メディア

採用管理ツールで何ができる? 人材獲得競争から取り残されないためのツール選定

少子高齢化や働き方の多様化、人材の流動化などによって、優秀な人材の獲得競争が激化している。しかし現場では採用業務にまつわるさまざまな課題が半ば放置されている状況も見える。それらの課題をデジタル化によってどう解決できるか。

» 2021年10月04日 13時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]

 日本社会の少子高齢化が進み、若い人材の獲得が難しくなっている。優秀な人材は海外企業からの需要も高く、日本企業の人材獲得は今後ますます困難になることが予想されている。

 キーマンズネットは2021年7〜8月にかけて読者を対象に、人材採用に関するアンケート調査を実施した。その結果、応募方法や選考手法、雇用体系の多様化を背景に採用に関する課題が複雑化していること、先行する一部企業が採用業務のデジタル化を進めていることが分かった。

 本稿ではアンケート結果から見えた課題と、その解決策としての採用管理ツールを紹介する。

サマリー

  • アナログ業務に限界、増える課題に「諦め気味」が多数派
  • 採用のデジタル化に取り組む「7社に1社」が取る方法
  • 膨大な数の製品/サービス群、それぞれ何が違うのか
  • 採用管理ツールを選定する際に留意すべきポイント4つ

アナログ業務に限界、増える課題に「諦め気味」が多数派

 キーマンズネットが実施したアンケートによれば、全体の半数近い企業が「書類選考とオンライン面談、対面での面談」で選考をしている。コロナ禍を背景に業務のオンライン化が進む一方でオフラインの選考も残り、企業が多様な方法で人材を獲得しようと模索していることが分かった(図1)。

(図1)選考方法(筆記試験や適性検査は「書類選考」に含める)

 選考方法がデジタルとアナログのハイブリッドとなる中で、応募者の情報はどのように扱われているのかを聞いたところ、多かった回答は「分からない」と「紙の履歴書や職務経歴書をファイリングして保管している」で、それぞれの割合は全体のおよそ3割であった。求人応募者の情報は個人情報に当たるため、本来は厳重に管理する必要がある。しかし、顧客情報などよりも管理がずさんになっている様子が見えた(図2)。

(図1)応募者情報の共有方法

 その他、自由回答で人材採用に関する課題を募ったところ、大きく分けて「人材不足」と「社内体制」「定着」に関する悩みに回答が集中した。

 人材不足に関しては、「若い人材がなかなか集まらない」や「地方なので応募数が少ない、高学歴の学生からの応募がほとんどない」などの声があった。「テレワークによって地域格差がなくなり、首都圏の企業が地方の優秀な人材をとっていく」や「人材の質が落ちている」といった声も目立ち、優秀な人材が獲得できていない状況も見えた。

 社内体制については「現場の需要と人事の認識が違い、獲得人材のアンマッチが多い」や「リソースや知識の不足から人事部がIT化に対応できていない」などの声があがった。アナログ業務の中で現場部門と人事部門の情報共有が不足し、人材と業務のアンマッチが起きている可能性がある。

 定着の課題については「内定辞退や採用から1年以内の退職が多い」や「人材のアンマッチが激しく、離職率が改善しない」「会社側に人材を育てる体制がない」などの声が寄せられた。

 複数の回答から共通する課題が見える一方で「現在の採用管理方法についての満足度」を聞くと、77.7%が「満足している/適切だと思う」または「まあまあ適切だと思う」と回答した。自由回答にも「課題はあるが問題と感じるほどの不満はない」「効率面には課題があるが、コンプライアンスは問題ないと思う」などの声があり、課題は感じつつも「採用業務とはこういうものだ」と半ば諦めて現状を追認している状況がうかがえる(図3)。

(図3)現在の採用管理方法についての満足度

採用のデジタル化に取り組む「7社に1社」が取る方法

 前述したような課題を「仕方ない」と考えている企業がある一方で、他社に先んじて積極的に解決することで優秀な人材を確保しようと考える企業も一定数いるようだ。アンケートでは11.8%の企業が採用業務に「採用管理ツールを導入している」と回答した。また、3.8%が「導入を検討している」と回答しており、7社に1社が採用活動のデジタル化に取り組んでいることが分かった(図4)。

(図4)採用管理ツールの導入状況

 採用管理ツールは、紙の書類や「Microsoft Excel」のシートなどで各部門ごとにバラバラに管理されていた情報を集約し「応募者情報」や「採用進ちょく状況」「評価情報」「応募者やエージェントとのやりとりの履歴」などをデータベース化して単一のUIから分かりやすい形で利活用できるようにするものだ。

 採用管理ツールをうまく使いこなせば、採用業務にまつわる課題の多くを解決できる可能性がある。これまで人手に頼っていた業務をデジタル化し、採用プロセスを可視化して業務効率を向上できれば、採用プロセスのスピードアップや現場部門との情報共有などによって、アンマッチのない優秀な人材を確保できる可能性が高まる。採用にまつわる情報を一カ所に集約してアクセスを制御し、その履歴を管理することで、応募者情報や選考に関するガバナンスもしっかり効かせられるようになる。

 こうした機能をうまく使いこなせれば、現在多くの企業が抱える人材不足の課題解決に向け大きく前進できるかもしれない。特に人材がなかなか集まりにくい中小企業や地方の企業にとっては、人材確保のための強い味方になってくれそうだ。

膨大な数の製品/サービス群、それぞれ何が違うのか

 クラウドサービスの普及に伴い、さまざまなベンダーがSaaS型の採用管理ツールを提供している。従来の採用管理ツールは「社内にオンプレミスサーバを立てて製品をインストール/設定する」必要があり、主に大企業向けの製品が中心だった。SaaS型サービスであればユーザーが自前でハードウェアやソフトウェアを導入したりセットアップしたりする必要がない。そのため中小企業の導入のハードルも下がり、製品やサービスの選択肢も増加している。

 今回のアンケートでは、15の製品やサービスの名前を挙げて利用率や認知度を調査した。その中で比較的認知度や利用している割合が高かったのが「HRMOS」「ジョブカン採用管理」「JobSuite」の3製品だった。

 上記の3製品はいずれも、採用管理ツールが備えるべき基本的な機能を一通り網羅している。例えば「応募者情報の集約と一元管理」や「採用業務のスケジュールや進ちょく管理」「選考結果の入力や参照」といった機能は、大半の製品/サービスが備えている。また最近の製品は、システムに蓄積したデータを分析して簡単なレポートとして提示する機能も備えている。

 HRMOSやJobSuiteもレポーティング機能の充実ぶりをうたっており、実際にユーザーから高い評価を得ているという。こうした機能をうまく活用して過去の採用活動の実績とその結果を分析することで、自社の採用業務を振り返り、データに基づいて継続的に改善することが可能になる。採用管理ツールを選定する際には、こうした機能にも注目したい。

 また、カタログスペックでは機能差が分からない製品でも、実際に触ってみると使い勝手に大きな差を感じることもある。例えばHRMOSには、直感的に操作できる優れたUIを高く評価するユーザーの声があった。製品を選定する際には、実際に業務で使う人事部門の担当者が評価版を試用し、使い勝手や自社のニーズとのマッチングを確認することをおすすめする。

採用管理ツールを選定する際に留意すべきポイント4つ

 前述した「基本的に必要な機能」を大抵の採用管理ツールが搭載する中で、自社が導入すべき製品/サービスを選定する際は何を留意すればいいか。選定ポイントは大きく4つに分けられる。

自社のターゲット人材に適しているか

 採用管理ツールはそれぞれの製品がターゲットとする業務や用途が微妙に異なる。具体的には新卒人材とキャリア人材は選考プロセスが変わるため、自社が主戦力とする人材に合わせた選定が必要だ。例えば、JobSuiteは、新卒採用向けの「JobSuite_FRESHERS」とキャリア採用向けの「JobSuiteCAREER」に製品が分かれる。自社の規模や採用したい人材に合う製品を選びたい。

利用している外部サービスとの連携

 外部の人材採用サービスと連携できるかについても検討する必要がある。多くの製品はメジャーな採用サービスとの自動連携機能を備えているが、自社が利用している採用サービスに標準で対応しているか、オプション対応となるかは製品によって異なる。自社が利用している採用サービスを可視化した上で、それらとの連携を標準でサポートしている製品を選ぶべきだろう。

社内の業務システムとの連携

 社内の他システムとの連携性も重要な選定ポイントだ。例えばジョブカン採用管理は「ジョブカン勤怠管理」をはじめとする「ジョブカンシリーズ」のさまざまな業務システムとの連携に優れている。既に他のジョブカン製品を導入している企業にとってはメリットが大きいだろう。

API連携機能

 近年、さまざまなサービスを対象に、オープンAPIを介したアプリケーションやクラウドサービスとの連携が普及している。API連携は今後のプロセス間連携の主流になると見られるため、将来を見越した機能の確認が必要だ。例えばJobSuiteは比較的歴史の古い製品でありながら、API連携機能の充実を同製品の強みとして打ち出している。他のシステムやクラウドサービスと組み合わせたい場合、将来的に構築したいエコシステムの全体像を想定した製品比較も重要になる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。