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吉野家とドミノ・ピザが挑戦する、経営ビジョンのデジタル化KeyConductors

改革を進めるうえで、マーケティング部門と他部門との連携、意思統一の在り方についてどのように進めるべきか。

» 2017年01月05日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 2016年12月13日と14日の2日間、セールスフォース・ドットコムは年に一度のイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2016」を開催した。今回は飲食業のマーケティングセッションの一部を紹介する。吉野家とドミノ・ピザ両社の担当者が、データ活用やマーケティング部門と他部門との連携について語った。

人を「モチベーター」の塊と捉え、新しいマーケティングを開拓

富永朋信氏 ドミノ・ピザジャパン 執行役員CMO 富永朋信氏

 本セッションではまず、吉野家、ドミノ・ピザジャパンの両社が抱えている課題について回答するところから始まった。

 ドミノ・ピザジャパンの富永朋信氏(執行役員CMO)は「日本でピザを食べる頻度は欧米に比べ低い。そのため日本では、1店舗当たりの宅配範囲を広く設定する必要がある。日本でのピザの消費量をいかに米国に近づけるかが課題だ」とし、「当社は日本の一般企業に比較すればデジタルマーケティングは進んでいるといえるが、電話、Webからの注文情報のDBと店舗オペレーションのDBとの整合性が取れていない、1つのプラットフォームにまとまっていないなど不都合がある」と明かした。


ドミノピザに偏在するデータ ドミノピザに偏在するデータ

 続いて富永氏は現在の取組について「行動は意図の裏返しである」「考える単位をモチベーターに」という2つのキーワードで解説した。

 「自然言語解析などで人の行動がかなり正確にトラッキングできるようになり、その背後にある意図を捉えることができるようになる。すると、考える単位を『モチベーター』にすることができる。これまで性別や年齢、ライフスタイルで定義していたターゲットは粒度が荒すぎた。一人一人が持っている動機、欲望などにより、人を『モチベーター』の塊として捉え、マーケティングの単位を人ではなく『モチベーター』にする」(富永氏)ことで新しいマーケティングの世界が広がるのではないかと解説した。

 また、富永氏は今後の具体的な計画について「どの店にどんな注文が集中しているかを分析することで、店の使われ方、店の意味が見えてくる。例えばイートインが多いので接客スペースを広げる、キッチンを広げるなど店舗をそれぞれ機能的に変えることも考えられる。また、お客さまのモチベーションを探ることで何か新しい取組を生み出すこともできる」と述べた。

マーケティングプラットフォームの構築でデータをシームレスに連携

田中安人氏 吉野家 企画本部宣伝企画・広報部長 田中安人氏

 一方、吉野家の田中氏は「牛丼だけ売っていれば経営が成り立ち、外食ではありえない利益率を出していた時代があった。成功体験があまりにも強すぎることが課題だと思っている」と述べた。「30〜60代のサラリーマンに圧倒的な支持を受けて、うまい、早い、安いで成長してきた。これは強みだが、逆に弱みでもある。今までは経験と勘と度胸でやれたが、環境が変わり、社内のデータをデジタル化し、マーケティングプラットフォームを作る必要があるという認識に至った」(田中氏)と語った。


吉野家グループの売上構成 吉野家グループの売上構成

 また、「Tポイントと連係することで、例えば、子ども向けメニューは持ち帰りがほとんどで、店内では全く消費されないことなど、今まで見えなかったことが見えてきた」(田中氏)ことも、マーケティングプラットフォーム構築の動機となったと述べた。

 続いて、データの活用について田中氏は構想段階だと前置きし、これまでのPOSの売り上げデータとTポイントのデータと組み合わせることで、全国を対象にどこに出店すべきかを探ったり、勝ちパターンの店の法則を導き出したり、クーポンを発行するアプリの開発、顧客の趣味嗜好が分かる仕掛けの構築、LINEとの連携、通販システムとのシームレスな連係などを考えていると語った。

マーケティング部門と他部門の連携、意思統一をどう進めるか

 続いて、司会の笹 俊文氏(セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 ジェネラルマネージャ マーケティングクラウド本部)は、改革を進めるうえで、マーケティング部門と他部門との連携、意思統一の在り方についてどのように進めるべきかについて質問した。

 これに対してドミノ・ピザジャパンの富永氏は「直感とデータの相克がある。自分の反省から言うと、過去の自分の常識にとらわれて自分の仮説が崩れたことがある。その体験から、企業上層部に対しても、直感とデータが異なった場合に、データの示唆を取り入れることの重要性を訴えていければと思う」と述べた。

 富永氏は「直感とデータドリブンの使い分けがしっかりとできることが、これからの経営者に必要だ」と語った。

 吉野家の田中氏は「自分でもアナログとデジタルの線引きができていないところがある。アナログをデジタルに置き換えながら全てをシームレスに連係させていかないと、ユーザーの顧客体験を生かすことができない。現在、最も力を入れているのが、店長経験者をデータ分析担当者にして、データの中から変化を見つけてもらうこと。分析専門会社に依頼するのではなく、店長経験者が見ることで説得力が増す。お客さまのそばにいつも吉野家があるという状態に持っていくことがデジタル化の課題だ」とまとめた。

 一方、ドミノ・ピザジャパンの富永氏は今後の方向について「日本の消費者をピザに向けるために、ピザを食べるモチベ―ターを、商品開発とWeb、SNS、メールなどのコミュニケーションに生かしていきたい」とした。

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