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「DXに日和ってる奴いる?」 DXリベンジャーズ連載開始DXリベンジャーズ(第1回)

世間の興味が生成AIに移り、DXというキーワードは過去のものになろうとしています。しかし、DX活動が鈍化傾向にある今こそがライバルに差をつけるチャンスです。正面からDXに取り組み、本質的なDXを実現しましょう。

» 2023年07月07日 07時00分 公開
[西脇 学DLDLab.]

DXリベンジャーズ 〜失敗で終わらせない、リベンジへの道〜

世の中のDX活動が鈍化傾向にある今こそ、正面からDXに取り組み、ライバルに差をつけるチャンスです。一緒にDXリベンジャーズの道を進んでいきましょう。

 皆さん、初めまして。西脇 学と申します。フリーコンサルタントとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)成功への道筋を描くサポートをしています。

 約30年前に電力会社のグループ企業にSEとして新卒入社した私のキャリアを振り返ると、これはDXへつながる道であったのだと思います。入社当初から民営化に向けた業務改革プロジェクトに配属され、ERP導入、個人証明書付き非接触IC多機能社員証の導入など、大規模かつ重要な全社プロジェクトに参画しました。これに並行して個別部門業務に特化したWeb技術によるシステム企画開発を担当するなど多角的な業務に関わりました。

 その後、大学発ネットベンチャーに移籍してインターネットサービス開発の世界に飛び込み、視野を広げることに専念しました。営業からプロジェクトマネジメントまで幅広く担当し、多くのお客さまのさまざまなビジネスのWebサービス化を任せていただきました。そしてWebソリューション事業担当執行役員兼CDXO(最高DX責任者)として、コロナ禍の厳しい経済状況の中、東証上場を経験することができました。

 DXが企業における重要なアジェンダとなって久しいですが、私の目には、期待した成果が出ていないと感じる企業が多いように見えます。その原因を探ると、多くは「何を改革すべきなのか」という明確な目的が欠けていることが根本にあるようです。

DXではなく、一部デジタル化が「目的」になっている現状

 DXが話題になり始めた当初、多くの企業がこれに飛びつきました。DXという言葉は一般社会まで普及し、IT系の企業や職種の多くがDXを冠した名称へと変化し、企業にとってDX銘柄に選ばれることは先進性の象徴となり、企業IRにはDXの文字が踊りました。

 しかし多くの人々は、「既存の業務をデジタル化する」または「デジタルツールを導入する」ことがDXだと捉えていたように思います。デジタル化を強く意識させる法改正や政府方針、コロナ禍といった社会情勢もあって、テレワークが珍しいものではなくなり、オンラインミーティングは特別ではなくなりました。オフィス以外の場所で仕事ができるようになったことで、仕事の範囲でとどまっていたデジタル化が生活を変化させたという実感が生まれました。

 こうした活動は一見合理的に見えますが、問題はそのアプローチにあります。なぜなら、それはDXの手段と目的を逆に捉えているからです。DXの真の目的は、ビジネスを根本から変革し、新たな価値を生み出すことであって、デジタル化は手段です。

 しかし、多くの企業ではこの視点が欠けており、その結果、既存の業務プロセスはそのままに一部の作業をデジタル化するだけでDX成功としている事例がソフトウェアメーカーやサービス提供サイドだけでなくユーザー企業からもレポートされています。これでは真のDXの可能性は見えてきません。問題はツールそのものにあるのではなく、「ツール導入=DX」という考え方にあります。

 企業は自らの弱点を見つけて言語化し、その問題に正面から取り組む機会が圧倒的に不足している、もしくは問題に気づくことを望んでいない可能性も否定できません。経営層がさまざまな痛みを伴う変化を先送りにして避けた結果とも考えられます。

 そうこうしているうちにDXという言葉の勢いは失速してしまったのではないでしょうか。2023年における皆さんの興味は生成AIの賛否へと移り、DXは過去のバズワードになろうとしているようです。これは決して珍しいことではありません。新しい技術やコンセプトが現れ、一時的に大きな注目を集め、そして時間とともにその輝きを失うという流れは、過去にも何度となく繰り返されてきました。

 しかし、DXという概念とその本質的な意味は依然として我々にとって重要なものであり、それは今も変わっていません。単なるブームの話ではないのです。

 べき論を振りかざすつもりはありませんが、DX活動が鈍化傾向にある今こそがチャンスです。ライバルがよそ見をしている間に、正面からこの大きなテーマに取り組み、成果を出すことがアドバンテージになります。お客さまに届く、社員に届く、求職者にも届く成果こそ事業の発展と人材不足への最大の対策となるはずです。今やるか、やらないか。答えは出ています。

 そして、DXの取り組みについての一般的な誤解や先入観を解きほぐし、その本質を明らかにすることで、DXがもたらす真の価値と可能性を理解し、実現するための具体的な方法を考え、成功へと導く道筋を探し出すことが、私が本連載を通じて目指すところです。

「草の根DX」とは何だったのか

 次回以降の記事では、具体的なDXのテーマを示し、その教訓とともに共有します。さらに、それらの教訓をどのように具体的な行動に移すべきか、皆さんと一緒に探っていきます。

 最初のテーマは、「草の根DXへのリベンジ」です。「草の根DX」とは一般的に、社内であまり目立たないながら、現場レベルでデジタルを活用して業務改善をしている人たちのDX活動を指します。「草の根DX」とは何だったのか、なぜうまくいかないのか、成功への道筋はどこにあるのかを考えていきます。

 この連載が皆さんのDXの取り組みに役立つ知見となり、成功への一助となれば幸いです。一緒にDXリベンジャーズの道を進んでいきましょう。

著者プロフィール:西脇 学(DLDLab. 代表)

 大学卒業後は電源開発の情報システム部門およびグループ会社である開発計算センターにて、ホストコンピュータシステム、オープン系クライアント・サーバシステム、Webシステムの開発、BPRコンサルティング・ERP導入コンサルティングのプロジェクトに従事。

 2005年より、ケイビーエムジェイ(現、アピリッツ)にてWebサービスの企画導入コンサルティングを中心に様々なビジネスサイトの立ち上げに参画。特に当時同社が得意としていた人材サービスサイトはそのほとんどに参画するなど、導入・運用コンサルティング実績は多数に渡る。2014年からWebセグメント執行役員。2021年の同社上場に執行役員CDXO(最高DX責任者)として寄与。

 現在はDLDLab.(ディーエルディーラボ)を設立し、企業顧問として、有効でムダ無く自立発展できるDXを推進している。共著に『集客PRのためのソーシャルアプリ戦略』(秀和システム、2011年7月)がある。

Twitter:@DLDLab


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