製造工程が「ぶっ通しで20時間」もかかるエンジンを取り扱う三菱重工航空エンジン。受注が増える中でサプライヤー管理や品質管理、需要管理の工程を効率化した。IoTなどの未来志向の技術を、現場の効率化に還元する。何にどう効果があったのか。
三菱重工航空エンジンは、三菱重工グループが持つ、防衛宇宙、民間機/パワードメイン/インダストリー、社会基盤の3つのセグメントのうち、パワードメインに属しており、セグメント全体の5%を担う。同社はエンジン部品をGEやロールスロイスといった主要航空機メーカーに供給しており、B747、A380のような大型機向けだけでなくMRJのようなリージョナルジェット機やヘリコプター向けの部品も供給する。
同社は、製造工程が大きく異なる製品を取り扱う。1つはタービンエンジン製造に関わる工程だ。タービンエンジンの月産は30個程度。製造工程を細かく分解すると、タービンモジュールや燃焼機、燃焼機ケース、燃焼機パネルなどに分解できる。それぞれの工程が長いことが特徴で、20時間連続して製造する必要があるものもある。効率よく製造を行うには各工程の進捗(しんちょく)や調達状況を細かく把握して調整を行う必要があるだろう。
一方で、このタービンエンジンに搭載するタービンブレードの製造工程に関して見れば、月産1万3000枚にも上る(1機当りの搭載量が多いため)。品目は少ないが大量に製造するパターンだ。
航空機エンジン部門は過去8年間、継続して5%成長を続けている。航空機そのものの受注状況が好調だからだ。MRJをはじめとするリージョナルジェットの他、エアバスやボーイングといった航空機メーカーなどからの既存の注文をベースに算定すると、今後20年間の市場規模拡大が予想されている。同社の見込みは「20年後には現在の2倍の機体が運航」する計算だ。この需要に対応するには、生産量を現在の2倍にする必要がある。
こうした背景から同社は三菱重工グループ全体の中で、スマートファクトリーのモデル工場になるべく活動している。もちろんIoT導入にも積極的で、サプライチェーン管理の高度化と同時にスマートファクトリー化を推進し、生産性を高める計画だ。同社が目指す「デジタル経営基盤」の全体像は次の通りだ。
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