SD-WANの明確な定義はないが、IDCではSD-WANを、従来「ハイブリッドWAN」として認知されてきたアーキテクチャの発展形と捉えている。
ハイブリッドWANとは、企業拠点において2つ以上の異なるアクセステクノロジー(MPLS、ブロードバンドベースのインターネット、3G/4G、その他)による2つ以上のリンクを活用するネットワークのことである。
企業ITのデータセンターやクラウドへの集約に伴い、WANやセキュリティの重要性は増している。また、SaaSを始めとするパブリッククラウドサービスが複数利用されるようにもなり、社外の接続先が増加するとともにトラフィック量が増加、さらにIoTも入り込んできている。企業拠点のネットワークのパフォーマンスと信頼性を高めつつコストを抑制する手段として、モバイル回線やインターネットの活用による拠点ネットワークの経路冗長化は現実的な選択肢となっている。
ハイブリッドWANにソフトウェア定義機能を追加したのがSD-WANだ。従来のハイブリッドWANとどう違うのかといえば、IDCは次のような機能追加を挙げている。
まず前提になるのは、物理的なネットワークの上に仮想的な専用ネットワークをソフトウェア定義によって作成できるソフトウェアオーバーレイ機能だ。この機能によって、ビジネス上のニーズに従って、あるアプリケーションがいま必要とする条件(例えば帯域、信頼性、セキュリティなど)に応じて、最適な仮想ネットワークを自動的に選んで利用できるようになる。例えば基幹系システムのトラフィックが月末に急増する場合、その時だけ情報系システムの帯域を制限したり、場合によってはインターネットVPNに切り替えたりを専門的なスキルや手間をかけずに行うことができる。
どんな場合にどのネットワークを選択して制御するのかをプログラミングしておけば、技術者がその都度関与してネットワーク機器の接続や設定を変更したりする必要がなくなり、人的資源や時間のロスなく、ネットワークを柔軟に運用できる。それがアプリケーションベースのポリシー制御という意味だ。どのようなポリシーが必要なのかはアプリケーションのアナリティクスによって導き出す。アプリケーションポリシーを定義し、実行するのがコントローラーであり、幾つか用意されているWANをまたいで、アプリケーションに一番適切な通信経路を決める(インテリジェントなパス選択を行うルーティング)。これを可能にするのがSD-WANというわけだ。
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