雇用主が性別や人種、障害などの理由で賃金格差を設けることは、法律によって禁止されている。しかし、とある調査結果から同じ仕事内容であるにもかかわらず、63%の確率で男性の方が高い給与を支給されていることが分かった。一体なぜ給与差別は起こるのだろうか。
雇用主による給与差別は、法律で禁止されている。日本の労働基準法第3条でも、労働者の国籍・信条又は社会的身分を理由に、賃金や労働時間、その他の労働条件の差別的取扱を禁止している。また、同法4条では、労働者が女性であることを理由に、男性と賃金格差を設けることも禁止している。
この取り決めは当然日本だけのことではない。米国でも「Fair Labor Standards Act」を改正した「Equal Pay Act」は、雇用主が性別によって給与差別することを禁止している。また、他のさまざまな法律は、人種や肌の色、宗教、性別、妊娠の有無、性同一性、性的指向、国籍、年齢、障害、遺伝情報による給与差別を禁止している。「Executive Order(大統領令) 1124」では、連邦事業請負業者による給与差別を禁止している。
給与差別は違法だが、とある調査結果から同じ仕事内容であるにもかかわらず、63%の確率で男性の方が高い給与を支給されていることが分かった。一体なぜ給与差別は起こるのだろうか。
カリフォルニア州レッドランズに本社を置くデジタルマッピングおよび分析企業のEsriは、米国労働省(DOL)による賃金差別の申し立てを解決するため、230万ドルの返済と利息を支払ったと、同省は8月3日に発表した。
DOLによれば、連邦政府コンプライアンス評価の予備調査で、Esriは2017年に143人の女性ソフトウェア開発エンジニアと33人の女性品質保証エンジニアに対して組織的な差別をしていたことが明らかになった。
「Esriは、2017年計画年度の定期監査から始まったOFCCP(連邦契約コンプライアンス・プログラム事務局:Office of Federal Contract Compliance Programs)との問題を解決した」と同社は述べた。「Esriは社内の職位を調整する措置を採り、OFCCPの勧告に従って進めていく。Esriは公正かつ公平であることを常に重視しており、組織の改善を継続することを約束する」。
また、求人サイト「Hired」の調査によると、テクノロジー企業は同じ仕事内容であるにもかかわらず、63%の確率で男性の方が高い給与が支給されているという。Hiredはこの結果の一因として、“期待値のギャップ”を挙げた。「ある仕事に対して候補者が抱く給与への期待は、最終的に雇用主から提示される給与と密接に結び付いている」と、当時のCEOメフル・パテル氏は報告書の冒頭で述べている。「当社のデータでは、男性の求職者はより高い収入を期待しており、報告書は、求職者の提示額がその期待に見合うものであることを示している」。
Hiredは、期待値のギャップは、女性がインポスター症候群(周囲から評価を得ても自身を過少評価する心理傾向)に陥りやすいことに起因すると考えている。この報告書では、女性は男性に比べて自分の功績を語ることが少なく、また給与の透明性が低いため賃金格差が存在することを知らないことが多いという。
しかし、女性が格差に対処するために行動を起こしたとしても、その成果は男性よりも低いことが、報告書で明らかになった。最初のオファーから賃上げ交渉ができたと答えた男性は57%であったのに対し、女性は50%だった。
DOLは2022年、賃金・労働時間の法執行に大きな力を入れ、未払い残業代や職業分類の誤り、児童労働違反などを取り締まってきた。
5月には、LinkedInに対して同様の賃金差別の告発を行った。同社はその判決に同意できないとしながらも、180万ドルでこの疑惑を解決した。
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