2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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名だたるグローバル企業から業種横断的に採用され、国内でも三井住友フィナンシャルグループと電通への全社的な導入が相次ぎ急成長を遂げているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ソフトウエアメーカーがある。ニューヨークに本社を置き、2017年に日本法人も設立した「UiPath(ユーアイパス)」である。同社は、「働き方改革」を象徴するようなリーディング企業の業務効率化を全面的に支え、2017年10月からは日本語での顧客サポートを開始するなど、日本市場重視の姿勢を鮮明にしつつある。この度、同社主催カンファレンス「UiPathForward Japan 2018」のために来日したCEOのダニエル・ダインズ氏に、グローバルと日本双方で急拡大する事業の現況と、今後の製品戦略について聞いた。なお同カンファレンスは1,132名の参加者を迎え盛況を博した。
―まず簡単に、ご自身と会社のご紹介をいただけますか。
私は米国シアトルのMicrosoftで長年エンジニアとして働き、データベース製品の開発などに携わっていました。その後、故郷のルーマニアで2005年に会社を設立。コンピューターに視覚を持たせる、SDK(Software Development Kit)の開発を始めました。コンサルタント会社などとともに、この技術がベースのRPAツールを製品化したのが12年で、第1号の顧客はインドでの業務受託企業でした。以来RPAの大きな可能性を確信し、製品開発を続けています。
現在のUiPathはニューヨークに本社を置き、著名なグローバル企業など世界におよそ550社の大規模ユーザーがいます。昨年1年間にその数は5.6倍と急成長しましたが、とりわけ劇的な拡大をみせているのが日本です。昨年6月時点でわずか6社だった日本国内のUiPathユーザーは年末時点で約100社。わずか半年で15倍以上の規模となった形です。日本を最優先の市場として深くコミットし、日本のユーザーからのニーズに応える形で製品のブラッシュアップに力を入れていくというのが、グローバルでのわれわれの方針です。
―伸びている日本市場向けのローカライズに力を入れるということでしょうか。
いえ、もう少し本質的・戦略的な意味があります。多くの日本企業は、顧客のニーズを満たすため、顧客と直接向き合う現場が主導する形でビジネスを進めています。個別のケースにきめ細かく対応する中で、相対的に少量かつ複雑な定型業務が大量に生じている上、業務品質へのこだわりが強く、セキュリティー要件も厳しい。つまり日本のオフィスには、まさにRPAの導入を必要とする多種多様な業務が眠っており、しかもそれらを自動化するにあたっては、きわめて高い水準の品質が求められるということです。
ですから、日本企業が抱くロボットへのニーズを深く理解して仕様や機能に反映し、日本のユーザーからの支持をしっかり獲得して、その品質レベルをグローバル標準とすることで世界のどこでも通用する製品力の強化につなげたい、われわれはそう考えています。
―数あるRPAツールの中で、UiPathの特長はどういったものでしょうか。
先ほども少し触れたように、われわれのロボットは「視覚」を備え、作業対象となる画面上の要素を把握する正確性を特長としています。PC上での一般的なアプリケーション操作にとどまらず、Webアプリの操作や仮想デスクトップ環境上での運用においても優れた性能を発揮できるのは大きな強みといえるでしょう。
このほか、開発ツールの機能の豊富さや操作画面の分かりやすさといったユーザーフレンドリーな部分、さらにOCRやAI、BPMなどと円滑に連携させられるAPIが整備されている点も特長といえます。
デスクトップ型・サーバー型いずれの運用も可能なUiPathは導入規模を選びません。サーバーで数百台規模のロボットを動かすようなケースでも、作業のスケジュールや処理待ちの状況、処理後のログなどを、定評ある管理ツール「UiPath Orchestrator」上で一元的に確認可能です。
―今年以降の製品開発計画について、目指す方向性と具体的な取り組みを教えてください。
われわれが最終的に目指すのは、RPAを組織化された労働力、すなわち「デジタルワークフォース」として活用できるプラットフォームの実現です。そこへ至る道においては「ケーパビリティ(ロボットの能力)」「アジリティ(環境変化への素早い対応力)」「スケーラビリティ(適用範囲と規模の拡張性)」という3つのキーワードがポイントとなります。
まずケーパビリティについてですが、作業画面や紙の資料をより正確に認識し、また読み取ったデータの高度な分類や解析を行えるよう、AIの活用を拡大します。サードパーティーが提供している画像認識や自然言語処理などのAIを容易に利用できるようにする一方、UiPathそのものにも機械学習機能を搭載し、バックエンドで処理する仕組みを近く実装する予定です。
アジリティの向上に関しては、より短期間で容易にロボット(ワークフロー)を実装できるよう、汎用的な作業向けに“既製品”のロボット(ワークフロー/ツール群)を取りそろえて販売するマーケットプレイスを今年中に設立します。また、リソース配分を柔軟に行えるパブリッククラウドでの運用にも早期に対応したいと考えています。このほか、標準的なERPやBPMツールとの接続性向上にも引き続き取り組んでいきます。
スケーラビリティ、すなわち、より広範な業務へRPAを活用していく上では、コンプライアンス対応の観点から信頼性の高い作業記録を保存しておくことが重要となります。粒度の細かいセキュリティ設定に対応できるUiPathの強みをさらに伸ばす形で、(業務を基準に必要な権限を付与する)ロールベースのアクセス制御から一歩進めたユーザー単位・コンピューター単位でのコントロールに対応したいと考えています。また、デスクトップ仮想化とRPAの統合環境も2019年の提供開始に向けて開発を進めているところです。
―RPAによる業務効率化の必要性を認識する経営層が増えるいっぽう、効率化の対象業務をいま担っている人たちは、仕事への向き合い方をどう変えるべきか、戸惑いや不安を抱きがちなのも事実だと思います。この点について、どうお考えですか。
はっきり申し上げたいのは、われわれの製品は、いま誰かが就いている仕事を奪うような存在ではないということです。意志決定や創造性の発揮、顧客対応といった、人間しかできない仕事にもっと集中するための業務自動化であり、われわれの製品もそのために存在しています。
ヒューマンエラーが許されず、また高度なセキュリティーが求められる煩雑な定型業務から人間を解放することは同時に、そうした業務を行ってきた人が、より本質的な顧客ニーズに向き合う時間を創出することにつながります。特に人手不足が深刻な日本においては、真に人間が担うべき役割に貴重な人員を充てるための業務効率化が欠かせないと考えています。
―最後に、日本のユーザーへのメッセージをお願いします。
われわれの製品は開発拠点こそ海外にありますが、すでに日本を代表する企業が日本語環境のもとでなんら問題なく運用しており、ユーザーインターフェースに関しても早期に完全日本語化を実現する予定です。最も注力する市場である日本からのフィードバックをグローバルな製品の改善に役立てていくとともに、先進事例の共有やトレーニング、開発における標準化支援といった日本でのサポート体制も今年1年で充実を図ります。長谷川康一取締役CEOをはじめとする日本法人のメンバー、またパートナー企業の協力も得ながら、ユーザーコミュニティでのイベント開催なども計画しています。ぜひご期待ください。
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