DXや働き方改革を支援するツールとして、SaaSアプリの普及が進んでいる。その動きにコロナ禍が拍車を掛けた。最新の調査によって、現在の利用状況やどのようなSaaSが注目を集めつつあるかが明らかになった。
キーマンズネットは2021年1月13〜29日にわたり、「SaaSアプリの利用状況に関するアンケート(2020年)」に関する調査を実施した。全回答者数106人のうち、情報システム部門と製造・生産部門が31.1%、営業・販売部門が13.2%、総務・人事が7.5%と続く内訳であった。
今回は企業におけるSaaSアプリの「利用数」や「種類」、「気に入っている点」「気に入らない点」などを調査した。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
通信環境の発展と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてのテレワーク普及を背景に、SaaSアプリケーションが盛り上がりを見せている。場所を問わずにインターネット経由でソフトウェアの機能をサービス利用できるため、ニューノーマル対応や業務の生産性向上が期待されるためだ。
そこで、日常業務で利用されているSaaSアプリの数を聞いたところ「1〜3」が35.8%と最も多く、次いで「0(使っていない)」が26.4%、「4〜6」が21.7%、「7〜」が13.2%となった。70.7%が何らかのSaaSアプリを、3社に1社は4種類以上のSaaSアプリを日常的に業務利用していることが分かった(図1)。
続いて利用しているSaaSアプリの種類を聞いたところ、2020年に実施した「企業におけるSaaSアプリの利用状況(2019年)」と傾向が大きく変わっていた(図2)。
2020年に公開した「企業におけるSaaSアプリの利用状況(2019年)」では、最も「日常的に利用している」と回答した割合が高かったのは「Eメール」(80.6%)だった。しかし今回の調査ではEメールの利用率は61.5%と、19.1ポイント減となった。Eメールに代わって利用率でトップとなったのは「Web会議」(79.5%)で、24.7ポイント増加した。
それ以外で浸透が目立ったのは「勤怠管理」(44.9%)で、前回調査の29.0%から15.9ポイント増加した。いずれも、COVID-19の流行によるコミュニケーションや業務のリモート化が背景にあると考えられる。
次に利用中のSaaSアプリで気に入っている点を聞いたところ、「社外で操作できる」や「スマートフォンやタブレットで操作できる」「作業が効率化した」といった回答が多く集まり、感染症対策や業務効率化にSaaSの利点を生かしている様子が見て取れる。
一方で気に入らない点、不満に感じる点については、1位「意図せぬサービスダウンがある」(35.9%)、2位「ライセンスが高い」(34.6%)、3位「機能を使い切れない」(30.8%)、4位「オフラインで使えない」(26.9%)、5位「画面デザインが非効率」(23.1%)が上位となった(図3)。
SaaSはその性質上、提供会社のバージョンアップやメンテナンスの影響を受けやすく、自社の業務に合わせた細かいカスタマイズはしにくい。フリーコメントでは、以下のような声が寄せられた。
従来のワークフローをそのままSaaSに適用すると、細かいカスタマイズやオフラインで使えないことなどが不満になる可能性がある。SaaS活用の効果を上げるためには、業務を見直す必要があるかもしれない。
SaaSアプリの利用は今後も増えると想定される。それでは、今後どのようなSaaSアプリにニーズが集まるだろうか。そこで「今後新たに使ってみたいSaaSアプリ」を聞いたところ1位「プロジェクト管理」19.8%、2位「グループウェア」17.9%、3位「チャットツール」12.3%、4位「メール」11.3%、5位「営業支援(SFA)」10.4%などが上位となった(図4)。
注目したいのは、前述した「普段利用しているSaaSアプリの種類」で下位だった「プロジェクト管理」や「営業支援(SFA)」が上位にランクインした点だ。これまで対面で実施していたプロジェクトや営業目標の進捗管理、メンバーのタスク管理といったマネジメント業務の難易度が上がっている。そこで、社内外のプロジェクトメンバーと進捗を共有したり、タスク管理やリマインドによって円滑な進行を支援したりするプロジェクト管理、売り上げ見込みの共有や商談進捗を見える化するニーズが高まっていると予測できる。
後編では、SaaSを利用している企業での定着度合いや現在の課題、今後の活用計画などを見ていく。
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