かつてIT業界に「ダウンサイジング」の嵐が巻き起こった。サーバやクライアントが小型化されてシステム規模が縮小されたのはもちろん、デスクトップPCもノートPCもどんどん小さくなり、ついでに予算も縮小されて……。
最後の1つはともかく、多くのメーカーは何かと小さいサイズのデジタルデバイスを作りたがる。「世界最小」「最軽量」といったうたい文句はよく目にするものだろう。
つい最近、IT業界の巨人、IBMが「世界最小」をうたうコンピュータを発表した。「それってIBM製の超小型コンピュータ『Palm Top PC 110』(通称、ウルトラマンPC)よりも小さいの?」なんて思う人もいるかもしれない。いやいや、アレよりはるかに小さい。どのくらいかといえば……。
それは、2018年3月18日から米ラスベガスで開催されたIBMのイベント「Think 2018」で発表された。どれほど小さいのかといえば、塩の結晶1粒よりも小さいのだ。
同社は「ユビキタスコンピューティング」に力を入れている。2000年代初頭によく耳にした「ユビキタス」という言葉は、スマホなどの台頭で取り沙汰されることが少なくなった気がするが、プロジェクトとしてはしっかり生き残っていた。
今のところ、極小コンピュータの製品名は公表されていない。1基当たりのサイズは約1平方ミリ。もはや「微細」コンピュータだ。
同社は、これを「クリプトアンカー(crypto-anchors)」として使うことを想定している。クリプトアンカーとは、特定の製品に貼り付けたり混入させたりすることで流通を監視し、その製品が「正規品」であることを証明する手だてとしても使う、デジタル署名的なものだ。ブロックチェーンを活用して、強固なセキュリティを実現するというから小さくても侮れない。
「でも、これってホントにコンピュータ? ICタグのようなものじゃないの?」といぶかしむ人もいるだろう。だが、詳細なスペックこそ明らかになっていないものの、関係者によれば1ミリ四方のコンピュータには数十万個のトランジスターとRAMを搭載し、太陽電池による電源と通信モジュールを備えている。これ1粒で1990年代のIntel x86チップと同等の性能だ。
そして価格も衝撃的だ。1基当たり10セント(約110円)。IBMは、1年半程度で正式な製品版を登場させるそうだ。使いどころは限定されそうだが、将来的にはアッと驚く使い方が生まれるかもしれない。
上司X: 塩粒よりも小さいコンピュータをIBMが開発中という話だよ。
ブラックピット: これは小さい。米粒大ではなく、塩粒並みとは。
上司X: 確かに日本人なら米粒と比較するかもしれないな。そこはそれ、小麦文化の国だからな。写真で見る限り、塩粒と比較している。
ブラックピット: 何ですか、小麦文化圏て。でも、塩は製品によって粒の大きさが違うと思うのですよ。岩塩を破砕したタイプだったりサラサラの加工塩だったり、粒が大きめの天然塩だったり。米粒ならどんな品種でも大差ないじゃないですか、コシヒカリでもササニシキでも。
上司X: 塩粒か米粒かの話は分かったから、微細コンピューターについて話そうじゃないか。
ブラックピット: そうですね。小さいのはいいことです、多分。ここまで小さくする必要性はあるのかとも思わないでもないですが。すぐになくしちゃいそうですよ。
上司X: まあね、でも、これに1990年代のx86ぐらいの機能が収まるのだから衝撃的だよ。あの頃、俺たちが使ってたPCがここまで小さくなったのか、とね。
ブラックピット: Windows 3.1なら普通に動かせそうですね。いまさら動かしてもという感じもしますけど。
上司X: そりゃあ動いたら面白いが、スペック的には可能かもしれないけど、仕様がPCではないしなあ。ともかく、このサイズのコンピュータがあちこちに埋め込まれて、移動しながら相互に通信しあう時代がすぐそこに来ているってことなんだよな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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