2023年4月に実施された「Microsoft 365」月例アップデートの目玉は「Microsoft Teams」の新機能だ。管理機能に加えて、会議中に使える便利機能が実装された。
「Microsoft 365」に含まれるSaaS(Software as a Service)は定期的にアップデートが加えられている。その更新範囲は幅広く、Microsoftの公式ブログを追いかけても片手間では追い付けないほどだ。
月例で開催しているオンラインセミナーで、M365 Apps & ServicesカテゴリーのMicrosoft MVPである太田浩史氏(内田洋行 ネットワークビジネス推進事業部)が2023年4月に実施されたMicrosoft 365のアップデートポイントをまとめて紹介した。本稿では、それらの変更を一つ一つ見ていく。
2023年4月の月例更新で新機能が実装されたのは「Microsoft Teams」(以下、Teams)を中心に、「Microsoft SharePoint Online」「Microsoft OneDrive for Business」「Microsoft Viva Engage」(旧「Microsoft Yammer」)「Microsoft Power Platform」の5つのサービスだ。以降で、順に新たな機能の詳細をみていく。なお、一部の機能はIT管理者による有効化が必要なものもあるため、IT部門も押さえておきたいところだ。
Microsoft TeamsはSNSアプリの機能「Snapchat Lenses」をサポートした。ビデオ通話時に自身の頭上に動物を乗せたり、メガネや猫耳を話者に装着させるたりできるカメラフィルター機能を追加した。MicrosoftはSnapchat提供元のSnapと提携することで、SnapchatのAR(拡張現実)レンズを背景フィルターとして選択可能になった。会議の雰囲気をほぐし、相手と打ち解けるための話題作りなどに使える機能だ。
Teamsにはオンライン会議中やセミナーのQ&Aコーナーなどで発言の許可を求める「挙手ボタン」がある。よく見かけるのが“挙手したまま”の参加者だ。進行担当者は参加者が発言を終えたのか、また、追加質問があるのかどうかを判断しなければならず、進行を阻害する要因になることもある。今回のアップデートでは、新たに挙手した状態から音声で発言すると、数秒後にメッセージが現れる仕組みが加わった。「手を上げたままにする」をクリックすれば、挙手を継続できる。なお、太田氏によれば、メッセージの表示タイミングを変更する設定項目は見つかっていないという。
Teamsで参加者をマウスオーバーすると、その人のプロファイル画像や各連絡先などを参照できるプロファイルカード(連絡先カード)に幾つかの情報が加わった。オンライン会議の出席依頼に対する返信状態や、「LinkedIn」から取得した誕生日や職歴、学歴、投稿も表示されるようになった。
プロフィールに表示する氏名がジェンダー代名詞(自分を呼ぶ時に使ってほしい代名詞)に対応した。ただし、有効化するには「Microsoft 365 管理センター」による設定変更が必要だ。
ヘルプを別ウィンドウで表示できる新機能が加わった。今まではメインウィンドウ内に表示されていたTopicsやトレーニング、最新情報を別ウィンドウから確認可能になったことで、トレーニングコンテンツで操作手順を確認しながら実際の画面で操作手順を確認できる。
オンラインセミナーなど、多数のオンライン視聴者に配信するライブイベント機能が別ウィンドウ表示に対応した。視聴中に並行作業が求められる場面で役立ちそうだ。
ライブイベント開催の開催に当たって、事前にプロデューサーや登壇者などの役割を選択する必要があるが、参加時でも役割の選択が可能になった。
Teamsで使用する登録済みアプリケーションの自動更新機能が加わった。一括更新できるため、個人やチームで使用するアプリケーションの管理が容易になった。ただし、個人で利用する一部のアプリケーションはユーザー自身が手動で更新しなければならない。
SharePoint OnlineはOneDrive for Businessと同様のファイル要求機能をサポートした。OneDrive for Businessは組織外のユーザーでもファイルをアップロードできる機能を備えており、同様の機能と捉えていいだろう。アップロード用のURLを受け取った相手がWebブラウザでファイルをアップロードする仕組みだ。ベンダーのRFP(提案依頼書)や見積もりの回収、数GBの大きなファイルを受け取る場面での活用が期待できる。なお、本機能も利用時はIT管理者の設定が必要になる。
ファイルオンデマンドに関する仕様が変更された。ファイルオンデマンドは必要な際にファイルをダウンロードし、ローカルストレージの容量の逼迫(ひっぱく)を防ぐ機能だが、今後は一度有効にするとコンシューマー向けのOneDriveと共用するOneDriveデスクトップアプリケーションからの無効化ができなくなる。なお、「Windows 10」「Windows 11」のストレージセンサーから無効にできる。
ビジネス向けSNSのMicrosoft YammerとTeamsが統合したMicrosoft Viva Engageのメンション機能が改善された。これまで他のメンバーをメンションする時は「Taro Yamada」といったようにフルネームで表示されていたが、「Yamada」「Taro」と姓と名を単独で表示できるようになった。普段の呼び掛け方に応じて、より自然な投稿ができる。
「Twitter」のAPIが有償化されたため、Twitterコネクターのアクションを含んだ処理を実行するとエラーになってしまう。Twitterの運営ポリシーが迷走している状態で手段は限られるが、Twitterコネクターの継続利用を希望する場合はTwitter APIの契約が必要となる。
最後に太田氏は、今後、注目すべき機能としてTeamsの「スピーカービュー」と「ターゲットリリース」への対応を紹介した。
前者は、カメラを有効にしているオンライン会議参加者が複数人いる場合、話者を画面中央に大きく表示する機能だ。「Zoomミーティング」(以下、Zoom)は以前から同種の機能を備えていたが、Microsoft Teamsにも実装された格好だ。
後者リリースチャネルは、実装の数週間前に新機能を試せる機能だ。設定によってテナント全体や特定ユーザーのみ展開することも可能で、新機能の事前検証やマニュアルの作成にも役立つ。
今回紹介したような「Microsoft 365」の新機能は、リリースノートを見ることで確認できる。全てのアプリケーションを網羅的に把握するには定期的な情報収集が必要となるが、こうしたウェビナーなどを参照することでそのような手間が省けるだろう。
本稿は、オンラインセミナー「聞きたい!知りたい!おさえたい!今月のMicrosoft 365アップデート」(主催:内田洋行)での講演内容を基に編集部で再構成した。
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