2017年の働き方改革ICT市場は、2兆2769億円だった。働き方改革を背景としたICT活用が進み、市場は順調に拡大すると予測できる。
長時間労働の是正や生産性の向上を目指し、実施が急がれている働き方改革。2019年4月からは働き方改革関連法案が実施され、ワークスタイルを変える機運はますます高まっている。
IDC Japanの調査によれば、2017年の働き方改革ICT市場は、2兆2769億円だった。同市場は2022年に向けて急成長すると予測できる。一方で、同社は国内の働き方改革の状況に懸念を示す。その理由とは?
IDC Japanは、日本国内における働き方改革ICT市場予測を発表した。ICT市場はハードウェア、ソフトウェア、ITサービス/ビジネスサービス、通信サービスに分類できる。働き方改革ICT市場は、この4分野から、働き方改革の目的である労働時間の短縮、労働生産性の向上、時間と場所に柔軟性を持たせた働き方の促進、ルーティンワークの削減、ワークライフバランスの向上といった取り組みをサポートするテクノロジーの市場規模を積み上げ、算出したものだ。
調査によれば、2017年の市場規模(支出額ベース)は2兆2769億円、2017年〜2022年の年間平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)は7.6%で成長し、2022年の規模は3兆2,804億円まで拡大すると予測する。
分野別の予測値として、同CAGRが最も高い分野は、ITサービス/ビジネスサービスで22.1%、続いてソフトウェアは12.2%、通信サービスは3.0%、ハードウェアは0.8%と見込む。
具体的に、国内働き方改革ITサービス/ビジネスサービスの市場規模は、2017年の時点では最も小規模であった約2800億円から、2022年には約7,500億円まで拡大すると予測できる。要因として、エンタープライズモビリティ向けとコグニティブ/AIシステム向けの急成長が挙がる。
働き方改革に関する国内ソフトウェア市場は、2017年の5400憶円から順調に拡大を続け、約9,700億円に達すると見込む。IDC Japanは同市場が働き方改革の原動力だとし、実際にコラボレーション、プロダクティビティ(生産性)、セキュリティ、RPA(Robotics Process Automation)、アナリティクス/AIなど、働き方改革にとって重要なテクノロジーで構成されていると指摘する。
働き方改革に関わる通信サービス市場は、企業向けデータ通信のみが含まれるため、一般的な通信サービス市場より小規模となる。働き方改革に関わるハードウェア市場は、大部分が買い替え需要に支えられおり、2017年〜2022年のCAGRは最も低いと予測する。
IDC Japanは市場予測の結果を受けて、2018年よりICTを積極的に活用した取り組みが増え、人の働き方の根本的な見直しへの機運が高まりつつあると考察。2019年4月から順次施行される働き方関連法案を期に、働き方の見える化や働き方の分析を行うツールの注目度も増しているとも分析する。
一方で、残業時間の短縮や生産性の向上、柔軟な働き方の実現など内向きな取り組みが中心である国内の改革は、パートナーや顧客との関係性までを対象とする海外の取り組みと比べると見劣りするとも指摘。
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川 和子氏は「海外の働き方変革(働き方の未来)は、価値の創造、そこからもたらされる競争優位性の獲得を見据えて進んでいる。目の先の残業時間の短縮や労働生産性の向上で足踏みしている国内企業は、10年後、20年後に存続が危うくなるであろう」と述べる。
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