コロナ禍、企業の情シスはどのような課題に直面し、どう解決したのか。そしてアフターコロナの課題は何なのか。SNSで人気の情シスがこの3年間を振り返った。
2020年に突如訪れたコロナ禍によって社会が混乱する中、企業の情報システム担当者(以下、情シス)たちもまた、さまざまな課題に直面し、奮闘した。
SaaS一元管理ツール「メタップスクラウド」を運営するメタップスは、情シス担当者約217人に「情シスのコロナ禍対応に関する振り返り調査」を実施した。そのアンケート結果を基に、「X」(Twitter)で人気な情シス担当者が「コロナ禍対応をした当時の状況、課題、解決方法」について和気あいあいと振り返った。
本稿は、メタップスクラウドが2023年7月28日に開催したイベント「情シス担当者が語り合うコロナ禍対応と負の遺産」の様子を基に編集部で再構成した。
アンケートの最初の質問「コロナ禍への対応としてテレワークを導入する際、どのような対応をしましたか」に対して、1位は「VPNの設定」(57.6%)、2位は「セキュリティの強化」(55.3%)であった(図1)。
久松氏 意外に思ったのが「セキュリティの強化」が上位にあることです。みなさん意識が高いですね。
ヤスムラ氏 私の会社はもともとテレワークが認められている会社だったので、コロナ禍になったからと何かをやったことはないです。しいて言えば、デバイストラストの準備をしたり、あとはバーチャルオフィスツールを入れたりした程度です。
久松氏 「従業員の自宅にWi-Fiが導入できない」とか「マンションに光回線の空きがない」といった問題もありましたね。ノートPCが足りなかった企業は慌ててかき集めたのでしょうか?
にょもこ氏 そうです。その結果、会社が保有するノートPCのメーカーが多種多様になりました。
ヤスムラ氏 新たにノートPCを買う場合も、すぐ納品できるモデルもあれば、CPUを指定すると半年かかってしまうモデルもありました。
いとぅ氏 うちが求める要件でPCを買おうとすると、納期は3カ月かかるのが基本で、一番酷い時で半年でした。
久松氏 たしかにニュースでは、オフィスから閉め出されて『iPad』だけで仕事する方を見ましたね。
ヤスムラ氏 VDI(仮想デスクトップ)の接続数が急に増えてログインできなくなったので、社員番号の偶数と奇数の人でログインする日を分けていました。
久松氏 ナンバープレートによって走れる曜日が決まっている中国の道路のようですね。
次のアンケート項目は、「お勤め先の企業で、テレワークを導入する上で重要視した事項」であった。ここも1位は「セキュリティ」と“意識が高い”結果が出た(図2)。
2020年3月にコロナ禍に突入したことで、4月に開始する新入社員のオンボーディングが各社で課題となった。にょもこ氏は、新入社員の自宅にPCを送り、オンボーディングを全てリモートで実施したという。
にょもこ氏 会社の採用方針が「インターネットを好きな人を採る」だったので、新入社員はみな自宅にインターネット回線を引いていました。そこでまず、自分のPCもしくはスマホで「Google Meet」に入ってもらい、各自宅に送ったPCを立ち上げてもらい、ログインの仕方や「Slack」などの使い方を教えました。その後、改めてPCを使ってオンボーディングを進めました。
ヤスムラ氏 うちの会社ではオンボーディングのマニュアルにオフィスツアーを組み込んでいました。でもコロナ禍でオフィスに来られなくなったので、完全オンライン仕様のオンボーディングマニュアルに修正しました。
「コロナ禍にテレワークを導入する際の課題」という質問に対しては、「VPNが重たくなってしまった」「貸与端末(ノートPC)やWi-Fiが足りなかった」という回答が上位に挙がった。登壇者は、テレワーク期間中のPCの貸与に関して起こったさまざまなトラブルを紹介した。
いとぅ氏 うちの会社はCGを作っている社員がいたのでサイズの大きいマシンがあり、それを私が車でデリバリーしました。
にょもこ氏 グループ全体で出社禁止というルールができてしまい、総務マネジャーが会社にあるPCを私の自宅に届けてくれました。
またアンケート結果には入っていないものの、「パスワードの失念」はテレワークの困り事としてそれぞれ思い出があるようだ。
久松氏 パスワードをリセットするには、本人に出社してもらう必要がある。でも本人は大阪にいる。どうしよう……みたいなやり取りがありました。
にょもこ氏 うちは「Azure AD」(Azure Active Directory)でID管理していて、コロナ禍にセルフサービスパスワードリセットを導入しました。MFA(多要素認証)のデバイスが登録されていれば、ユーザー自身がパスワードを設定し直せる仕組みです。でも、MFAのデバイスを登録していない人には一度出社してもらう必要がありました。
いとぅ氏 うちはID/パスワード管理が大変で、途中からAzure ADを入れましたよ。
ここでにょもこ氏はテレワーク時の自宅写真を披露し、キッティング作業を自宅で行った苦労話を語った。
にょもこ氏 コロナ禍でも月に2回ほど社員が入社したので、彼らのPCを私が自宅でキッティングしていました。またリース期限が切れて交換する際にもキッティングが必要でした。多い時には机の周りに4台ずつ置いて、同時並行でキッティング作業していました。
これに対して他の登壇者からは「まるで業者!」と驚きの声が上がった。
話題は現在のテレワーク状況に移った。アンケートでは、「出社とテレワークを併存している」という会社が55%を超える結果となった。登壇者の勤める会社でも、テレワークが一定は定着しているという。
いとぅ氏 会社は本当は出社してほしいけれど、採用ブランディングの一環で、「在宅勤務を全く導入していない」とは言えなくなっています。そのため、在宅勤務ルールを残しています。とはいえ実際は、出社する人の方が徐々に多くなっているのが実態ですね。
ヤスムラ氏 僕は2022年に子供が生まれました。今でもテレワークをしながら子供のお世話をしています。もう出社の生活には戻れませんね。
「コロナ禍でのテレワークへの対応を経て、新たに生じた現在の課題」という質問では、「不要となったシステムの解約ができていない」がトップになった。登壇者の会社でも、リモートデスクトップやチャットbot、バーチャルオフィスツールなど、解約したサービスがあったという。
さらに「従業員へ貸与した端末の回収ができていない」という回答には、関連する思い出も。
ヤスムラ氏 退職した人からPCを回収したら、アクティベーションロックがかかっていて困ったことがありました。その人のプライベートのメールアドレスを総務から教えてもらい、本人に連絡して事なきを得ました。
久松氏 退職代行業者を使って退職した人から、一方的に荷物が送りつけられて、かつACアダプターなどの付属品が足りなくて困るっていう話はよく聞きますね。
にょもこ氏 レンタルしたPCで、社長が持っていった分がいつまでも返ってこないことはありました。秘書に「そろそろ返してください」って言い続けるという辛いお仕事が発生しました(笑)。
縁の下の力持ちである情シス担当者たちは、コロナ禍でもやはり頼りになる存在だった。彼らの献身と奮闘に敬意を表するとともに、アフターコロナでのさらなる活躍を願いたい。
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