人材採用には相応の時間と労力、そして費用がかかる。だからこそ苦労して採用した人材が会社になじめず、短期間で離職してしまうことは大きな損失だ。入社した人材がスムーズに業務に入っていけるように支援することを人事用語で「オンボーディング」と言う。
人事の専門家は、コロナ禍によって求職者が会社に求めるものが変わり始めたと指摘する。オンボーディングの考え方や手法も時勢に適したものに変化させざるを得ない。旧態依然では新規採用人材の定着につながりにくい上に、企業の存続に関わる大きな悪影響を生み出しかねない。オンボーディングを成功させるための3つの重要なポイントを解説する。
本稿は「Activate HR2020→2021」(主催パーソル)における、RECOMO 橋本祐造氏の講演「コロナ禍における定着・オンボーディングの役割と施策 ー人事としてすべきことと、その可能性ー」を基に、編集部で再構成した。
数年前までは一律の基準で人を集め、同様の手法で育成することが人事戦略の基本概念だった。現在は母集団をどう集めるかではなく、求職側が会社を選ぶ時代に変わっている。「会社と人、あるいは経営と現場のエンゲージメントが重要だ」という言説も聞く。だが「何から取り組んだらいいのか」を模索する企業も少なくない。
RECOMOの橋本祐造氏(CEO兼CHRO)は次のように指摘する。経営者や人事担当者は、人事戦略を決める前に「あなたにとって人材とはどんな存在なのか?」「社員にとってあなたの会社はどんな存在なのか?」に対する答えを持たなければならない。なぜならば、この2つの問いに対する答えが企業と求職者、新入社員とが歩み寄り、相互理解を促す第一歩になるからだ。
人事戦略では、採用から始まり定着、育成、キャリア開発、組織活性化、退職、再参画までのステージごとに適切な施策が必要だ。そこには全体を貫く統一的なポリシーが求められる。
「人と企業、経営と現場の全ての接点はつながっている。人事戦略は、オンボーディングなど個別に考えるのではなく、そもそものポリシーをベースにしないとしらけてしまう。個人面談、サーベイ、1 on 1、フィードバックなどの手法はいろいろあるが、手法を選ぶ前にまず上述の質問への答えを見つけるべきだ」(橋本氏)
オンボーディング施策が機能しないと人材が定着せず、早期離脱を招くことになる。橋本氏は、採用費が無駄になるだけでなく、会社の存続に悪影響を及ぼす「目に見えないコスト」があると指摘する。
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