メディア

「日本人は勤勉だがリーダーシップはない」はウソ? 米国でのアジア人の偏見は固定概念と実証

日本人を含む東アジア人が米国で働く際、「創造性に欠ける」とされがちだ。しかし、そういった考えは固定概念であることが実証された。

» 2023年12月26日 07時00分 公開
[Laurel KalserHR Dive]
HR Dive

 日本人を含む東アジア人が米国で働く際、「創造性に欠ける」とされがちで、リーダーシップを過小評価されることにつながっている。

 しかし、そういった考えは固定概念であることが実証された。東アジア人が米国で働く苦労や、評価をされている点が分かる。

出世を阻む「竹の天井」とは

 マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院の新しい研究によると(注1)、米国では、中国人や日本人、韓国人をはじめとする東アジア人の従業員は、創造性に欠けるという固定観念を持たれることが多く、それが東アジア人のリーダーシップの過小評価につながっている。

 米国の映画やテレビ番組における東アジア人に関する不運なステレオタイプは、彼らを勤勉で、「ストリート・スマート」ではなく「ブック・スマート」であると描写している。米国における東アジア人の教育と経済的な成果にもかかわらず、彼らはしばしばリーダーシップを発揮するための障壁に直面し、その結果「竹の天井」(Bamboo Ceiling)(※)が生じていることが、研究で明らかになった。

※竹の天井とは、東アジア人が米国企業で昇進しにくい現状を比喩した言葉。

 同研究の筆頭著者であり、スローン経営大学院において労働と組織を研究するジャクソン・ルー氏(准教授)は、声明で次のように述べた(注2)。

 「東アジア人は他の民族に比べて創造性が低いと認識されている。米国におけるリーダーシップで創造性がポジティブに評価される要因であるなら、東アジア人はリーダーシップのポジションに昇進する際に困難に直面する可能性がある。一方で、スティーブ・ジョブズ氏のような人物は、実際のリーダーシップスタイルに関係なく、創造性の象徴とみなされることが多い」

 学術雑誌の『Journal of Applied Psychology』に掲載された研究の中で、ルー氏は2300人以上のMBAの学生を対象に2つの実地調査を行い、東アジア人の学生は他の人種に比べて創造性に欠けると見なされていることを示した。学生同士が知り合う前のMBAプログラムの開始時、クラスメートは東アジア人のクラスメートを創造性に欠けると認識していた。また、自己主張の強さ、リーダーシップの意欲、英語力、人口統計などの要因を考慮した後でも、東アジア人の学生は他の人種に比べて、クラスのリーダーに推薦されたり選出されたりする確率が低かった。

 その後、ルー氏は2つのビネット実験において、東アジア系米国人のリーダー候補者は、他の民族の候補者と同じプロフィールであったとしても、創造性に欠けると認識され、リーダーとしての適性が低いとみなされるという因果関係の証拠を発見した。

 「東アジアの文化が順応性や謙虚さ、受容性を奨励しているとしても、個々の従業員に創造性や積極的なリーダーシップの資質が欠けているわけではない。リーダー自身の創造性に焦点を当て過ぎず、組織は他者の創造性を育むようリーダーを奨励すべきだ。リーダーは創造的なアイデアの主要な供給源である必要はないが、他者の創造性を引き出すことに長けているべきだ」(ルー氏)

 最近の報告書によると、アジア系米国人のクリエイティブ・エグゼクティブでさえ、キャリアアップの障壁に直面している(注3)。彼らは、自身のアイデンティティーが「諸刃の剣」であると感じており、業界に多様性と独自の洞察をもたらす一方で、多様性のための形式的な採用と見なされているとも感じている。

 アジア系および太平洋諸島系の従業員を支援するために、企業はメンタルヘルス関連の取り組みを強化し、公平な昇進の機会を提供し(注4)、多様性や公平性、インクルージョンに関する取り組みを積極的に行うなどの措置をすべきである。

 また雇用主は、アジア系および太平洋諸島系の従業員に対する組織的な不公平を監査し(注5)、その結果を共有し、リーダーを教育し、従業員と協力して解決策を構築し、互いに協力した上で責任をもって行動を起こすことができる。

© Industry Dive. All rights reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。