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ChatGPTのOpenAIが知られたくなかった「あること」とは?:745th Lap

OpenAIはもともと非営利団体で、独立した研究機関だった。「人類に利益をもたらすAI開発」を掲げ、真剣にAIと向き合っていた。そんな理想を掲げる同社が、ある問題行動で非難を浴びている。

» 2024年02月02日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 次々と進化を遂げるAI(人工知能)技術。CPUやGPU、NPU(Neural network Processing Unit)を使って、ローカルでAIの処理を実行する「AI PC」に期待が集まるなど、2024年も新たなAIの活用法が続々と生まれそうだ。

 AI企業といえば「ChatGPT」で世間をにぎわせたOpenAIだ。2023年もいろいろあった同社だが、ある問題行動で批判されている。同社はあることを隠そうとしているというのだが、知られたくなかったあることとは?

 OpenAIといえば、同社の創業者でありCEOのサム・アルトマン氏の解任および再任騒動が記憶に新しい。アルトマン氏は「AIには原子炉が必要だ」と公言するなど、話題に事欠かない。

 もともとOpenAIは非営利団体であり、独立した研究機関だった。「人類全体に利益をもたらすようAIの進歩を推進する」ことを目標に掲げ、オープンな組織として起業された。

 そんなOpenAIが、以前は公開されていた財務関係の書類をいつのまにかこっそりと非公開にしていたとして話題になっている。この件について、Tech系メディア「WIRED」が2024年1月24日に記事を掲載したことで話題になった。

 記事によると、OpenAIは前述したように「人類に利益をもたらすようなAI開発」を目指すと同時に、社名にもあるように「オープン」なAI企業であると宣言している。これまでGoogleやその他の大手IT企業が“密室”でAIを開発してきたため、AIが社会にとって本当に利益になるのかが不明瞭だった。それを一掃するために生まれたのが、OpenAIだ。

 OpenAIの起業時に米国税務当局に提出された報告書には、設立当初から「一般のあらゆるメンバーがその管理文書や財務諸表、利益相反規則のコピーをレビューできる」と記載されていた。それを信じていたWIREDの記者が、同社に各種文書の参照を要求したところ、限られた文書しか開示されなかった。

 WIREDが疑問を投げかけると、OpenAIは「当社の業務は業界標準に合わせており、2022年以降、追加の内部文書を公に配布しないこともこれに含まれる」と回答したという。それに対してWIREDの記者は先に触れた2023年のアルトマン氏解任騒動を引き合いに出して「最近、AIの将来に重大な影響力を持つ企業が破綻寸前に陥ったというのに、企業の透明性を無視するのか」と怒りをあらわにした。

 WIREDはアルトマン氏解任問題が同社の組織構造にあるのではと推測し、「経営に関する各種文書を確認することで問題の根本が分かるのではないか」と考え、各種文書の閲覧を求めた。そこには「『AIに原子炉を』と言い始めたアルトマン氏が投資している原子炉メーカーとの関係性も明確になるのでは」との思惑もあったようだ。いずれにせよ、OpenAIがオープンだったのは過去の話であり、情報が一般に開示されることはなくなった。

 WIREDは、OpenAI自体は非営利団体であると同時に、実質的に経営を担うのは株主である営利法人だと指摘した。そして一部開示されたOpenAIの財務諸表を参照すると、その収入は4万4000ドル、支出は130万ドルと記されていて、その点においては非営利法人らしいとも指摘している。しかし、WIREDはさまざまな報道から2023年には数億ドルを売り上げ、ハイエンドコンピュータや一流の研究者に多額の出費があるはずだと推測し、この辺りの情報の透明性がないOpenAIは非営利組織としてのポリシーを貫いていないと批判した。

 AI市場に大きな影響力を与える組織だからこそ、「OpenAIには起業時のようなピュアな志を継続して掲げながら最前線のAI開発に取り組んでほしい」とWIREDの記者は強く願っているようだ。一連の指摘が今後OpenAIにどのような影響を与えるのかはまだ分からない。


上司X

上司X: 高尚な志の下、非営利組織として起業したOpenAIがいつの間にか透明性のない組織になっていた、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 名前にオープンが入っているから、オープンな企業たれ、ということですかね。


上司X

上司X: 確かに以前はそういう組織だったそうだが。WIREDの記者も2022年までにさまざまな情報を得ていたら良かった、みたいなことを書いているよ。


ブラックピット

ブラックピット: 「人類全体に利益をもたらす形でAIの進歩を推進する」かあ、いい志ですよねえ。


上司X

上司X: ま、その方向性自体は変わっていないとは思うんだがね。


ブラックピット

ブラックピット: そういう意志を持ちながら、お金を稼いでも別に良いとは思いますけどね。


上司X

上司X: 記者は稼ぐことが悪いと言ってるワケじゃないと思うよ。透明性が必要じゃないか、という主張でね。


ブラックピット

ブラックピット: このところ色んなトラブルが世間を賑わせましたからね。ツッコミどころもあるということなんでしょう。


上司X

上司X: ともかくだ、2024年もAI関連の話題は尽きないだろうし、OpenAIもその話題の中心的な存在でいることだろう。今回の件のようにいろいろと追及されることもあるかもしれないが、AIのさらなる進歩に向けてどんどん注力してほしいものだよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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