セルフサービスBIについて正しく理解するには、従来のBIとの違いを知る必要がある。そこでここでは、これまでのBIツールがどのように変遷して来たのか、その歴史を振り返ってみる。
BIツールが普及し始めたのはいまから20年ほど前であり、SQLを知らなくてもビジネス上の用語でデータを活用できるとして、多くの企業で受け入れられていった。このころのユーザー企業の中には“営業担当者であってもSQLぐらいは覚えるべき”といったかなりハードルの高い風習が根付いているところもあったくらいなので、BIツールの登場は大きなインパクトがあった。
こうしてデスクトップ版やクライアント&サーバ版のBIツールが各ベンダーから出そろうようになり、市場は成熟していった。このころの代表的なベンダーとしては、レポーティングであればビジネスオブジェクツ、コグノス、クリスタルレポート、また管理会計ではハイぺリオン、マーケティング向けの統計解析ではSPSSなどが挙げられる。
2000年代に入ると多くの業務アプリケーションでWeb化が進んでいったが、この波はBIの世界にも訪れ、多くのBIツールがよりシンプルで管理しやすいWebアーキテクチャへと移行していった。
同時に、幾つかの機能を同時に使えるようにするというBIツールのスイート化も進んだが、そのきっかけとなったのがベンダー間の大規模な企業買収のラッシュだ。BIベンダーがBIベンダーを買収したり、メガベンダーがBIベンダーを買収したりといった流れが加速した結果、さまざまな業務システムにおいてBIが標準的なプラットフォームとなっていった。
ガートナージャパン リサーチ部門アプリケーションズマネージングバイスプレジデントの堀内秀明氏はこう振り返る。「例えばオラクルはハイペリオン、SAPがビジネスオブジェクツ、IBMがコグノスなど、メガベンダーによるBIベンダーの買収は象徴的のものといえるでしょう。こうした買収が続いた結果、BIが業務システムの標準的なプラットフォームとなると、情報システム部門には、社内でBIツールを使えるようにしておくことが当たり前のミッションとなり、データを見るための基盤の整備や分析ツールの管理を担当するようになっていったのです」
BIに関しての情報システム部門の役割のほとんどは、BIツールを使って何をしたいのかをユーザーから聞き、その要望をかなえるために対応するというものであった。どんな分析をしたいのか、その結果どういった意思決定をしようとしているのか、分析が必要なのは日次か週次か……など、ユーザーからのさまざまな要望をヒアリングしながら、それぞれに対し適切な検索画面やレポート画面、データのダウンロード画面などを作成していくこととなった。
しかしデータ分析/活用のニーズが日を追うごとに拡大していく中、やがて情報システム部門の負荷もばかにならないものとなっていく。加えて分析対象となるデータというのは最初から全て判明しているわけではないケースも多いため、最初に情報システム部門がデータをそろえてビジネス部門に提供し、そのデータを使ってユーザー側が分析を行っていく中で、“やっぱりこのデータとこのデータも欲しい”といったリクエストが、再び情報システム部門に寄せられることになる。だが、情報システム側も要求に応じてすぐにデータを用意することは難しいことから、もっと自由かつ迅速にデータを活用したいという潜在的な不満がユーザーの間にまん延するようになっていった。
このような動向にいち早く対応したのが、今日セルフサービスBIツールを提供しているベンダーだった。ユーザーが自在にデータを集めてグラフィカルな図で確認しながら、新たに必要なデータがあれば取り込んでグラフ化することができ、またユーザー間でデータを共有して意見を交わすこともできる──そんな新しいBIのかたちが提唱され、それを実現するBIツールが登場。いつしかベンダーやメディアが「セルフサービスBI」と呼ぶようになったのである。
「つまり、これまでのBIプラットフォームだけでは何か足りないよね、というユーザーの声に応えて、“かゆいところに手が届く”ようにしたのがセルフサービスBIというわけです」(堀内氏)
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