「職場のよくあるシーン」を使ってメンタルヘルス不調者を出さないためにできることを考えます。入社2年目の若手社員への対応について考えていきましょう。世代の違いからカルチャーショックを感じる人もいるようです。
本コラムは2016年10月11日に掲載した「有名大卒の新卒社員が病む時 〜その言動が社員をダメにする」を再編集したものです。
Bさんは入社2年目の若手社員です。有名大学を卒業し、夢と希望を抱きながら入社しましたが、希望部署に配属されなかったことに不満を抱えていました。なかなか仕事に打ち込めず、自分が犯したミスが原因でお客さまからクレームがあっても、「既に担当者には説明済みで解決しているはすです」と返事をします。
彼の全く反省する様子もない態度に、上司のあなたは厳しく怒ってしまいました。すると数日後、彼は「この仕事は向いていないのでプロジェクトから外してほしい」「僕にはスキルもなく迷惑を掛けてしまう」と自信喪失で、その場から逃げ出したがるのです。最終的には、希望部署へ異動したいと要望してきました。
そんな部下に対して「大切な時期なんだから、もう少し頑張れ」と辛抱するように伝えましたが、彼のやる気は見えず、逆に遅刻を繰り返したり、急に休んだりすることが増えてしまったのです。彼への対応にはあなたも頭を悩ませています。
彼にやる気を出させるために、どのように対応するのがよいのでしょうか?
彼は、職場で全く役に立っていないと自信を喪失しています。彼の良い点を認め、口に出して褒めることが必要です。
「君はすばらしい、まだまだ可能性があるよ」といった漠然としたものではなく、「君の○○社への提案は細部にわたって配慮されていて、お客さまへの訴求ポイントが非常に分かりやすかった」などのようにできるだけ具体的に伝えましょう。自分のことをよく見てくれていると感じるとうれしいものです。
何かを成し遂げたときは絶好の褒めるチャンスですが、それ以外にも次のポイントで褒めることができるでしょう。
努力過程
「いつも遅くまで頑張ってくれていた」など、成果に至るまでの努力についても褒める。
協力体制
「周りの人が困っていると自ら率先して助言したり、一緒に調べたりしてサポートしている」など、周囲へ配慮は成果としては見えにくく評価されにくいポイントです。しかし、この気遣いは組織が活性化するための潤滑油となることがあります。ここもしっかり評価しましょう。
他者反応
「他部署の○○さんが感謝していたよ」など、自分の視点からだけではなく、他者からの評価も伝えてあげましょう。
職場のミッションにおける彼の役割や期待値を明確に表現して共有することが大切です。彼の仕事が会社にどのような貢献として表れるのか意識を持たせることで、会社の中で価値のある存在なのだと認識し、モチベーションの向上へとつながります。
これは、「マズローの要求5段階説のレベル4:自我の要求」を満たすことになり、比較的高いレベルでの満足感を得ることになるのです。
5年後や10年後にはどうなっていたいのか。部下の考えを聞くとともに会社としてどのようなキャリアプランが立てられるのか一緒に考え、共有することが大切です。今後の展望を見ながら現在の役割を把握することで、今の仕事への意味付けができるでしょう。
気を付けなければいけないのは、会社の求めているキャリアを一方的に押し付けてはいけないということです。個人が自分の価値に合ったキャリアを模索し、管理者はそれを支援する姿勢を持つことが大切です。
他人と関わって仕事をする中で意見が衝突したり、考え方の違いなどから思い通りにいかなかったりすることはたくさんあります。それが続くと他人の嫌なところばかりが目についてしまったり、うまくいかないことを他人のせいにしてしまったりしがちです。このような陰性感情が働いた場合、それに気付くことが大切です。
感情的になって取る行動や発言は後悔しか残りません。大きく深呼吸して、他人との違いについては「そのようなことがあるものだ」「それも彼の特徴だ」と大きな心で受け止めましょう。相手を非難し変えさせるのではなく、自らの考え方や見方をまず変えることが大切です。
今回は人を育成するポイントについてお話しました。管理者は自らの育成指針を立て、部下育成も大きな役割の1つであると認識して取り組むように心掛けましょう。次回は、最終回としてメンタル不調者を出してしまうリスクへの具体的な対策をお話します。
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