自然災害やパンデミック、サイバー攻撃や内部不正など、常にリスクと隣り合わせでいることを忘れてはならない。定期的に緊急時の行動指針やBCPを見直し、万が一の備えを怠らないことだ。企業はそうした構えをできているだろうか。
2020年以前、世界が危機的なパンデミックに襲われると誰も予測できなかっただろう。先行きを見通すことが困難な「VUCA時代」とも言われる現在、BCP(事業継続計画)の重要性が増す。感染症に加えてサイバー攻撃による被害も絶えず、常にリスクと隣り合わせにいる中でビジネスを停滞させないためには、緊急時の行動指針を明確にし、定期的な見直しが重要だ。
今もなお世界的に混乱が続く状況下で企業におけるBCPの策定状況を知るために、キーマンズネット編集部は「BCP(事業継続計画)の策定状況」に関する調査を実施した(実施期間:2022年1月26日〜2月4日、有効回答件数:223件)。前編となる本稿では、「緊急時の行動指針やBCPの策定有無」「業務中断経験の有無」などから、BCP策定の実情と課題を探る。グラフで使用する合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるため、事前にご了承いただきたい。
勤務先で災害など有事の際の「行動指針」や「事業継続計画」を策定しているかどうかを尋ねた項目では、BCPを「策定している」とした割合は全体の68.6%を占め、次いで「策定していない」が17.5%、「今は策定していないが今後策定する予定がある」は12.1%となった(図1)。
この結果を2018年に実施した同様の調査と比較すると、BCPを「策定している」とした割合は2.0ポイント増、「策定していない」とした割合は3.2ポイント減となった。
BCPにおいて緊急事態とする項目については(複数回答形式)、「地震」(97.2%)、「火災」(65.6%)、「水害」(62.8%)となり、自然災害が大半を占め、次いで「感染症」(57.8%)、「システム障害」(43.3%)、「ネットワーク障害」(41.7%)と続いた(図2)。
想定する緊急事態に対してITを用いた対策状況を問う項目では、「安否確認システムの導入」が最も多く71.1%、「災害時対応マニュアルの作成」(70.6%)、「バックアップツールの導入」(59.4%)、「遠隔地データセンターや拠点間相互バックアップの利用」(45.6%)と続いた(図3)。
BCPは、万が一の緊急事態に遭遇した場合の行動指針を策定するものだが、実際に緊急事態に遭い業務が中断した人の割合と、その原因について尋ねた。
勤務先で災害やサイバー攻撃、システム障害などが原因でシステムが停止し、業務が中断した経験があるかどうかを尋ねたところ、「ある」と回答した割合は29.6%で、「ない」が53.4%となった(図4)。
業務中断の原因は「ネットワーク障害」(57.6%)、「システム障害」(56.1%)、など障害系が多く、次いで「地震」(28.8%)や「停電」(22.7%)などの災害系が続いた(図5)。
この結果を2018年9月に行った同様の調査と比較したところ、ネットワーク障害による業務中断が23.9ポイント増で、4年弱で1.5倍と増加した。この背景として、COVID-19の拡大防止策とした就労環境の変化が考えられる。
世界的にテレワークを中心とした「コロナ禍の働き方」に対応する企業が増加し、リモートアクセスやネットワーク環境の改善が急激に進んだ。こうした環境の切り替えに伴ってネットワークやシステムトラブルが増加したのではないかと推測できる。
前項目では何らかの原因で業務うが中断したとした割合は3割弱ということが分かったが、ネットワークやシステム障害などによる業務中断がどのくらいの影響を与えたのか。
災害やシステム障害などが原因でシステムの中断経験が「ある」とした企業を対象に、最も長くシステムが停止したケースではどのくらい停止状態が続いたのかを聞いたところ、「24時間以上」(27.3%)が最多で、時点が「6時間以上〜12時間未満」(18.2%)だった。(図6)。2018年9月に行った調査では「3〜6時間」とした回答が多く、システムの復旧までにかかる時間が伸びた。
緊急事態時を振り返り、策定した復旧計画に沿った運用ができたかどうかを調査したところ、BCP策定済みで業務中断を経験した企業のうち、BCPを「計画通りに運用できた」のは22.7%にとどまり、24.2%が「計画通りに運用しなかった」、33.3%が「運用できたが、計画と実態に乖離(かいり)があった」となった(図7)。
計画通りに進まなかった理由として、「システム障害に対する対応計画が策定されていなかった」「外部環境を含めた想定外のケースがあった」などの声があった。
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