資生堂は約5000人が利用する販売・顧客分析システム基盤をオンプレミス環境からOracleのクラウドサービスへ移行したことで、運用コストを約20%削減、夜間バッチ処理を約90%高速化させた。
資生堂は同社の販売、顧客分析システム基盤「B-NASS+」の移行に「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を採用した。移行作業は資生堂のDX、IT戦略機能子会社の資生堂インタラクティブビューティーが担当した。
B-NASS+は国内外の販売管理と顧客・購買管理の情報に市場動向を組み合わせ、網羅的なデータ分析を可能にするシステム基盤であり、2016年に運用を開始した。現在、約5000人の従業員が利用している。
営業やマーケティング担当者がより綿密な提案をできるよう数千の店舗POSからデータを収集、分析し、取引先ごとのデータを一覧できるモニタリング機能を備え、その他にも商談用の提案書テンプレートや詳細な顧客分析機能などを備える。
これまで運用してきたB-NASS+は、オンプレミスの「Oracle Database」と「Oracle Business Intelligence」、汎用(はんよう)サーバやストレージで構築したものだった。それをOCIのデータベースサービス「Oracle Exadata Database Service」と「Oracle Analytics Cloud」に移行したことでデータの増加や多様な分析ニーズに対応し、コストを軽減しながらもデータドリブン営業およびマーケティング活動を可能にした。また、5年間のTCO(総所有コスト)を最適化し、運用コストを約20%削減した。
さらに「Oracle Exadata Database Service」によって夜間バッチ処理を約90%高速化させた。画面レスポンスも改善され、処理性能が大幅に向上した。「Oracle Analytics Cloud」を活用することで従来のインタフェースをクラウドでも利用でき、新たなセルフサービスBI環境も構築した。
B-NASS+のシステム基盤刷新プロジェクトを進めるにあたっては、日本オラクルのコンサルティング部門の支援の下、検証、環境構築、移行作業を進めた。2022年4月に設計を開始し、本番環境の構築やデータベース基盤の移行、分析プラットフォームの構築、検証などの工程を経て、2023年6月にOCI上で運用を開始した。
資生堂インタラクティブビューティーは新基盤へのデータ集約をさらに進め、AIを含む機械学習モデルの組み合わせやセルフサービスBI環境の構築を進めていく予定だ。販売を担う従業員がリアルタイムでデータを活用して容易にインサイトを引き出せるよう、新システム基盤を活用して営業活動を進化させる考えだ。
資生堂の高野篤典氏(CITO兼 資生堂インタラクティブビューティー 共同代表取締役社長)は「OCIへ移行したことで増大するデータや多様な分析ニーズに対応し、安定した処理性能と拡張性を実現。柔軟性に優れたシステム基盤を構築できた。これまで活用してきたOracle製品の機能をそのままクラウド環境でも利用できるため、従業員は戸惑いを感じることなく利用できる。堅牢(けんろう)でありながらも柔軟性や拡張性の高い基盤に移行できた。今後リリースされる生成AI含む新規機能をタイムリーに活用し、より高度なデータドリブンを支える基盤へと進化するよう取り組んでいく」とコメントした。
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