスの適時の提供は競争力維持、強化のカギとなる。その市場投入サイクルをどれだけ短縮できるかが、企業の明暗を分ける時代になってきた。
特にWebやモバイルアプリを利用した新サービスの提供や、テレビや映画などと連動したキャラクター商品のタイムリーな市場投入などはその典型ケースである。先般も人気キャラクター商品が「販売開始15分で売り切れ」になったニュースがあったように、期日に間違いなく商品を市場投入することが成功のカギになっているのだ。
そのためには、ITがビジネススピードに確実に追随することが必要だ。IT開発や運用をスピードアップするには、インフラのスピードアップが肝心。以下はそれをフラッシュストレージで実現した例だ。
ゲームアプリを次々に開発している会社では、アジャイル開発手法で開発期間短縮を図っている。フラッシュストレージを利用して仮想環境で開発環境、テスト環境のクローンを迅速に用意し、高解像度動画を組み込んだゲームアプリを高効率に作成、テストすることができるようになり、企画から市場投入までに半年程度かかっていたのが1カ月にまで短期化した。
テレビ番組のストーリーや配役決定からタイアップ商品開発までの時間は数カ月程度しかなく、番組制作が進んだところでなければ場面の映像などは得られない。商品開発、製造、物流手配などは極めて短時間で行う必要があり、PR用Webサイトの立ち上げや広告、トレーラー映像コンテンツ制作なども同時に進める必要がある。高解像度の映像を利用したWebコンテンツ作成や広告制作にフラッシュストレージの高速性が生かされ、最も世間で盛り上がりを見せている時期に合わせて商品の発売、PR、広告のリリースができるようになった。
データベースを利用するシステムの開発では従来パフォーマンス確保のためにチューニングが必須とされ、最適チューニングを行うのに数週間から数カ月かかっていたが、フラッシュストレージ採用によりテスト環境の構築や負荷生成が簡単になり工数が削減できた。一方顧客システム側での本番環境でフラッシュストレージを使う前提では、チューニングの必要がないほど高速処理ができるケースも多くなっている。
従業員のオフィスワークを効率化することも「俊敏性」を身に付けるために重要だ。ユーザーがITを利用するときに「ムダ時間」が生じないようにするために、ITインフラは十分にリクエストを消化できるだけのパフォーマンスを持たなければならない。CPU性能は十分でもストレージ性能がボトルネックになってパフォーマンスが上がらないシステムが多い中、フラッシュストレージによってボトルネックを解消した企業が「ムダ時間」削減に成功している。
オールフラッシュアレイを導入したイスラエルの某保険会社では、システムのダウンタイムがなくなり、従業員と保険ブローカーへのサービス提供が迅速化。また月末のレポート作成に従来14時間かかっていたバッチ処理時間を5.5時間にまで短縮できた。
米国の某法律事務所では既存データベースのインデックス再構築(メンテナンス作業)に2日かかっていたが、オールフラッシュアレイに変えたところ約2時間で終了するようになった。
米国の某教育機関では重いエンジニアリングソフトの起動に5分程度かかり、ユーザーのクレームを招いていたが、オールフラッシュアレイの利用により20〜30秒での起動が実現した。
またスウェーデンの公共サービス業者では仮想デスクトップ(VDI)を使用しているが、従来は1500ユーザーが同時にクライアントを起動すると起動完了までに約20分を要していた(ブートストーム)。ストレージをオールフラッシュアレイに変えたところ、同じ条件で起動までに1分とかからなくなった。
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