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» 2018年03月28日 10時00分 公開

「SD-WAN」最前線、WAN最適化の大きな潮流となるか?(5/6 ページ)

[小野陽子,IDC Japan]

セキュリティを標準化してガバナンスを効かせるニーズ

 もう1つの大きな理由は、セキュリティ強化の必要性だ。ネットワークの細分化=セグメンテーションはセキュリティ対策として重要なテーマになってきている。従来はVLANなどを利用してネットワークを適切に分離する方法をとってきたが、それには技術者によるネットワーク設計と実際の機器設定などが必要だ。

 SD-WANなら、WAN全体を一元管理できるようになり、拠点間を技術者が移動することなく簡単にネットワーク構成が変更可能になる。セグメンテーションの設計、設定、変更が容易になるだけでなく、従来よりも小さい単位でのセグメンテーションだって可能だ。

 例えばパートナー企業と接続する専用セグメントや、外部のモバイルワーカー、IoTデバイスなどの専用セグメントを切り分けるというように、必要に応じて柔軟かつ簡単にネットワークの定義と運用が可能なところが評価されている。

 さらにガバナンスを末端にまで効かせたいという理由もある。全体でSD-WANを実施すれば統一された標準的セキュリティを備えることができ、ガバナンスをグローバルに末端まで届かせることができるようになる。もっとも逆説的に、調査では、日系企業がガバナンスを十分に効かせることができず、米国現地法人が日本の本部よりも先に自分たちでSD-WANを導入してしまっている例もある。いわゆる「野良」SD-WANである。

運用管理の迅速性、利便性

 4番目の大きな理由が、WAN運用管理の負担軽減と迅速性の向上である。具体的には、ハードウェアが抽象化されて個々の機器を意識しなくとも設定、変更が統合画面から実行できる作業負荷の軽減と、ハードウェアのプロビジョニングと設定の時間短縮(それによるアプリケーション導入、変更の迅速性)など運用管理上の利点が挙げられる。特に、今後のDX(デジタル革命)のアプリケーションでは、プロビジョニングの迅速性などに対するユーザー部門からの要求はますます厳しくなる。

 実際、そうした運用管理面での負担は多くの企業が感じている。WAN構築と運用管理の負担感についての2017年調査の結果が図2である。クラウド利用やモバイル利用の拡大によってスキル面で負担感が増大しているケースが68.1パーセント、工数面での負担感増大を感じるケースが55.9パーセントと、いずれも過半の企業で負担が重くなったと回答している。

クラウドやモバイルの影響によるWAN構築 図3 クラウドやモバイルの影響によるWAN構築や運用管理の負担感の変化(IDC Japan)。n=689、WANを構築している企業に質問

 その負担感の原因の1つに挙げられるのが、フロントオフィス業務を中心とする拠点(営業所、店舗、販売拠点など)に新たな種類の端末や認証機器などが追加されるケースが多くなってきたことだろう。

 また各拠点からSaaSを利用するケースも増えており、中には検証されていないSaaSの勝手な導入が行われている場合もある。IT部門としてはガバナンスが効きにくくなる不安とともに、日常的に寄せられる「つながらない」「遅い」というクレームに対応しなければならなくなっている。

 勝手SaaSは、IT部門から見ると機能的にも信頼性の面でもブラックボックスであり、クレームを受けても原因特定や問題解決が難しい場合が多い。こうしたクレームの原因がWANであるとは限らないが、インフラチームは原因切り分けと対応に忙殺されてしまうのだ。しかもIT部門の人的資源の多くはアプリケーション開発に回され、インフラ領域は人手、スキル不足で外部化を余儀なくされている企業が増えている。外部化によってもはやIT環境の変化に体制的に追い付かなくなっている。この状況にSD-WANが役立つことが多い。

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