対従業員間のエンゲージメントが強化されると、個人の効率性と組織のチームワークを共に高めることができる。具体的には、組織への信頼がより確固としたものとなり、業務内容や企業やビジネスの全体像の理解が進み、改善の要求や提案もしやすくなる。また同僚への尊敬や協力の姿勢が生まれやすく、仕事への献身的な取り組みにつながることが期待できる。
また顧客とのエンゲージメントが強化されると、コミュニケーションを取る機会が増え、対応を誤らなければブランドへの信頼感や愛着を生むことができよう。ひいては顧客周辺の人への紹介や推奨などのビジネス支援も期待できる。これは事実として、既に目に見える形で実証されている。
ある弁護士事務所では、顧客との案件にかかわるメールのやりとりに時間と手間がかかることや、議事録の送付などの手間による効率の悪さに悩んでいた。しかしチャットツールを利用して、顧客からの質問に即座に答えられる仕組みを利用し始めたところ、顧客は「知りたいことがその場で解凍してもらえる」「回答がたった1行でも千金の価値がある」と高く評価され、また法律への理解度が短期間で飛躍的に上がったという。
メールを利用していた時代には考えられないほどの満足度と、仕事への理解が得られたことで、顧客から他の新規顧客へと評判が広がって、2年間で顧客数が20社から50社以上に増加した。ちなみに日本ではこの数の顧客を持つ弁護士事務所は上位1%ほどということだ。必要に応じて音声やテレビ会議も利用したというが、顧客とのチャットが大きな飛躍につながった。
ある整体院では、受付の会計や赤ちゃんの治療補助などのため、スタッフの予約対応がおろそかになったり、連絡がスムーズに取れなかったりすることが相次ぎ、課題を感じていた。そこで患者(顧客)1人とスタッフ4人で合計5人の専用チャットコミュニティーを作ったところ、スタッフから患者にスマホのチャットで空き状況を連絡、予約は1〜2分で成立するようになった。当日予約も合理化され、赤ちゃんの治療風景など写真送付サービスも実施することができた。施術後も気になることはチャットで対話できるため、患者と院との意思疎通が良好になった。
ある工務店では、複数の施主(顧客)との細かいやりとりが効率化のネックになっていたが、チャットツールで顧客に応じて「1対1」対応と「1対n」対応を使い分けたやりとりを行うようにしたところ、頻繁なやりとりで、施主との行き違いや認識のズレがなくなり、 顧客満足度が向上した。
ある小売業者では、全国に展開する300の店舗の商品発注が、製造、卸売業者との間で全てクローズするまでに3週間という時間がかかることが課題視されていた。そこで本部が介在せずに製造、卸業者が直接全国300店舗2000人以上の各領域の仕入れ担当者にタブレットで直接アクセスし、チャットで商品説明を行い、発注量や価格などの詳細も確認、決定できる仕組みを構築したところ、全発注のクローズに要する時間を3時間にまで短縮できた。
他にも対話形式で1問1答すれば日報が書きあがる「日報ボット」とメッセンジャーツールの組み合わせにより、営業マンが空き時間に日報作成を効率的にする仕組みなども使われている。
ただし、どんな場合でも企業外部からのアクセスを積極的に求めるのが上策かといえばそうでないケースもあり得る。例えば業務用途での利用が中心のオフィス系クラウドサービスの環境の中にチャットサービスが組み込まれている場合、外部顧客からのアクセスを受け付けるのは適切でないケースがあるかもしれない。
また、不適切なメール運用から深刻な情報漏えい事件を起こしたある企業では、その反省から内部と外部を遮断する目的で社内で閉じたチャットサービスを新たに導入した例もある。利用方法は企業によってさまざまだ。
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