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ハイブリッドワークがもたらす新たな課題に企業はどう立ち向かうべきか

テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方「ハイブリッドワーク」の実現には、双方で生じ得る問題を解決する必要がある。そのために、企業は何を考えるべきか。

» 2021年09月30日 19時00分 公開
[Roberto TorresHR Dive]
HR Dive

 金融サービス会社Northwestern Mutualの従業員は1年以上にわたって在宅勤務をした後にオフィス勤務に戻った。同社はハイブリッドモデルを採用しているため、オフィスへの出勤は任意だ。

 柔軟なワークモデルの下で従業員がオフィスに戻ることの課題と利点に適応するには、しばらく時間がかかるだろう。Northwestern MutualのEVP兼CIOであるニール・サンプル氏は、「今後数カ月かけて経験から学ぶようにする」と語る。

 しかし、問題は早くも1週目に現れた。「従業員からシステムの再起動や再調整を求める電話が多く寄せられた」とサンプル氏は語る。

 The Conference Boardが米国在住の3600人の従業員を対象に行った調査によると、2021年6月にオフィスに戻った従業員はわずか12%だったが、2021年9月末までには43%がオフィスに復帰する予定だという。

 リモートと対面のハイブリッド環境で業務を進める場合、従業員が柔軟に働けるようにサポートする必要がある。また、従業員の増減に対応できるシステムも必要だ。

 しかし、新たな問題が発生する。ソフトウェアやハードウェア、クラウドツールをセットアップし、勤務場所に関係なく平等なエクスペリエンスをサポートする必要がある。

 サンプル氏は「場合によっては機器の増設が求められることもあるが、それはもう少し時間をかけて解決する必要がある。当社はハイクオリティーなホームエクスペリエンスとも言える環境を各従業員の自宅に与えたが、今ではオフィスに戻りつつある。自宅はあまり生産的な環境ではないと感じる、またはその逆のケースもある」と言う。

ハイブリッドワークによって疲弊するIT部門

 Gartnerによると、フルタイムでリモート勤務に適応する過程で従業員はテクノロジーに精通し、ワーカーの18%が自分を“デジタル技術の専門家”と考えているという。また、半数以上がコラボレーションのために個人で導入したアプリケーションまたはWebサービスを使用しているという。

 個人で導入したツールを使用する従業員が増えるとシャドーITなど、業務の可視性が低下する恐れがあり、毎日のワークロードを予測することが困難になる。

 Hysolateのマーク・ガファンCEOは「ハイブリッドワークのテクノロジーが広がるにつれて、IT部門はそれに応じた計画を立てなければならず、苦労するだろう。オフィスで働く従業員と、リモートで働く従業員の数は流動的だが、これらの両方に対応する必要がある」と語る。

 従業員がメインオフィスに戻ってくると、IT部門は多数のツールやアプリケーションを扱いながらシステムを運用するのが困難になる。パンデミック前のIT部門のツールキットには、コラボレーションソフトや生産性ツール、他のエンタープライズアプリケーションが含まれていた。これらに加え、今では、ワークスペースのスケジューリングやデジタルオンボーディングツールなど、新しいプラットフォームも運用しなければならない。

 PwCの調査によると、ハイブリッドワークをサポートするために、経営幹部の72%が仮想コラボレーションツールへの支出を増やす計画を考え、さらに70%の経営者が仮想接続を確保するためのITインフラの整備を強化する予定だという。また、会議室のテクノロジーの強化やホテリングアプリケーションも導入を検討するツールの一つだという。

 PwCのジョイント・グローバル・ピープル&オーガニゼーション・リーダーであるブシャン・セティ氏は、「IT部門は、オフィスでの仮想作業に必要なインフラを提供しなければならない」と言う。

 テクノロジーサポートチームは「オフィスに質の高いスクリーンを設置し、従業員が顧客やチームメイトと“ボタンを押すだけ”でつながるようにする必要がある」と述べる。

 IT部門はオフィスのネットワークの帯域問題を解決すると同時に、自宅におけるネットワーク接続へのトラブルシューティングに対応する必要がある。企業は映像を多用するコミュニケーションツールに依存しているからだ。

ハイブリッドワークがもたらすリスクとは

 Unisysでデジタルワークプレースサービスのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるレオン・ギルバート氏は次のように語る。

 「『Zoom』や『Microsoft Teams』、またはこの種のコラボレーションツールを使用する場合、企業はオフィスのネットワーク帯域についてどのように考えているだろうか。オフィスのネットワーク帯域は、もともと100人がビデオを使用してZoom通話をするために設計されたものではない」

 サンプル氏は「管理された企業ネットワークと管理されていない自宅のネットワークを行き来する場合、さらにリスクが伴う」と言う。

 職場は常に悪意のある攻撃者の標的になり得る。2021年3月に公開されたMimecastのデータによると、脅威の量は2020年3月から2021年2月の間で48%増加した。脅威アクターが今後も職場を標的にし、リモートで働く従業員やオフィスに戻った従業員を狙う可能性は95%だという。

 Dropboxのように、変化に対応するためにオフィスを再構築した企業もある。ソフトウェア会社は、従来の伝統的なオフィスから、コラボレーションスタジオに目を向けるようになった。Calendlyはメインオフィスを廃止して完全にリモートに移行し、Pinterestはサンフランシスコから撤退した。

 サンプル氏によると、Northwestern Mutualは既存のスペースにテクノロジーを加え、ソフトウェアとハードウェアを組み合わせてワークプレースを均一化しているという。

 同社がハイブリッドエクスペリエンスに注力するのは、少なくとも「全員が同じ部屋にいる」または「全員が遠隔地にいる」という感覚を心地よくすることだとサンプル氏は述べる。

 同社は、音声コマンドを介してスピーカーを動的にズームインするカメラを会議室に装備した。また、初期のパンデミック対応の定番であるデジタルホワイトボードツールも導入した。

 残る課題は「企業が従業員のためにデジタルとエクスペリエンスの同等性を確保することだ」とギルバート氏は語る。「デジタルパリティ」とは、仕事に必要なツールへの平等なアクセスを意味する。従業員は、勤務場所に関係なくそれらのツールを使用しながら平等なエクスペリエンスを求める。

 CitrixのCIOであるミーラ・ラジャベル氏は「パンデミックの対処がCIOにとって困難だと感じたのなら、ハイブリッドワークの対応はさらに困難になるだろう。全員がリモートになったことで、ある意味では競争の場が平らになった」と語る。

問題は新しい働き方に企業が対応できるかどうか

 「今ではワンクリックでチームの電話会議に参加できる。会議室に入る時も“ワンクリックで”部屋が明るくなることを期待する」とラジャベル氏は述べる。

 ビジネス、オペレーション、テクノロジーに関する洞察力を持つ企業は、ハイブリッドオペレーションの理想的なフレームワークを見つけるために、彼らの意見を参考にするだろう。

 「ハイブリッドモデルの規模を拡大した企業はまだない。新しいものに対しては、テストして実験する必要がある。企業はまだ独自の学習曲線をたどっている」とセティ氏は言う。

 失敗した場合のリスクとは何か。生産性や顧客満足度の低下に加え、需要の高い人材市場での競争に負けてしまうリスクがある。

 「テクノロジー業界のリーダーたちがこうした働き方を受け入れず、そのモードでビジネスを展開できるようにしなければ、人材獲得競争に負けてしまうだろう」とラジャベルは語る。

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