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ようやく登場した「Bluetooth 5」で何が変わるのか?5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)

» 2017年03月22日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 Bluetooth 5のポイントをまとめれば、4.0で舵を切ったコネクションレスIoT指向がより強まり、BLEと同じ消費電力で、用途によってより速く、広く、多くのデータを送れることだ。

ウェアラブルデバイスとヘルスケア、オートモーティブ応用などが有望

 一般論になるが、高データレート化は、特にウェアラブルデバイスで計測したデータを処理するヘルスケア領域で重要視されている。ますます多くの情報をリアルタイムで処理する必要に迫られているからだ。Bluetoothはウェアラブル機器やスマートデバイスに既に採用されており、Bluetooth 5もそれらデバイスに搭載されることが見込まれていることから、この領域のアプリケーションには好適な選択になるだろう。

 またオートモーティブ(自動車)関連のアプリケーションへの適用も有望だ。自動車内の各種センサーの情報の監視や、その情報のスマートフォンによる表示などに利用できる可能性がある。また車内での音楽や映像エンターテインメントにも応用が広がるかもしれない。

 ハンズフリーのヘッドフォン/イヤフォン、マイクなどとの相性は良いのだが、こちらはBLE以前のレガシーなBluetoothが利用されているのが現状。2Mbpsのデータレートを生かした高音質コーデックの開発が期待されており、それが無線で安定して通信できるかどうかが課題になっている。高音質用のオーディオプロファイル開発の動きもあるので、こちらも有望だ。

 低消費電力性と広エリア性は、長時間の人物、動物、機械、農作物、圃場などの見守り/監視、各種モニタリングなどのアプリケーションに役立つ要素になる。

 さらにブロードキャスト情報量の増大はコネクションレスIoTネットワークで新しいサービスを開拓していく基礎になるだろう。

 なお、セキュリティについてはバージョン4.2に盛り込まれた高強度の暗号方式を含むセキュリティ技術を引き継いでいるため、特にペアリングで利用するときの脆弱(ぜいじゃく)性は基本的に解消されていると考えられる。

大量生産とオンボード実装による低コスト化が進む可能性

 最後にコスト面だが、一般的に大量生産が軌道に乗ればチップもモジュールも低コスト化すると考えられており、スマートデバイスへの搭載が有望なBluetooth 5は他の規格対応製品と十分に競争力があると思われる。

 また、従来はチップベンダーの製品をモジュールベンダーがモジュール化し完成品ベンダーはモジュールを実装し組み立てるのが一般的だったが、現在は完成品ベンダーがチップを直接仕入れ、いわば中抜きが行える「オンボード実装」によるコスト低減を目指すのがトレンドになりつつある。ただしこれは一方で検証、テストプロセスなどが完成品ベンダーの責任になるということでもある(図2)。

Bluetoothデバイスの実装形態の変化 図2 Bluetoothデバイスの実装形態の変化(出典:アンリツ)

 そこでBluetooth製品の評価を行うための計測環境の有無が今後問題になりそうだ。これにはシンプルに規格適合評価ができるテスト装置が市販されている。Bluetooth規格の特徴として、テスト仕様が具体的に策定されていることが挙げられる。

 仕様策定に当初から参画してきた唯一の計測器ベンダー、アンリツの製品では、テストセットにBluetooth SIG認証済みのBluetooth 5に関するRF領域の送信受信試験用テストケースをあらかじめ組み込み、簡単に規格適合テストができるようにしている。

 テストはわずか数秒程度で終了する。問題があれば詳細に計測データを調べてベリフィケーションなどを行うことができる。図3はモジュールのテストの場合の接続例だが、電波を遮蔽(しゃへい)するシールドボックス内でアンテナ結合を使って実際の電波状態でテストすることも可能だ。

Bluetooth 5対応テスト装置によるモジュールの規格適合評価のイメージ 図3 Bluetooth 5対応テスト装置によるモジュールの規格適合評価のイメージ(出典:アンリツ)

 Bluetoothチップベンダーは世界に20社ほどあり、モジュールベンダーは100社以上といわれている。いずれBluetooth 5対応製品が世に出るころには低価格化しているかもしれないが、おおよそ万単位のロットで1チップ当たり1〜2ドル、モジュールで5〜10ドル程度が目安になりそうだ。1〜2個のサンプル提供は1万円程度かといわれるので、新製品・新サービスのプロトタイピングにそうコストはかからなそうだ。これを機会に、Bluetooth 5のビジネス化を検討してみてはいかがだろうか。

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