前編では無線LANの導入率は年々増加する傾向にあることに触れたが、後編では運用状況について尋ねた。2018年と同様まだ浸透が見られないクラウド型無線LANだが、その理由とは?
キーマンズネットは2020年3月6日〜27日にわたり「無線LANの利用状況に関する調査」を実施した。全回答者数102人のうち「情報システム部門で主に導入・検討や運用に関わる立場」が34.3%、「一般部門で主にユーザーとして利用する立場」が31.4%、「顧客に販売するベンダー・SIerとしての立場」が22.5%などと続く内訳であった。
今回は「アクセスポイントの管理形式」「無線LANの満足度」「トラブルの発生有無」と頻度」など、企業における無線LANの運用状況を調査。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
前編では無線LANの導入状況や採用している無線LAN規格、セキュリティ対策など、無線LANの利用実態について聞いた。後編となる本稿では、無線LANの運用面に焦点を当てて、実態を深掘りしていきたい。
オンプレミス型の無線LANに対して、最近はクラウドに置かれたコンソールからアクセスポイントの状態を一括管理できる「クラウドWi-Fi」も浸透しつつあるが、現在の利用状況はどの程度か。
まず、無線LANを「導入済み」および「導入予定」と回答した層にアクセスポイントの管理形式を聞いたところ「オンプレミス型」が81.1%、「クラウド型」が10.5%となり、クラウドWi-Fiの浸透率はまだ1割程度であることが分かった(図1)。2018年の結果を見ると、「オンプレミス型」が82.0%、「クラウド型」が10.1%であり、1年たった今でも管理方式に大きな変動は見られなかった。
無線LANの運用工数の削減が期待できるクラウドWi-Fiだが、なぜまだクラウドWi-Fiの比率に変化が見られないのだろうか。オンプレミス型を採用している理由を尋ねたところ、以下の声が寄せられた。「費用対効果、コスト」と「管理、運用、セキュリティ」に大別できる。
その他わずかではあるが、「今までクラウド型の無線LANアクセスポイントの存在を知らなかった」といった声もみられた。
次に、導入している無線LANに対する満足度を聞いた。その結果「とても満足している」が6.3%、「まあ満足している」が58.9%、「やや不満がある」が24.2%、「とても不満がある」が10.5%となり、まとめると「満足」が65.2%、「不満」が34.7%となった(図2)。
この結果を2019年3月に行った同様の調査と比較したところ、満足度が73.5%から8.3ポイント減少しており、特に「とても満足」の割合が12.1%から6.3%へ5.8ポイントとほぼ半減していた。
不満と回答した理由として、以下の声が挙がった。
不安定なネットワーク、接続範囲への不満、ネットワーク機器の老朽化や接続端末の増加に耐えられなくなってきている企業も少なくないことが分かった。一般的にネットワーク機器のリプレースは数年単位で行われていることもあり、ネットワークの不具合が頻繁に起こる企業はリプレース時期の確認や数年後を見据えた無線LAN環境の見直しが必要だろう。
最後に、無線LANに関するトラブルの発生頻度について尋ねた。その結果「ほとんど発生しない」が52.6%、「時々発生する」が25.3%、「発生したことはない」が14.7%、「頻繁に発生する」が7.4%と続き、まとめると、全体で85.3%が一度は何かしらのトラブルに見舞われた経験を持っていることになる(図3)。
そこで「時々発生する」「頻繁に発生する」と回答した層を対象にトラブル内容を聞いたところ、「障害物による電波干渉」「他の無線LAN機器との電波干渉」が同率で48.4%、続いて「他の無線LAN機器以外の電子機器との電波干渉」が29.0%、「アクセスポイントにおける接続可能数の上限オーバー」が25.8%、「無線ルーターに脆弱性があった」が12.9%となった。
トラブルの上位を占めた“電波干渉”の発生要因は大きく3つに大別できる。
1つ目は複数の無線LANが帯域を奪い合うケースで、ノートPCやタブレット端末、スマートフォンや複合機などが密集した場所で同じ周波数帯を使用している場合に起こりやすい。
2つ目は電子レンジなどの家電から発生する強力な電磁波が重なり影響を及ぼしてしまうケース。3つ目は干渉というよりは遮断に近いが、壁や机など物理的な障害物により無線LANが届きづらくなってしまうケースだ。
こうした課題に対しては「IEEE 802.11ax」などの次世代規格を採用した機器を導入したり、無線LAN環境をサーベイし構築までを支援するサービスを利用したりするなどの対応が有効だ。前編でも紹介した通り、無線LANの導入目的はひとえに業務効率や生産性の向上にある。利用者である従業員の利便性を第一としつつ、セキュリティや運用管理面も考慮した設計が重要だ。
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