東京23区内企業のテレワーク実施率は数パーセントということはないようだ。東京商工会議所が2020年3月に実施した調査からは「そこまで悪くはない」と思わされる情報が見えてきた。支援策の情報ポータルを拡充し、制度作りや従業員教育などを支援する計画もあるという。
東京商工会議所は2020年4月8日、「新型コロナウイルス感染症への対応に関するアンケート」の調査結果を公表した。調査は東京商工会議所が、2020年3月13〜31日の間に会員企業1万3297社を対象にFAXおよびメールなどで調査したもの(有効回答数:1333件、「会員企業の防災対策に関するアンケート」の付帯調査、東京商工会議所会員は東京都23区に拠点を置く企業)。回答企業の属性は製造業が27.5%、建設および不動産業が17.4%、サービス業17.3%、情報通信業7.4%、運輸交通/物流/倉庫業が6.3%、商業/小売業5.9%など。従業員数では50人未満が51.1%、50〜299人が33.2%、300人以上が15.7%だった。
それによると、東京都内の企業の26.0%がテレワークを実施中であり、19.5%がテレワーク実施を検討中にあることが分かった。今回の東京都内の企業に限定した調査は、総務省が2019年5月に発表した「平成30年 通信利用動向調査報告書(企業編)」の企業のテレワーク導入率(19%)とも近い結果となっており、導入が進んでいる状況が見える。
全体ではテレワーク導入が進んでいるが、その内訳を見ると、情報通信業などの比較的テレワークを実現しやすい業種では実施率が高い傾向にある一方で、テレワークを実現しにくい幾つかの業種が全体平均を押し下げている状況が明らかになった。
訂正情報:当初、都内企業のテレワーク率としていましたが東京商工会議所の会員企業が東京23区内の企業であることから、23区内と変更しました。(2020-04-13T08:00:00+09:00 更新)
調査ではテレワーク実施率を押し下げた業界にはいくつかの特徴があることが分かっており、未実施企業の課題も明らかになっている。
「運輸交通/物流/倉庫業」「建築」など、今回テレワークが難しいとされた業種では、IoT(モノのインターネット)や5Gの普及をにらみ、大手を中心に自動化や無人化を目指す動きが盛んになりつつある状況だ。今後技術が普及してくれば人間がテレワークで作業できる領域は増えてくる可能性があるが、現段階ではやはり人の移動が頼みとなる状況にあることが分かる。
これらの業種では、時差出勤についても実施率が低く、他の業種が実施率50%以上となる中で、「交通運輸/物流/倉庫業」が37.0%、「建設業/不動産業」が46.3%と低い水準となった。ただし、どちらも「実施検討中」を合わせると過半数となることから、今後、状況が改善する可能性もある。
一方で、情報通信業などでのテレワーク実施状況はどの従業員規模でみても非常に高く、事業規模の大小を問わず、一定の環境を整えつつある状況が見て取れる。
テレワークについて「実施検討中」「実施予定なし」と回答した企業に、実施を検討する際の課題を聞く設問では、「テレワーク可能な業務がない」が多数となったが、それを除くと、労務管理や評価方法などの社内体制が整っていいないことを挙げる企業が多かった。次いで、ノートPCなどのIT関連設備が十分でない、セキュリティ上の不安がある、の順となった。
なお、今回発表された情報では企業単位でのテレワーク実施状況は明らかになったが、企業内でのテレワーク適用割合などが明らかでないため、全社導入か制限のある導入かは明らかではない。
東京商工会議所では都内企業の喫緊の課題である、感染症に対応した事業継続を支援すべく、「コロナウイルス対策支援パッケージ」として、「テレワーク・サテライトオフィス提供緊急掲示板」「はじめてIT 1万社プロジェクト」によるテレワークの推進の他、「資金繰り支援」や「感染症対応支援」などの取り組みを展開するとしている。東京商工会議所のWebページでは、感染症対策用の無償のEラーニングや感染症時の事業継続計画策定ツール、在宅勤務やテレワーク用のツール紹介サービスなどの情報も掲載されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。