年々、増加するID、パスワードをどう管理するかが問題だ。ただ、企業にとってID管理システムの導入メリットはなかなか実感できないだろう。そこで、ID管理システムが持つ機能をおさらいするとともに、最近注目されているIDaaSについて説明しよう。
クラウドサービスのビジネス利用が普及したことで、一人当たりのIDやパスワードの管理数は年々、増加傾向にある。従業員にとってはこれらを個人で管理するのは非常に面倒であるが、IDやパスワードが適切に管理されていなければ、情報漏えいのリスクもある。そこで、本特集では、ID管理システムを取り巻く最新事情と最近、ID管理で注目されつつある「IDaaS(Identity as a Service)」について詳しく解説しよう。
まず、現在の企業のID管理システムの導入状況について見てみたい。2018年8月から9月にかけて、キーマンズネット編集部が読者を対象に実施したアンケート調査「ID管理システムの導入状況に関する調査」によると、2014年に実施した同調査と比べ、ID管理システムの導入率は増加しているものの、いまだ6割以上が「ID管理システムを導入していない」との回答する。
同調査で「現在は導入しておらず、今後も導入予定がない」と答えた回答者に対して、「導入しない理由」を聞いたところ、最も多かった回答は「社内での優先順位が低く予算が取れないため」で、その後「必要性を感じないため」「導入コストが高いため」「どのような導入効果があるか分からないため」「ID管理システムが必要になるほど従業員が多くないため」と続く。
ID管理システムは、本来、企業のセキュリティ対策や従業員の利便性、生産性向上に大きな効果が期待できるものであるが、その導入メリットがまだ十分に認知されていないことが調査結果から分かる。
ID管理システムは、セキュリティ対策の強化やユーザーの利便性向上など、多くの面で導入メリットがあるソリューションだが、他のITソリューションと比べて、投資効果が経営層に伝わりにくく、導入が進まないのが現状だ。クラウドID管理サービス「SKUID byGMO」を提供するGMOグローバルサインが、約100社を対象に実施した調査を見ても、やはりIDやパスワード管理に予算が取れないことが第一の課題として挙がっている。
人手によるID管理で業務が回っている企業では、わざわざシステムに置き換えるメリットを経営層に訴えるのも難しい。従業員数が少ない企業では、管理対象となるID数も限られるため、人手による作業でも問題ないと感じている企業も珍しくない。
またID管理システムの導入によるユーザーの利便性向上に関しても、「多少の不便は現場が我慢すればいい」「投資することで、事業の売り上げにつながるメリットはあるのか」という経営層の一存により、どうしても投資の優先順位が低く設定されがちだ。
しかし、ID管理は今やITガバナンスの要としてだけではなく、セキュリティ対策の重要な施策の1つとしても認識される。またID管理の煩雑さから管理者やユーザーを解放することで、生産性の改善も期待できる。実際にそのような導入効果を上げた事例も数多く公開されているため、そうした情報を収集した上で、再度ID管理システムに対する投資の意義を見直してみたい。
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