Linkingプロジェクトのコンセプトをひと言で言えば「IoTの日常化」だ。生体情報計測機能が備わる腕時計型やリストバンド型のウェアラブルIoTデバイスが脚光を浴びてはいるものの、現実にIoTの利点を実感している人はまだまだ少数。NTTドコモはIoTデバイスが日常生活に浸透していない理由を次の3点と考えた。
この3点は互いに関連している。パーソナルな日常生活のニーズは千差万別、何か1つのサービスでIoTが劇的に普及することは考え難い。また求められるIoTデバイスの種類が多様なだけに、大量生産にも限りがあり、1つ1つのデバイスコストがそう簡単には低下しない。
さらに求められるサービスに応じてアプリケーションとデバイスの双方を開発する必要があり、スマートフォンOSが提供しているプロファイルを利用するデバイス(例えば、生体情報計測機能付きの腕時計型デバイスやメガネ型デバイスなど)以外は、デバイスとアプリケーションとの連携機能を個別に作りこまなければならず、どうしても工数がかさみがちになる。
それもあって、ほとんどのIoT利用サービスはサービス開発会社が主導し、デバイス開発会社はその求めに応じたデバイスを開発する、一種の垂直統合型の開発になってしまいがちだ。ユーザー側としては、せっかく買ったデバイスが他のサービスでは利用できないことが多くなり、事実上デバイスとサービスを一体で買うことになるのでトータル価格が高止まりし、普及を阻害する要因になる。
そこで、デバイスとスマートフォン上のアプリを連携させる部分を切り出し、APIとすることで、デバイス開発とアプリ開発を分離、独立させようというのが「Linking」の考え方だ。APIに対応さえしていれば、同じ機能のデバイスはさまざまなサービスに対応することができる。
1個のデバイスを買えば、それに対応する複数のサービスから最も適切なものが選べることになる。その逆もしかりで、あるサービスに対して複数ベンダーのデバイスの中から好みのものを選べるようにもなる。こうなると競争原理が働いて、IoT利用が低コストになることが期待できそうだ。
また、アプリ開発側、デバイス開発側にとっても、お互いの技術詳細を知らなくてもAPIへのデータ受け渡しさえできれば簡単に連携可能になるため、開発工数の削減につながり、デバイスの広範な普及によってIoT市場自体が活性化することが見込める。
Linkingの位置付けをちょっと詳しく説明しよう。図2は、Linkingのアーキテクチャの階層構造を示したもので、この図の最上段にある「PeripheralDeviceLinkProfile onBLE」レイヤーがLinkingでの通信部分だ。
それ以下の層は、BLE規格のアーキテクチャそのままである。図のGeneralAttribute(GATT)というレイヤー以下のレイヤーがBLEデバイス同士の通信をつかさどる部分で、一般的には、アプリケーションがGATTレイヤーと直接やりとりできるように、いわばデバイスドライバのような機能をアプリケーション自身に作りこむ必要がある(つまりGATT層の上のレイヤーはアプリケーションになる)。そのデバイスドライバ的な部分をLinkingが受け持つと考えると良いだろう。
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