DXに取り組む際、実現すべきテーマの一つに情報共有があります。Notionを導入し、組織全体で効果的に活用するための戦略をお話しします。
世の中のDX活動が鈍化傾向にある今こそ、正面からDXに取り組み、ライバルに差をつけるチャンスです。一緒にDXリベンジャーズの道を進んでいきましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む際、実現すべきテーマの一つに情報共有があります。情報共有は良い組織運営の必須条件の一つです、テレワークの生産性が注目されている現在はさらに重要度が増しています。
今回は「DX推進組織がこぞってNotionを採用する理由」にて、ドキュメント管理やプロジェクト管理に有効との解説があった「Notion」を、効果的に活用するための戦略をお話しします。
NotionはDXにおける情報共有で有効なツールとして注目されています。しかし、企業におけるNotionの導入はハードルが高いともされています。そこで、成功のための戦略を導入フェーズごとに見ていきましょう。
Notionは個人のメモから企業のプロジェクト管理まで、幅広い用途で活用できるツールです。そのため、導入目的の決定や導入効果の定量的な評価は難しいでしょう。これはNotionの多機能性がもたらす一面です。
単に「便利そう」という曖昧な理由で導入すれば、Notionが真の価値を発揮することは難しくなります。まずは、組織内の情報共有の課題を特定し、それに対してNotionがどのように役立つのかを検討することが重要です。
そのため、目的を絞り込むことで期待される成果と実際の結果を適切に評価するためのKPI(重要達成度指標)を設定します。このステップはNotion導入の成功に向けて不可欠なものです。まずは目的の重要性を深く理解し、それに基づいて次のステップへ進みましょう。
次の重要ステップは、既に導入しているツールとの比較です。単にNotionを追加するだけでなく、既存のシステムとの相互作用や機能の重複を検討する必要があります。Notionが他のツールと機能的に重複する場合、導入時の抵抗が増します。
Notionはライセンス料の他、新しいツールの習得に関する教育コストや、ツール変更に伴う業務プロセスの変更コストなど、さまざまなコストの発生が考えられます。また、従業員が既存ツールに安心感や慣れがあることも、新しいツールへの抵抗の要因です。
多くの企業では「Microsoft 365」や「Google Workspace」などのツールが既に導入されています。これらの既存ツールとNotionを単純に機能面で比較するだけでは、導入のメリットを見出すことは難しいかもしれません。
重要なのは、事業推進における情報共有の必要性を明確にすることです。どのような変化が必要で、その変化を実現するためにNotionがどのように役立つのかを具体的に提示することが重要です。Notionが既存のツールでは解決できない課題に対処し、新たな価値を提供する点を明確にすることで、導入を正当化できるでしょう。
新しいツールの導入では、特定のチームで試用期間を設け、その効果を評価するアプローチを推奨します。特に大規模な組織では、人数と時間を用いたテスト運用が一般的です。無料プランや短期トライアルを利用することは、DX推進を社内広報するチャンスになります。
テスト期間中は、導入目的に合ったKPIでツールの効果を評価する必要があります。また、既存ツールとの比較をユーザー視点で評価する必要もあります。従業員の立場によって意見が異なる可能性があるため、これらの意見を丁寧に扱い、協力者を増やす機会として生かしましょう。
このフェーズは、新しいツールが組織内のニーズと課題にどの程度応えられるかを理解するために重要です。実用性と効果を実証できれば、全体導入に向けた強力な根拠を得られるでしょう。
DX推進は組織内の心理的障壁を取り除くことが重要です。特に「完成度を気にして公開しない」という心理は、しばしば情報共有の障害となります。完璧な資料を作成することに時間を費やすよりも、全従業員が認識しやすい方法で情報共有する方が価値が高いと考えるなら、Notion導入が大きな役割を果たすでしょう。情報共有の「最初の一歩」には勇気が必要です。しかし、この一歩こそが組織の情報共有文化の根本を変えるきっかけになります。
ローカルドライブに保存された社内向けプレゼンテーションの完成度に一人でこだわるようなカルチャーを打破するためにはNotionの導入が非常に有効です。Notionは、情報を簡単に共有、更新ができるため、完璧主義の資料作成から脱却のを促します。また、情報をリアルタイムで共有し、常に最新の状態を維持できるため、情報の透明性とアクセシビリティーを大幅に向上させられます。
このようにNotionの導入は、単に新しいツールを使うこと以上の意味を持ちます。それは、組織全体の情報共有文化を変革し、よりオープンで協力的な環境を醸成することにつながります。完成度への過剰なこだわりを手放し、情報を積極的に共有することでDXは前進するでしょう。
Notion導入の最終的なステップが予算の確保です。
最初に取り組むべきは既存ツールのライセンス整理です。経営層は、固定費の無駄を極力排除したいと考えているにもかかわらず、ほとんどの組織では使用されていないライセンスが見つかるものです。一方で、社内で使用するアプリケーションが増え続け、それに伴いライセンスコストは増加する傾向にあります。それにもかかわらず、「使っていないライセンスを削除する」という作業が見過ごされがちです。
この状況を踏まえ、Notionの予算を確保するためには、既存のライセンス数を正しく運用し、その効率化を図ることが重要です。経営層にコスト削減の意識があることを示すことで新しいツールへの投資に対する信頼を得られるでしょう。ライセンス整理は単なる前提作業ではなく、Notion導入に向けた予算確保の基本動作として評価されるべきです。
予算確保のプロセスは、単に資金を集めること以上の意味を持ちます。それは、組織の効率的なリソース管理と、新しいツールの導入に対するコミットメントの表れでもあります。この段階を慎重に進めることで、Notion導入の成功へとつながる強固な基盤が築けるでしょう。
Notionには、柔軟なフォーマットとカスタマイズ性によりさまざまなページを簡単に生成でき、誰もが手軽にコンテンツ作成者になれるというメリットがあります。これはチームコラボレーションを促進するという、Notionの重要な思想です。しかし、この利便性には幾つかの注意点がありますす。
作成されたコンテンツは、初期は情報鮮度の良さそのものに価値がありますが、時間と共に価値が低下する可能性があります。特に不確実な情報や古い情報を放置することは、全体の情報価値の低下につながります。そのためコンテンツの定期的なレビューと更新が必要不可欠です。
情報の整理やアクセス権限の設定、ページの構造などを明確にし、これらを標準化することはコラボレーションのために極めて重要です。このようなルールを設けない場合、情報が散在することで情報共有の効果が薄れ、Notionが落書きのような評価を受けてしまうと信頼を取り戻すことが困難になります。
他部門との意見のすり合わせが面倒という考え方を許容してはいけません。全社でNotionを導入しても、部門間の摩擦によって情報共有が進まない場合、結果的に縄張り意識が生じてしまい、DX推進に悪影響を与える可能性があります。
これらの注意点を意識して適切に対処することで、Notionは情報共有とコラボレーションに大きな利益をもたらすでしょう。
Notion導入後のさまざまな注意点を克服するためのアイデアとして、Notion運営委員会の設置を提案します。このアプローチは私自身の成功体験に基づくものです。運用を単一部門や個人がリードするのではなく、各部門が協力して意見を出し合うことで、より多くの問題を効果的に解決できます。
組織にはさまざまな立場や役割が存在するため、意見の対立は避けられません。意見の対立を避けがちな日本人特有の進め方では、結果的に心理的にネガティブな方向へと話が進みがちです。しかし委員会を通して協力することで、個々のメンバーが組織対立を超えて、共通の解決策を見つけることが可能です。
経営層が変革の先頭に立ち、積極的に変革に取り組む姿勢は、組織全体に積極性と安心感を与えます。経営層が委員会に参加し、メンバーと同じ目線で話し合うことで変革への恐怖心を軽減し、結果的に大きな効果をもたらします。
委員会メンバーの経験と知識を活用して、Notionの利用方法に関する標準化とガイドラインを策定し、テンプレート化を進めます。Notion内をパトロールし、ガイドラインに沿わない使用方法を発見した際は、ガイドラインやテンプレート修正のヒントにもなるため、当該部門の委員を中心に個別ヒアリングを実施して、検討したコンテンツの修正方法をユーザーに周知しましょう。
従業員がNotionを効果的に使用できるようサポートとトレーニングします。Notionを情報提供の場として活用し、委員会のメンバーを中心にユーザーの利用促進とスキル向上を図ります。
委員会のメンバーは定期的に入れ替え、多くの従業員が委員を経験できるようにします。この方法により、従業員の当事者意識を高め、自然発生的な協力体制を構築することが、委員会の持続可能な運用の実現につながります。
運営委員会の活動に注力することで、Notionをコラボレーションの促進と業務効率の向上のための戦略的な資産として最大限活用できます。この取り組みは、組織文化とプロセスの改革を推進するDXの重要な鍵となるでしょう。
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大学卒業後は電源開発の情報システム部門およびグループ会社である開発計算センターにて、ホストコンピュータシステム、オープン系クライアント・サーバシステム、Webシステムの開発、BPRコンサルティング・ERP導入コンサルティングのプロジェクトに従事。
2005年より、ケイビーエムジェイ(現、アピリッツ)にてWebサービスの企画導入コンサルティングを中心に様々なビジネスサイトの立ち上げに参画。特に当時同社が得意としていた人材サービスサイトはそのほとんどに参画するなど、導入・運用コンサルティング実績は多数に渡る。2014年からWebセグメント執行役員。2021年の同社上場に執行役員CDXO(最高DX責任者)として寄与。
現在はDLDLab.(ディーエルディーラボ)を設立し、企業顧問として、有効でムダ無く自立発展できるDXを推進している。共著に『集客PRのためのソーシャルアプリ戦略』(秀和システム、2011年7月)がある。
Twitter:@DLDLab
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