BIの「見せ方は趣味が多い世界。ここは情報システム部門が作るよりもユーザーに任せることにした。IT部門は「必要なデータを集める」業務に特化する方針として役割分担を明確にした。その結果として「今ではユーザーが勝手にBIビューを作るようになった。IT部門には必要なデータを要求する、という文化が定着したところ」だという。
道具を入れ替え、ユーザー部門に恒常的に利用させる課程にはどのように取り組んだのだろうか。同社の場合は他の多くのツール導入の例に漏れず、ユーザー部門の中にスキル取得者「リードマン」を増やす作戦を採った。「リードマン」とはTableauの操作に熟練したスペシャリストのことだ。
まずテスト的に2016年3月に導入をスタートし、生産技術部門、品質保証部門から導入セミナーを開催した。基本教育を2日間行った上で、ライセンスの割り当てを決定して購入した。
当初は14ライセンス程度だったが、2017年には既に利用部門が全社の約4割に増えた。2018年年4月ごろには本格的な導入をスタートさせており、2108年8〜9月の段階で200ライセンスに利用を拡大している。200ライセンスへの利用者拡大Tableau Japan側のライセンス体系変更により、コストを抑えて利用できる閲覧ユーザーライセンスが使えるようになったことがきっかけだ。
導入前の基本教育はTableau Japanが提供する教育プログラムを利用していたが、現在ではIT部門の内部で教育できる体制も整った。2018年にはTableauの利用部門が全社の7割に拡大したため、正式に全社説明を実施。当初、民需向けの部門が中心だったが、防衛関連のエンジン部門もこのころに利用を開始したという。Tableauの導入は現場のPPMや改善活動の支援につながる側面もあることから関心を持つ部門は増えていったという。
ここでは同社の業務改革の一部としてのモダンBI導入を見てきた。
同社の業務改革全体では前述の通りIoTなども活用した生産性向上を目指す大掛かりなものだ。現在、同社のデータレイクである「e-work DB」にはIoTデータを含む数億/月ものデータが蓄積されており、ここで挙げたモダンI導入以外にも、オペレーション系システム(PLM:製品ライフサイクル管理、MES:製造実行システム)などとAnalytics Systemの連携も視野に入れた変革を推進する。オペレーティング系で出てきた実績データを分析して結果をフィードバックすることで、勘と経験に頼らずに品質と精度を高める運用へのチャレンジだ。
業務改革をどのように推進しているかと問われたとき、吉野氏が「何といっても『社長がうん言ってくれたこと』に尽きる」と、繰り返し語ったことが印象的だった。同社は2014年に分社化したこともあり「フットワークが軽い」。IT部門も積極的に業務改革を進めてきた。
「私たちの部門は設計や製造部門からきた担当らで構成しているためユーザー部門へのチャネルもある。そこでユーザーを巻き込みながら提案でき、ユーザーの要望をソリューションに落とし込んで経営部門に提案する立場で、現場も実感できる提案ができた」(吉野氏)
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