RPA(Robotic Process Automation)がブームになった当初は、現場が草の根的に導入し、成果を出せることが話題となったが、現実は簡単ではないようだ。読者調査から読み解く。
2021年5月25日〜6月7日 にわたり、「RPA(Robotic Process Automation)の導入状況に関する調査」を実施した。前編においては、RPA導入率が横ばいに推移していることが明らかになり、その理由が費用対効果を出すことの難しさや開発人材不足に起因しているのではないかと考察した。またコロナ禍に起因したRPAの課題として、ロボットの管理にまつわる課題が挙がった。後編では、実際にRPA導入時の「主体部門」や「パートナー企業への依頼有無」の他、RPAを導入した企業の効果やその理由について紹介する。
RPA(Robotic Process Automation)がブームになった当初は、現場が草の根的に導入し、成果を出せることが話題となったが、現実は簡単ではないようだ。読者調査から読み解く。
後編ではまず、トライアルを含めてRPAを導入済みと答えた企業を対象に、RPAの導入をけん引する部門がどこかを聞いた。「情報システム部」が59.1%と過半数を占め、次いで「RPA利用部門」が25.0%、「RPA推進部門」が20.5%、「デジタルトランスフォーメーション部」が9.1%と続いた(図1)。RPAがブームになった当初は、現場が草の根的にプロジェクトを立ち上げ主導するケースにスポットライトが当てられていたが、先行して導入した企業が具体的な課題に直面し、2019年頃はRPAの「セキュリティ」「運用管理」「内部統制」といったワードが注目を集めていた。この流れを受けて、セキュリティやガバナンス、技術の面で情報システム部門がプロジェクトに関わる重要性が見直されている。
関連してRPA導入時にパートナー企業にロボットの開発作業やコンサルティングを依頼するかどうかを聞いた。
2019年の調査ではパートナーに依頼する、あるいは依頼する予定とした企業が20.8%だったのに対し、今回は28.2%と微増している。RPA導入の際は、対象業務やツールの選定、業務プロセスの分析、ロボットの開発、運用といった準備が必要であり、それぞれのフェーズで落とし穴がある。リスクを排除しながら一連の作業に取り組むために、企業によってはパートナーに作業の外注やコンサルティングを依頼しているようだ。
トライアルを含めてRPAを導入済みと答えた企業を対象に、本格展開時にどのような障壁があったか、あるいはありそうかを聞いた。前編では、トライアル時の課題として開発スキルを持った人材の不足や、効果を算出することの難しさなどが挙がったが、本格導入に至った後はどのような課題が生じるのか。
調査では「RPAロボットのスキルを持った人がいない」(38.6%)、「運用ルール・開発ルールの策定が困難」(27.3%)、「ロボットが停止する」(25.0%)、「ロボットの管理が煩雑」「運用費用」(同率22.7%)などが上位に挙がった(図2)。
上位6つの課題については、順位は前後しながらも2020年に実施した調査と傾向は変わらない。RPAを全社に展開する際には、現場の要請に応じてロボットを開発する人材が必要になる。各企業が社内人材の教育や、開発の外注といった対策をしているが、依然として高いハードルとなっているようだ。また、ロボットが増えることを想定した運用ルールや開発ルールの策定も必要になり、その対応にも労力がかかる。運用が始まれば、「ロボットが止まって動かない、仕事にならない」といった事故が多発することもあるようだ。RPAプロジェクトに予算や人的リソースを割ける企業ならば、専門部署の設置や外部パートナーへの外注を選択することも当然だといえる。
加えて注目すべきは、今回の調査から追加した選択肢である「テレワーク対応した運用体制の構築」が18.2%と一定の回答を得ていることだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を背景に働き方が多様化したことで、ロボットの管理や障害発生時の対応などがオンサイトで出来なくなったため、その対応に苦慮している企業もありそうだ。
RPAを導入した企業は成果を十分に得られているのだろうか。導入済みの企業を対象に調査したところ「想定以上の成果を挙げている」が2.3%、「おおむね想定通りの成果を挙げている」は63.6%、全体の約7割が成果を挙げていると回答する結果となった(図3)。一方で、「想定をやや下回る成果だった」とした回答者は20.5%、「想定を大幅に下回る成果だった」については13.6%となり、約3割は成果を挙げられなかったと分かる。
その理由をフリーコメントで聞いたところ、以下のようなコメントが得られた。
<想定通り、あるいは想定以上の成果を挙げている理由>
想定以上の効果を得られたケースにおいては、夜間にRPAを稼働させることで定型作業の省力化や効率化を実現できているようだ。
<想定を下回る成果だった理由>
一方、「想定を下回った」「大幅に下回った」とした回答者にからは、ロボット開発工数やユーザー部門のリテラシー、RPAの運用体制の構築、障害対応といった課題が発生したという声が聞かれた。
ガートナーのハイプサイクルにおいて幻滅期を乗り越え、普及期に入ったとされるRPAだが、今後導入状況はどのように推移するのだろうか。キーマンズネットにおいては、今後もRPAの動向について調査し、情報を発信する。
なお、全回答者数111人のうち、情報システム部門が26.1%、製造・生産部門が18.9%、経営者・経営企画部門が13.5%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が12.6%だった。業種はIT関連外製造業が38.7%、IT製品関連業が35.1%、流通・サービス業全般が15.3%と続く内訳であった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
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