業務用PCを組織として保護する必要性は理解できたが、普通のバックアップでは容量も世代管理もままならない。効率の良いバックアップ先を賢く選ぶ方法を指南する。
企業の働き方改革への取り組み強化などを背景に、従業員の外出先や自宅でのPC利用ニーズは増加する一方だ。しかしこうした状況は企業にとって、PCからの情報漏えいリスクが高まることを意味する。さらに2016年秋ごろからはランサムウェアの脅威も顕著になってきており、サイバー攻撃対策の観点からも「データをいかに守るか」が喫緊の課題となっている。そこで有用となるのが、PCバックアップツールだ。製品選定のポイントはコストに加えて、管理者とエンドユーザー双方の使い勝手だ。
PCからの情報漏えい対策を考えたとき、そもそも「エンドユーザー個々のローカルPCにはデータを保存させない」という仕組みを構築することはできる。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)に代表される画面転送型のシンクライアントだ。
しかし、シンクライアント環境を構築するためには多大なコストが必要で、またネットワークセキュリティをどうやって担保するかという問題もある。体力のある大企業なら選択肢の1つとなるが、直接利益を生まないソリューションへの投資は、中堅中小企業にとっては慎重にならざるを得ない判断だ。
とはいえPCからの情報漏えいに加えて、ユーザーのPC誤操作による重要データの消失には、何らかの対策が必須となる。そこで活用できるのがPCバックアップツールだ。製品選定に当たっては、前編でも述べたようにコストと、管理者およびエンドユーザーの使い勝手に十分留意する必要がある。
例えば今回取材したバックアップツールの1つであるAOSBOXでは、PCデータのバックアップ先としてクラウドストレージ(具体的にはAmazon S3とGlacier)をラインアップしており、バックアップ対象となるデータのアクティブ度合いに応じてバックアップ先を選択することができるようになっている。これはバックアップデータの保存コスト低減に大きく効いているサービス提供形態だ。
このサービスを提供するベンダーでは、Amazon S3をホットストレージ、Amazon Glacierをコールドストレージと位置付けており、前者にはユーザー間で共有され、さらに短期保存、即時復元(約10分)が要件となるデータのバックアップを想定している。一方後者には、長期保存が前提のデータを圧縮して保存し、復元にも3時間以上かかっても差し支えないデータをバックアップする想定だ。
端的にいえば、アクティブなデータのバックアップには、より利便性の高いクラウドストレージを利用し、長期保存するデータのバックアップには、より低コストのクラウドストレージを利用して、バックアップコストを抑えるということである。
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