UiPathの自動化プラットフォームが、Microsoft 365 Copilotと連携した。Microsoft 365ユーザーの視点から見て、何がどう便利になるのか、チェックしてみよう。
業務自動化プラットフォームを提供するUiPathと、自社の自動化プラットフォーム「UiPath Business Automation Platform」とMicrosoftがオフィススイート「Microsoft 365」を通じて提供する生成AIアシスタント機能「Microsoft Copilot for Microsoft 365」(以下、Microsoft 365 Copilot)との連携が2024年6月に両社から発表された。
この連携によって、Microsoft 365のユーザーは何がどのように便利になり、具体的に何ができるようになるのか。UiPathの夏目 健氏(プロダクトマーケティング部部長)に話を聞いた。
Microsoftも自動化ツール「Power Automate」を提供しているが、Microsoft 365のユーザーがUiPathの自動化ツールを利用するメリットはあるのだろうか。
UiPathはかつてRPA(Robotic Process Automation)ツールを提供するベンダーとして知られていたが、現在ではRPAの枠を超えたソリューションを提供し、包括的な自動化プラットフォームを提供している。
夏目氏は、UiPathとMicrosoftは相互補完する関係だと語る。
「Microsoft 365 CopilotとUiPathの連携により、Microsoft 365の多くのユーザーが、Microsoft 365 Copilotを通じてUiPathの機能を利用できるようになります。UiPathの強みである高度な文書処理(IDP)機能や、文書処理に特化したLLMを活用していただくことで、Microsoftの提供する自動化に対してプラスアルファの価値を提供できます。また、両者の連携により自動化シナリオやテンプレートが大幅に増えることは、ユーザーにより多くの選択肢を提供することにもなります」(夏目氏。以下、特に断りのない会話文は夏目氏の発言)
UiPathは、画面上のボタンなどのオブジェクトを認識する技術の開発から出発した。「RPAでは画面操作の精度が高く安定しています。その結果、自動化の信頼性の高さをユーザーから高く評価されています」。Microsoft 365ユーザーにとって、UiPathの正確な自動化機能を利用できる点がメリットだと同氏は語る。
さらに同志がメリットとして挙げるのが、コラボレーションプラットフォームの「Microsoft Teams」でUiPathの自動化ワークフローを検索、実行できるようになったことだ。「これにより、エンドユーザーは複数のアプリケーションを行き来することなくエンドツーエンドでの自動化を実施できます。業務効率が大幅に向上します」
Microsoft 365ユーザーとしては、Microsoft 365に保存されているデータにアクセスするためのツール「Microsoft Graph」を利用できる点も見逃せないだろう。Microsoft Graphを通じて電子メールを中心とした情報管理ツール「Microsoft Outlook」に蓄積された電子メールのデータから必要な情報を抜き出し、UiPathでさまざまな処理ができる。Microsoftのエコシステムに属するサードパーティーのアプリケーションと連携して自動化処理が可能な点も、連携によるメリットだ。
今回の連携によって「Microsoft TeamsからUiPathの自動化処理を実施する」ことが可能になった。具体的にはどういう手順を踏むのだろうか。住宅ローン会社におけるローン申請プロセスを例に見てみよう。
必要に応じて、マネジャーへの承認リクエスト送信や承認後の処理など、承認プロセスを自動化ワークフローに組み込むことも可能だ。ローンの申請が承認され、金利などの決定、ローンIDの発行といった処理が終了すると、その結果がMicrosoft Teamsに表示される。
これで自動化のプロセスはいったん終わるが、「その後の業務も継続してサポートするのが今回の連携の真骨頂です」。
例えば「ローン申請の結果を電子メールで顧客に伝える」といった、次に取るべきアクションをMicrosoft 365 Copilotが複数提示する。ユーザーが提示された選択肢からふさわしいと思うものを選択すると、ローン申請にひも付く業務が次々と処理される。
こうした「エンドツーエンドの自動化」によって、申請から承認までにかかる時間が短縮されるだけでなく、人的ミスのリスクも低減される。また、次に取るべきアクションが提示されることで、経験の浅い担当者であっても、迷うことなく業務を進められる。
今回の連携による業務の自動化は金融以外の業種でも利用可能だ。保険業界における保険金の申請受付から支払いまでの流れ、製造業における品質管理から購買、支払いまでの一連の流れなど、複数の部署にまたがる長い業務プロセスを一括して自動化するという。Microsoft Teamsを中心とした操作によって、Microsoftユーザーは通常利用しているインタフェースを利用できる。
UiPathには、「UiPath Autopilot」という生成AI機能を搭載したアシスタント機能もある。夏目氏は、AutopilotとMicrosoft 365 Copilotの役割分担について次のように説明する。
「Microsoft 365 CopilotとUiPathが連携するにあたって、Microsoft 365 Copilotがサポートする部分と、UiPath Autopilotがサポートする部分は明確に分かれます。Microsoft 365 Copilotは、Microsoft TeamsでUiPathの自動化ワークフローを検索、実行するなどMicrosoft製品のテクノロジーをサポートします。UiPath Autopilotは自動化ワークフローやローコードアプリの開発など、UiPath製品の利用をサポートするという位置付けです」
ちなみにUiPath Autopilotには次の4種類が存在する。
「これらの機能が揃っていることで、企業のあらゆるレベルのユーザーが、生成AIと自動化の恩恵を受けられるでしょう」
Microsoft 365ユーザーがUiPathを導入して運用を拡大する場合、IT部門はどのような点に注意すべきだろうか。
「特に考慮したいのは自動化ワークフローの運用と管理の徹底です。具体的には、利用状況の可視化と監視、エラーが発生している自動化ワークフローの特定と対処が大切です。UiPathプラットフォームには運用、管理しやすい機能や仕組みが盛り込まれています」
今後、期待できる機能としてはどんなものがあるのだろうか。夏目氏が挙げたのが、「自動化ワークフローの自己修復機能」だ。
自動化ツールの運用で課題となりやすいのが、自動化対象のSaaSがアップデートされた際に、それまで稼働していた自動化処理が実行できなくなることだ。自動化の対象となっているSaaSのUI(ユーザーインタフェース)が更新されると、自動化ワークフローの自己修復機能はそうした変更に対して自動化ワークフローを「自己修復」する。「これによりIT部門のメンテナンス負担は軽減され、自動化環境を維持できます」
これまで新しい機能が追加されたり、ツールが連携可能になったりした際は、便利になる半面、新しいUIの利用方法を覚えたり、どのような作業にどの機能が使えるかを正しく把握して適切に選び出したりする必要があった。ユーザーによってはせっかく増えた選択肢に気付かなかったり、知ってはいても十分に活用できなかったりするケースもあっただろう。
今回の2社の連携では、Microsoft TeamsのUIをそのまま利用できたり、次に取るべきアクションをMicrosoft 365 Copilotが提示したりと、UiPathを利用したことのないMicrosoftユーザーにとって特に使いやすい内容になっていると感じた。
こうした連携によって業務自動化の選択肢がさらに増えることで、企業における自動化の取り組みがどのような影響を受けるのか、今後も見ていきたい。
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