ここからは、ファイルサーバの代替として見た時のクラウドストレージサービスを見ていきたい。従来、シャドーITの代表格のように語られがちだったクラウドストレージサービスだが、セキュリティや既存のID基盤との連係など、企業情報システム部門の要求に対応することで、ファイルサーバに代わるものとして認知されつつある。
この企業向けクラウドストレージサービスの代表格といえるのが「Box」だ。海外で多数の実績を持つだけでなく、日本国内でも既に中小・中堅企業から大企業まで多くの企業で導入実績を持っている。
「Box」最大の特徴は、企業のコンテンツプラットフォームとしての数多くの機能・性能を提供している点にある。一般的なクラウドストレージサービスのように複数のデバイスでファイルの同期と共有(Sync&Share)が行えるだけでなく、コンテンツファイルを軸としたコラボレーションを支援するプラットフォームとしての機能の提供に重きが置かれている。
その筆頭といえるのがプレビュー機能で、クラウド上のPDFやOfficeドキュメント、動画、CADなどの各種コンテンツファイルを、Webやモバイルアプリケーションから確認し、簡単にコメントを付けることもできる。デバイス側にファイルをダウンロードしないため、万が一デバイスが紛失・盗難してしまった場合もセキュリティを担保することができる。とりわけモバイルワークや在宅勤務を推進する企業にとって、重要な機能といえるだろう。
また、このプレビュー機能はビジネスでの利用頻度が高い120種類以上のファイル形式に対応しているので、デバイスごとのアプリケーションのインストール状況にかかわらず、複数ユーザーの間でファイル活用することができる。このプレビュー表示では、PCやタブレット、スマートフォンなど、それぞれのデバイスに最適化したフォーマットに変換されるため、どのデバイスからでもストレスなく閲覧できるようになっている(図3)。
米Boxではマイクロソフトとは戦略的な提携を行っている。このため「Box」は、Windows OS上で動作するOfficeやOffice365、「Azure Active Directory(Azure AD)」との連係機能を実装しており、さらに最近では、「Office Online」や「SharePoint Server」「SharePoint Online」などとの統合機能も進めている。
加えて、ワークフロー機能を備えているのも「Box」ならではだ。これにより、どのようなドキュメントをどういったルートで確認、承認し、最終的にどこに保管するのかといった一定のフロー/タスクに従った書類の運用を自動で行えるようになる。直感的なインタフェースを備えているため、誰でもフローの設定やタスクの割り当てを行うことができる。
2016年6月、米Boxと富士通は協業を発表した。この協業に基づいて富士通は、国内外のグループ従業員約16万人が使用するコミュニケーション基盤にBoxを採用、導入・運用ノウハウを獲得して自社ソリューションの一部として企業向けに販売することも発表している。
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