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運搬ロボ、トラックシェアリング……日本の物流はAmazonを超えるか?イベントレポートアーカイブ(2/3 ページ)

» 2017年08月24日 10時00分 公開
[土肥正弘キーマンズネット]

深刻化するドライバー不足と車両コストを解消するサービスを提供

 Hacobuは2年前に創立されて間もない企業。アスクル、YJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなどが出資し、創業時から運送会社向けの車載ハードウェア、スマートフォンアプリと、それらと連携するクラウドプラットフォーム「ムーボ(MOVO)」を提供。また、これにオンライン配送受発注サービス、リアルタイム運行管理サービスを加え、法人間物流の最適化に取り組んでいる。

佐々木 太郎氏 佐々木 太郎氏

 同社代表取締役の佐々木 太郎氏は、事業の目標を「企業間物流をテクノロジーで進化させ、持続可能な社会を作ること。そのためのオープンプラットフォームを形成すること」と説明する。最終的に目指すのは輸配送の自動化だ。「それには3つのステップがある」と佐々木氏は言う。

 1つ目のステップは「コネクテッドトラック化」だ。これは庫内情報、車両動態情報、ドライバーの生体情報データをリアルタイムに収集し、輸配送トラックの状態を可視化する段階である。2つ目のステップは、「トラッククラウド化」。輸配送が必要な企業が必要な時、必要な台数のトラックを融通できる仕組みを運用する。そして、3つ目のステップは未来の話だが、AIが運用する輸配送システム化だ。トラックの自動運転も含めて輸配送の自動化が実現すると佐々木氏は予測する。

 トラッククラウド化とはどういうことか。佐々木氏はサーバのクラウド化との対比で力説した。「かつては自社で繁忙期に合わせた容量分のサーバを購入していた。処理量が少ない閑散期でも固定費がかかる一方、繁忙期には負荷が処理能力を超えてダウンすることもある。それがクラウドサービスを利用することによって、必要な時に必要な台数のサーバが簡単に用意できるようになり、負荷増大時にはスケールアップやスケールアウトしてシステムダウンを避けられるようになった。また、固定費が変動費に変わったことも大きい」(佐々木氏)

 佐々木氏は、トラックの場合も同様に、現状では繁忙期に合わせて保有する必要があり、繁閑を問わず台数分だけ固定費がかかると話す。そこでトラックをプールし、その中からオンデマンドで利用していくことができれば、閑散期の必要台数に合わせて車両を保有するだけで済み、繁忙期にはスポット配車サービスを利用して対応できるとしている。

 コネクテッドトラック化とトラッククラウド化には、オンライン受発注ができるシステムと、リアルタイムのトラック動態情報把握の2つのイノベーションが必要。そこで同社のサービスが貢献するというわけだ。

図2図3 (左)図2 コネクテッドトラックかのイメージ(右)図3 トラッククラウド化のイメージ

 「しかしそれはトラックの囲い込みを促すのでは?」という疑問に対して佐々木氏は「それはゲーム理論で言う囚人のジレンマ」だと説明する。本来は全員がトクをする解答があるのに、誰かが裏切ると自分が損をすると心配をして、他を出し抜くために全員が損をする選択をしてしまうことがあるというのが「囚人のジレンマ」だ。

 トラックの場合なら、荷主Aがトラックを囲い込むと、荷主Bも囲い込みを行う。限られた台数のトラックを奪い合うとリソース利用に無駄が生じ、全員のコストが上がり、結局車両手配ができなくなるリスクを負ってしまう。

図4 トラックのシェアリングで生じがちな「囚人のジレンマ」 図4 トラックのシェアリングで生じがちな「囚人のジレンマ」

 「極度にリソースが不足した時期が、囚人のジレンマから脱する好機」と佐々木氏は語気を強める。「2020年にドライバー不足は全体の1割=10万人に達する。その時点ではまだ自動運転技術は無人走行の域に達せず、解決にはならない。今は囲い込みによる競争から、シェアリングによる共創を目指す時代に変化している。コネクテッドトラック化、トラック・クラウド化を進められるのは荷主の皆さま。私たちはそれを全力でサポートする」(佐々木氏)

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