メディア

なぜ、BIツール業界で「セルフサービスBI」が躍り出たのか――BIツールの変遷を振り返るIT導入完全ガイド(3/4 ページ)

» 2016年08月01日 10時00分 公開
[小池晃臣タマク]

セルフサービスBIツールに共通する機能とは

 主要なベンダーが提供する各セルフサービスBIツールの特徴については次回掘り下げる予定だが、ここでは各ツールに共通する機能について紹介したい。セルフサービスBIの特徴を端的に表すことができるキーワードとして「データディスカバリー」というものがある。そして、データディスカバリーには、「インタラクティブビジュアライゼーション」と「サーチベースデータディスカバリー」の2つの主要なパターンがある。

 まずインタラクティブビジュアライゼーションであるが、これはデータをビジュアル化してそこに隠された“何か”を探りつつ、次の切り口を考えていくアプローチである。こうしたことができるようになったのには、グラフィックス機能の向上といった技術的背景もあるが、地図データなどの外部データが比較的入手しやすくなったという社会的な背景もある。

 続いてサーチベースデータディスカバリーというのは、定量化できるような数値データだけではなく、定量化できない任意のキーワードでもデータを分析できるようにするアプローチである。例えばある製品の販売成績を上げることを目指してデータを分析する際に、過去の売り上げデータや顧客データに加えて、指定したキーワードに関する統計データをWebなどから引っ張ってきて分析軸に加えていくのだ。

 2つのアプローチをまとめると、セルフサービスBIツールというのは、どのデータを使って何をやりたいかがあらかじめ決まっていなくても、ユーザーがまず手元にあるデータなどを使いながら、次はどのデータを使い、どんな角度から見てみるかといったように、次々と切り口を変えていくことができるデータ分析/活用手法だといえるだろう。

図2 ユースケースごとに3つに分けられるBIの方向性 図2 ユースケースごとに3つに分けられるBIの方向性(出典:ガートナー)

Excelでのクロス集計ではなぜいけないのか?

 ユーザー自身によるデータ分析ツールといえば、真っ先に思い付くのがExcelではないだろうか。Excelを使ったクロス集計は営業担当者やマーケティング担当者にとって定番中の定番ともいえる活用法だ。では、Excelによるクロス集計ではなぜダメなのか、その決定的な理由は先に述べたインタラクティブビジュアライゼーションとサーチベースデータディスカバリーの要件を満たさない点にある。

 例えば会議の席で、あるデータとあるデータをExcelでクロス集計した結果をグラフ化して上層部にプレゼンをしたとしよう。もしも会議の出席者から“このうち片方のデータはこれではなく、◯◯のデータにしたグラフも見せてくれないか”という要望があったとする。こうなると、会議の後にいったん持ち帰り、もう一度グラフを作成し直して、あらためて次の会議で示さなければならなくなる。

 つまり、Excelによるクロス集計でできるのは、あらかじめ決められたデータを使ったレポート止まりとなってしまうのだ。これがセルフサービスBIであれば、その場で次々と異なるデータを使って可視化していくことができるわけだ。迅速な意思決定を支援するという観点から言うと、この違いは決定的であることがお分かりいただけるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。