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費用対効果の高いERPの在り方 日用品メーカーの事例を基に考える

ある日用品メーカーはERPの大規模な刷新を一時中断していた。再開したプロジェクトの費用が当初の予定よりもかさむ中、どのように投資対効果を高めるつもりなのだろうか。

» 2024年09月19日 10時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]
CIO Dive

 ある日用品メーカーは、サイバーアタックによって売上が減少し、システム障害も発生したころから、ERPの大規模な刷新を一時中断していた。

 再開したプロジェクトの費用が当初の予定よりもかさむ中、どのように投資対効果を高めるつもりなのだろうか。

費用対効果の高いERPの在り方

 家庭用品の製造販売を営むThe Clorox Company(以下、Clorox)が、2024年8月1日(現地時間、以下同)の決算説明会で「同年7月1日にカナダでERP導入計画の第一段階を開始した」と発表した(注1)。同社のリンダ・レンデル氏(CEO兼会長)によると、次は米国での導入が予定されているという。

 レンデル氏は、2024年6月30日に終了したCloroxの2024年第4四半期の電話会議で、次のように述べた(注2)。

 「私たちは、ERPの領域で迎える最大の移行に備えるため、学んだ全てのことを徹底的に記録してきた。私たちが得る価値の大部分は、ERPの導入を完了する2026年以降に現れるだろう。このプロジェクトは非常に高い投資対効果を期待している」

 以前、Cloroxはサイバーアタックによって売上が減少し(注3)、システム障害が発生し、業務が中断したため、ERPの大規模な刷新を一時中断していた。混乱があったにもかかわらず、クラウドベースのERPの刷新は順調に進んでいる。これは同社が5年をかけて近代化実施するプログラムの一環だ。このプログラムに必要な費用について、同社は当初の予想より約6000万ドルから8000万ドル多くなると考えており(注4)、合計で5億6000万ドルから5億8000万ドルを必要とすると見込んでいる。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)は、費用と時間のかかる取り組みである。グローバル企業におけるERPの刷新は複数年にわたって行われ、短期的には業務に負担をかけるものの長期的には利益をもたらす可能性がある。

 Cloroxは、通常よりも高額なIT投資によって(注5)、サプライチェーンやデジタルコマース、イノベーション、ブランド構築の業務を変革できると見込んでいる。しかし、このような取り組みをしているのは同社だけではない。

 他の家庭用品ブランドを有する企業も、最新のERPによって俊敏性と業務効率が改善されることを期待している。The Hershey Companyは、コスト削減とオペレーションの最適化を目指して取り組んできた複数年にわたるERPの導入を終えようとしている。同社は、この取り組みが組織の能力を上回らないように努めてきた(注6)。

 Mondelezは、2024年7月に12億ドルを投下してERPとサプライチェーンの刷新を開始した(注7)。Cloroxと同様に、同社は事前の準備により、チームがより高いレベルで実行できるようになると見込んでいる。

 ERPのアップグレードは、多くの大規模な変革の取り組みにおける典型的な施策だ。最大手のERPプロバイダーの1つであるSAPによって引き起こされた移行のボトルネックに企業が直面する中で(注8)、システムはより多くの注目を集める可能性が高い。移行の期限が迫る中、SAPは移行を必要としている顧客にインセンティブを与え、サポートのために介入している。

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