ERPの機能は製品によってさまざまだ。ある機能がなければ、需要と供給を一致させるため、外付けサービスが必要になる。その機能とは。
ERPは、企業の持つ資源を一カ所に集めて管理し、有効活用するという考え方や、それを実現するためのシステムを指す。企業の中枢を担うシステムとしてさまざまな業界、業種の企業で導入されている。
ERPの機能は製品によってさまざまだ。“ある機能”を実装していなければ、需要と供給を一致させるため新たなサービスを外付けする必要が生じてしまう。
ERPで需給調整を完結するため、導入間に確認しておきたい機能とは。
需給調整を担う機能はS&OP(Sales and Operations Planning)だ。経営や製造、販売などの部門が協力して生産計画を作成し、データを可視化、共有できる環境を整えることで、需要と供給を一致させるためのプロセスを指す。より広範な目標は、日常業務を企業戦略に合わせて適宜調整することだ。
一般的に、マーケティングや調達、製造、輸送、財務など、需要と供給に密接に関係する部門がS&OPに参加する。
S&OPは予測精度を向上させるだけでなく、在庫に関わる資金を削減して運転資本を増加できる。また、新製品やマーケティング活動の有効性を向上させ、収益と市場シェアを拡大させる。この他、S&OPによる納期厳守率の向上は、顧客満足度の向上と、そこから生じる売上の増加などのさらなるメリットにつながる。
販売やマーケティング、運営、財務データの可視性が向上することも利点の一つだ。S&OPソフトウェアを使用してプロセスを自動化すると、計画サイクルが短縮され、予測の作成や統一計画での共同作業に伴う煩わしい手作業から解放されるため、人件費が削減され、生産性を向上させられる。
S&OPは幾つかのステップで構成され、通常は月例会議で決定される。企業によってステップの名前や順番は異なるが、主に次のような共通点がある。
1.データ収集: 在庫や売上、手元資金といった変数に関する情報を収集する。
2.需要計画: 需要検知や需要形成など、需要を分析して予測する。
3.生産(供給)計画: 生産と流通の能力や制約を評価する。
4.和解: 需要計画と生産計画を調整し、それらが財務などの目標を満たしていることを確認し、推奨事項を準備する。
5.幹部会議: 経営幹部がS&OPチームから最終的な意見を受け取り、計画を検討して最終バージョンを承認する。
S&OPは、すべての部門の計画を収集し、財務実績と戦略に結び付ける、包括的かつ長期的な計画プロセスだ。統合事業計画(IBP)と密接に関連し、その構成要素となることが多い。
プロセスを自動化し、販売やマーケティング、財務、運営間の連携を促進して関連データにアクセスしやすくために、ソフトウェアが重要な役割を果たす。
売上予測は、専用の分析ツールや予測ツール、または需要計画ソフトウェアが存在しているが、多くの企業はスプレッドシートで処理している。生産計画は多くの場合、ERPまたは資材所要量計画(MRP)ソフトウェアの専用モジュールで処理される。
しかし、ERPのデータと計画、部門が必ず結び付いているわけではないため、S&OPベンダーは統合システムのステップを処理するためのS&OPソフトウェアを提供している。S&OPソフトウェアは、ERPスイートのオプションモジュールとして販売される傾向があるが、スタンドアロンも存在する。
InforやOracle、SAPなどのERPベンダーは、S&OPモジュールを提供したり、IBPまたはサプライチェーン管理(SCM)製品でS&OPをサポートしたりしている。多くのERPシステムは、サードパーティーが販売するS&OPソフトウェアと統合することでこの機能を実装する。需要管理ソフトウェアの中には、S&OP機能を備えているものもある。
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