企業がOSバージョンアップに消極的になりやすいという傾向はWindows 10に限ったことではない。例えば、Windows 8では四角い「タイル」が並んだ新しいスタート画面が採用され、「従来のWindows OSと画面や操作が大きく異なる」といった印象を持つ企業が多かった。実際はWindows 7以前と同様の使い方をすることも可能だが、こうした変化を敬遠してWindows XPからの移行先としてWindows 8ではなくWindows 7を選んだ企業も少なくない。
Windows 10にはこうした企業の反応が反映されている箇所もある。Windows 10ではWindows 8/8.1で新たに導入されたスタート画面と Windows 7以前が備えるスタートメニューの使い勝手を両立した新しいスタートメニューが導入されている。Windows 8/8.1と比べて、Windows 7以前を使い慣れたユーザーが親しみやすいように工夫されているわけだ。
先に触れた「Windows 10ヘ移行する理由」を尋ねたグラフにおいても、「画面や操作が使い慣れた従来のWindows OSに近い」が17.0%で3番目に多く挙げられている。一般的にOSやアプリケーションのバージョンアップでは、画面や操作が大きく変化した後、さらに次のバージョンで旧バージョンとの親和性が改善されることも少なくない。「Windows 10もWindows 8/8.1と同じように画面や操作が使い慣れたものと大きく違うのだろう」と決め込んでしまわずに、どのような画面や操作なのか実際に確かめてみることが大切といえるだろう。
また、先に触れたグラフの4番目に挙げられた「業務パッケージの最新バージョンがWindows 10対応である」も重要なポイントだ。IT活用で期待通りの成果を挙げるためには、ビジネス環境の変化などに追随して業務パッケージの機能を強化していく必要がある。従って、導入済みの業務パッケージについて「最新機能は新しいOS向けのバージョンだけに適用される」という方針なのか、「古いOSで動作するバージョンにも最新機能が適用される」という方針なのかどうか知っておくことも重要となる。
いずれにしても、Windows 10への移行や入れ替えを検討する際は過去に得た知識だけで判断するのではなく、「以前のOSと何が変わったのか(新たな変化だけでなく、ある意味「元に戻る」という変化も含めて)」「導入済み業務パッケージの対応方針はどうなっているか」を逐次確認しておこう。
先述の「Windows 10ヘ移行する理由」を尋ねたグラフの5番目以降にはWindows 10の新機能に関する選択肢が並んでいる。だが、それらの回答割合はいずれも1割未満にとどまっている。
Windows OSは数多くのバージョンを重ね、ユーザーが求める機能の大半は既にそろっている。「業務パッケージと異なり、OS自体に新しい機能は必要ない」と考える企業が多いのも当然の結果といえるだろう。だが、OS自体の進化は本当に不要なのだろうか。それを考える上でヒントとなるのが以下のグラフである。
スマートフォンやタブレットといった、いわゆるスマートデバイスはデスクトップPCやノートPCと比べると「導入済み」の割合はまだ低いが、スマートフォンは61.5%、タブレットは46.6%といずれも半数前後に達している。つまり、企業が業務システムを利用する際の端末はPCだけでなく、スマートデバイスにも広がってきているわけだ。
種類の異なる複数の端末を併用する場合、当然ながら端末間のデータ連携が必要となってくる。「PCで編集途中だった文書を外出先でタブレットを用いて完成させる」などが手軽にできなければ、複数端末を併用することのメリットが薄れてしまうからだ。さらに、スマートデバイスは外出先で利用する場面(モバイル利用)も多いため、紛失などを想定した高度なセキュリティ対策も必要となってくる。
こうした機能を業務システムごとに実装するという選択もあるが、上記に例示した「複数端末を跨った一貫した操作性」や「モバイル利用を想定したセキュリティ対策」などは全ての業務システムに共通する要素だ。従って、これらをOSでカバーするという発想が生まれてくる。実はWindows 10にはこうした「端末の多様化」を見据えたときの機能強化が見られる。代表的なものを幾つか見てみよう。
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