次に部門や世代別に「ワークスタイル変革に関するニーズの有無」を聞いたところ、「具体的なニーズがある」と「必要性は認識している」を合わせた割合がどの部門でも80〜90%となり、部門問わずワークスタイル変革の必要性を感じている様子だった(図2-1)。中でも「具体的なニーズがある」と回答した割合は、部門別では「営業などの社外活動が多い部門」が24.6%と最も高く、世代別では子育て世代や介護世代でのニーズが高かった。営業先から営業先への移動時間や子育て、介護にかける時間など、日によって変わる可能性のある不定形な時間の使い方をする場面においては、決まった時間に社内にいることを前提としないワークスタイル変革がより効率的に作用するのだろう。
「具体的なニーズがある」とした回答を立場別で比較すると、2017年に実施した調査結果と比較すると経営部門以外の全ての層で「具体的なニーズがある」とする回答の割合が増えていた。中でも、子育て世代、介護世代や営業職などのニーズ認知が高い一方で、経営層や人事部門ではニーズ認知の割合が10ポイント以上低くなっていることが分かる。それでも、2017年に実施した調査結果と比較すると、わずかではあるが、人事部門で「具体的なニーズがある」とする回答が増えている(5.6ポイント増)。
経営部門の回答は、2017年から目立った変化がなく、部門の課題感がまだ経営部門にまで届いていない状況が明らかになったといえる。
関連して「ワークスタイル変革をどういった目的で検討したか」も聞いたところ、「働きやすい環境を提供して、良い人材を維持・獲得したい」76.4%、「コミュニケーションを活性化したい」35.8%、「多様な拠点でのコミュニケーションを最適化したい」34.9%、「サービス品質を高めたい」29.4%、「グローバル化に対応したい」11.4%と続く結果となった(図3)。前述した子育て・介護などの事情も考慮した多様な労働環境を整備することでより良い人材の獲得につながると考えている企業が多いことが分かる。またワークスタイル変革によって社内外問わず従業員のコミュニケーションを活性化させることで、新しいアイデアによる新規提案や既存業務の効率化などにも期待が寄せられているようだ。
なお、「その他」の回答では「生産性向上」「財務状況改善」「残業削減」が挙げられた。中には、「規制のため仕方なく」や「ワークライフバランスを盾にした人件費削減施策だ」という批判的な見解も見られた。
最後にワークスタイル変革への取り組み状況で「変革へのニーズを感じているが、取り組みを実施する段階には至っていない」「変革へのニーズを感じており、過去に取り組みを検討したが断念した」「変革へのニーズはなく、実施する予定もない」とした回答者に、「ワークスタイル変革が進まない理由」を聞いた。その結果「社内にノウハウがない」55.1%、「人事労務に関する懸念が払拭できない」44.1%、「経営者に心理的抵抗がある」39.0%、「投資コストに効果が見合わない」33.9%、「セキュリティ面の懸念が払拭できない」25.4%、「従業員に心理的抵抗がある」19.5%と続いた。
ワークスタイル変革への取り組みでは、多様な働き方を前提に労働時間の把握はもちろん、人事評価や業績管理のための制度やインフラの構築を検討する必要がある。このような背景から、そもそも人事労務やインフラ構築に足るノウハウが社内にあるのかどうか、投資対効果が見合うのかどうか、などが懸念点として挙げられているのだと予測できる。
なお、その他とした回答者からは、「改革推進のための人員を確保できない」「経営層というよりも管理職全般に心理的抵抗が強い」「日々の業務をこなすのに精いっぱい」といった意見が寄せられた。
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