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Office 365とG Suiteの選択、最後の見極め方は?クラウド時代のオフィススイート選定術(4/4 ページ)

» 2017年12月05日 10時00分 公開
[大川典久, 脇本 孝太郎富士ソフト]
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G Suiteを選択するポイント

イメージだけで決めると損をする

 Office 365は従来のOutlookやMicrosoft Officeの“使い勝手”を踏襲しているため、Microsoft Officeとの親和性が高い場合が多い。しかし実際には、OfficeやOutlookを長年利用している企業ではG Suiteを利用した方がOfficeのバージョンアップを行わずに移行できるケースもある。G Suiteは革新的だから使いこなせない、というイメージだけで敬遠してはいけない。

 Office 365はクラウドを利用してユーザーに対しさまざまなアップデートをするため、メインストリームサポートのOfficeを利用することが前提となっている(それ以外のOfficeを利用している場合は一部、機能が制限される)。Office 2013のユーザーはサポート期限が2018年4月10日までとなっており、その後の延長サポートの期間は正式なサポート対象ではなくなる。

 一方、G Suiteはローカルの環境に左右されずに利用できる。例えば、前回紹介したドライブファイルストリームでは、Googleドライブのファイルをあたかも外部ストレージのように利用でき、ダブルクリックでクライアントのOfficeアプリケーションを利用してファイルを開いたり、ドラッグアンドドロップで保存先を移動したりできる。このドライブファイルストリームはクライアントのOfficeアプリケーションのバージョンに左右されない。

 また、OutlookとG Suiteを同期する「G Suite Sync for Microsoft Outlook(GSSMO)」についても、Microsoftの延長サポートが切れているので推奨はできないが、Office2003 SP3からサポートしている。さまざまな新機能を追加しつつも、ユーザーの使い勝手を重視しているGoogleだからこその配慮といえるのではないだろうか。

豊富なサービス

 G Suiteを選択する上でのポイントは、Googleならではのユーザー目線のサービスや機能の追加だ。Googleが提供する「Googleフォト」や「Analytics」といった50を超える無料サービスを、管理された一連のユーザーIDで利用できるのは大きなメリットといえる。

 例えば、Googleフォトを利用することで、広報部門など写真を多く利用する部門は、大量の写真を保存してもAI(機械学習)を利用して場所や人物などの情報で簡単に検索できる。

 また、2011年にリリースされたSNSサービスの「Google+」は2016年にコアサービスに移行したため、管理者はサポートを受けることができるようになった。さらに2017年9月には、長年要望のあった投稿のドメイン内限定公開の機能をリリースしたため、社内SNSとして活用することも可能となった。

 このような、ユーザーに対してユーザビリティの高い便利なサービスを提供することは、情報漏えいの原因となるシャドーITを減らす手助けとなる。

 今回紹介したOffice 365とG Suiteはクラウドサービスであるため、導入すればバージョンアップ作業を行う必要がなく、今後も時流に合わせて追加されるサービスや機能を利用し続けることができる。どちらの製品を導入したとしても、企業も管理者もユーザーも大きなメリットを得られるだろう。

 これまでの連載をご覧いただいた方は、両製品の機能の豊富さや便利さを理解いただけたと思うが、導入を検討する企業の中には、自社のユーザーはリテラシーが低いので、全ての機能を使いこなすことができないという意見を聞く。しかし、その意見は2つの側面で“間違い”を孕んでいる。

 まず、全ての機能を使いこなす必要はないという点だ。多くの機能を使いこなせれば、それに越したことはないが、実際の業務を思い出して欲しい。

 果たして、ExcelやWord、Google検索の機能を全て使いこなしているユーザーが自社にどれだけいるだろうか。これまで、ExcelやWordを使うにあたり、便利な機能や使い方はユーザーが自ら学んだり、周りに教えられて利用したりしてきているのではないだろうか。

 2つ目は、ユーザーが各種サービスを使いこなすか、こなさないかは、ユーザーのリテラシーによるものではなく、それを使うと業務効率が上がるか、上がらないかというところが大きいということである。実は管理者が思っているほどユーザーのリテラシーに依存する部分は少ない。筆者は両製品ともに、多種多様な業種の企業への導入サポートを経験している。一時的な混乱はあるものの、それは変化の過程の一部分であり、必ず終息する。繰り返し行うユーザー教育も混乱の終息を早める手段として有効であると実感している。そして、使い方を覚えたユーザーにとっては、知らぬ間に以前利用していたサービスに戻ることができないくらい“当たり前”に使い勝手の良いツールとなっているものである。

 製品選定の要素として、将来どのような企業になりたいかというビジョンと合う製品を選ぶことができれば、5年、10年先でも活用し続けられるのではないだろうか。

筆者紹介

大川典久

大川典久

富士ソフトに入社以来、Microsoft製品を扱う部署に所属し、「SharePoint Server」の技術者として多くのプロジェクトに参画。現在はOffice 365をはじめとしたMicrosoftのクラウドサービスを中心にセミナーの企画を手掛け、プレゼンターとして活動している。


脇本孝太郎

脇本 孝太郎

2009年からGoogle Appsビジネスに従事し、営業およびプリセールスとして活躍している。多種多様な業種のGoogle Apps導入プロジェクトに参画してきた。現在は担当領域を広げ、Google Appsだけでなく「Salesforce」など他のサービスを含めた業務改善やワークスタイル変革について、提案やセミナーのプレゼンターとして活躍している。


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